この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。






鏡の向こうに
2015-10-16 21:53:50
テーマ:クロネコ物語

夜の窓
すごく綺麗。
彼が映るから。




居間のカーテンは全開にされてる。
壁一面が鏡になったみたい。

彼が二人いる。
最初は
いつもそう。
彼が二人いる。

鏡に映る彼は
じっと見つめるわ。
部屋の中の彼を。

私は
いつも
混乱するの。








誰?
そこはどこなの?
あなたは彼じゃないわ。

ゆっくりと差し上げる腕を
仰向いた顔が追う。

大きく腕を広げ
右膝をあげ
タンッと踏み鳴らす。

左腕を頭上に
指を立てた右腕を前に
ぴたっと止まる。

彼は
ひたすら繰り返す。

頬は紅潮し
汗は流れる。

目は燃え上がり
瞳は暗く深くなる。

何を見てるんだろう。
鏡の中のあなた
あなたよ。

彼じゃないでしょ。



怖い
あなた怖いわ

私は彼を見つめてるのに
あなたは私を放さない。

私は彼を愛してるのに
あなたを見ると、
心が熱い。

そこはどこなの?
私をどこに連れてくつもり?

…………………………。
私は
いつも
混乱する。

彼は
知らない人になる。

知らない人に
私は焦がれる。

知らない人は
美しくて
美しくて
…………怖い。

寂しくて
寂しくて
…………かわいそう。

そんなに強いのに
なぜだろう。

私は
なぜ
寂しそうなんて
思うんだろう。


彼はくずおれるように
ソファに
身を投げ出す。

荒い息をつく彼。
目は固く閉じている。

私はキャットツリーから
飛び降りる。

目がゆっくりと開く。

「ただいま。」

お帰りなさい。

ソファに伏せるように
身を返して
彼は
また目を閉じる。

愛するあなた
あなたは
いつも
何処に行くの?

あなたは
いったい
誰になってるの?





画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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