膝の上は私の場所
2015-10-13 21:33:21
テーマ:クロネコ物語



この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。






膝にのる。
下ろされる。
またのる。
部屋から出された。

一生懸命呼んだ。
悲しくて泣いた。
ドアにくっついて泣いた。
小さくなって丸まった。

彼が私を嫌いになった。
私は彼に嫌われた。

泣いて泣いて泣いても
私の心はおさまらない。

ここに入れなきゃ
死んでしまう。

……………………。

ヵチャッ。

「おいで」

嫌われてる?
嫌いなの?
ニャー………………。

前肢から脇に彼の手が入る。
抱き上げられて
腕の中だ。

「見てごらん」

……わからない。

「これをね、
送らないと、
怒られちゃうんだ。
さあ終わりだ。」

彼は片手でキーを叩く。

「さあ、
どうして欲しいの?」






こうしててほしい。
ベッドに腰掛けた彼の膝から
私は伸び上がる。

そっと鼻を顎に押し付ける。
彼は笑って顔を反らす。
上向いた顎を、
俯いた口許を、
舌で舐める。 

笑ってる。
笑ってるよね。

何回も
何回も
私は舐める。

「もうおしまい。
めっ!」 

うん。
やめる。
でも
おりない。
おりないよ。

彼はヘッドフォンを付けた。

私はじっと
膝の上で丸くなる。

彼の手が
私の背を撫でている。

彼は音楽に集中する。

私は彼に集中する。

優しい手。
優しい時間。

もう悲しくない。
私は
やっぱり
彼のものだ。

彼は
やっぱり
私のものだ。


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