この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。








涙の夜は
2015-10-17 22:55:15
テーマ:クロネコ物語

彼が泣いている。



嗚咽は
高く低く
暗闇に流れる。

私は
彼の悲しみの中にいる。

嗚咽が漏れる唇は
私の耳もとだ。
寄り添う胸には
しゃくり上げる震えが伝わる。

その顔を
私は見ない。
私の背を
彼が
撫でているから。

私は
背中に
思いを受けとる。

寄り添う胸に
思いを込める。

彼が泣く夜
私は
目を閉じる。

彼の嗚咽に
耳を澄ますために

啜り泣きは嫋嫋と続き
夜が白むころに
消えていく。

夜は明ける。

そっと
腕をすり抜けて
微かな光に
その顔を見つめる。

私は
舐めたりしない。
起こしてしまうから。

ただ
守るために
ここで
彼を見つめていよう。

枕に顔を半分沈めるようにして
眠っている彼。
穏やかな寝息に肩は微かに上下する。







日が昇り
光が満ちたら
あなたを苦しめる思いは消えていくのかしら。

昼間のあなたを
私は知らない。

でも
夜のあなたを
私は
支える。

私は
嬉しいの。

彼の涙は
私一人のものだから。
彼の嘆きを知っているのは
私だけだから。


彼は
時おり
泣き濡れる。



何かを思って泣き濡れる。




画像はお借りしました。
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