嫌いな客人
2015-10-15 20:36:00
テーマ:クロネコ物語


この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。







あれ?
テーブルの下の私のお皿に
なんか変なもの入ってる。

「もちろん食べたよ。」
彼の声だ。
え?あのー………………え?これ、私のごはん?
なんか、黄色いのと赤いの。

…………かじってみた。
まずっ!
お肉は?
お魚は?

ニャー
ニャー
ニャーっ!!!

クロスがめくられた。
お皿が持ち上げられる。

なんかうるさい。
彼の笑い声。
「あーあ、ちゃんと食べたよ。
全部じゃないだけ。」

今度は彼が覗く。
抱っこだ。
でもダメ!
お肉!
お魚!

「煮干しくれない?」
なんか
また
うるさい。

彼は
くしゃくしゃっと
私の頭を撫でながら言う。

「お前のせいだよ。
ばれちゃったじゃないか。」
彼の手の平から
ポリポリ煮干しをかじりながら
私は様子を探る。

大きい人がいる。
私は
この人が
大嫌い。

だから、
いつも、
何言ってるかわからない。
うるさい音にしか
聞こえない。

大きい人がいると
私は
すぐに
膝から降ろされる。

「ごめんよ。
喘息が出るかもって
うるさいんだ。」

だから
私は
キャットツリーの上だ。

二人はソファに座っている。
私はだんだん悲しくなる。

二人は笑い合っている。
私はどんどん辛くなる。

そこ
あんたの
場所じゃないのに。

彼は
あんたの
ものじゃないのに。

私は
一人でいるのよ。
私は
泣いているのよ。

ドンッ
ガシャーン!!
痛いっ!!!

茶器が割れ、
私の前肢に破片が刺さった。

……………………。

「ありがと。
助かった。」

大きい人が
私の前肢に触った。
大きい人が
私の前肢をぐるぐる巻きにした。

私は爪で思い切り抵抗した。
大きい人の手も
ぐるぐる巻きにしてやった。

「だめじゃないか。」
ダメじゃないもん!


「手当てしてくれたんだよ。」
…………………………あなたにしてほしかった。

溜め息だ。

「痛いだろ。
ばかなんだから。」

彼の手に抱き上げられる。






彼の胸だ。
彼の腕だ。
暖かくて温かい。
優しくて悩ましい。

顎の下を
そっと撫でてくれる。
私は喉を鳴らす。

耳の後ろを
カリカリと指で掻いてくれる。
私は首をもたげ、
彼の顎を頬を口許を舌で確かめる。

仲直りだ。

うん。
ばかだ、私。
もう、しない。

でも
ばかだから
ちゃんと言ってほしいの。

毎日
毎日
言ってほしい。

「かわいいよ。」

うん!
愛してる。
私、
あなたを、
愛してる。



画像はお借りしました。
ありがとうございます。




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