この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。

綺麗すぎるあなた
2015-10-18 21:19:15
テーマ:クロネコ物語











真っ昼間にドアが開いた。




早ーい!
おかえ…………。

大きい人が飛び込んできた。
引き出しに飛び付いて
また飛び出していく。

……………………。

ガチャン…
またドアが開いた。

大きい人が
彼を抱っこして入ってきた。

こんなに青白い顔は
初めて見る。

ソファに下ろされた彼は、
隣に座った大きい人に
身を預ける。

私は
テーブルの下に
逃げ込んだ。

大きい人は
彼の体を胸に抱き
何かを囁いた。

「待って……。」
声の中に
妙な音が混じる。

「待って。
収まる。
吸入したんだから……。」

大きい人は動かない。

この人は
彼が言うことは
なんでも聞くの。



「ありがと。
助かるよ。」
コップを受け取り
飲み干す彼。

「どうしたんだろ。
ま、吸入で収まるんだから
だいじょうぶ。
驚かせてごめん。」

なんだか
ぶつぶつ言われてる。

「だいじょうぶ。
慣れてるんだから。
…………
わかってる。
触らないから。」

やっと大きい人が帰った。

まだ白い。
お顔が白いよ。

彼は
大きい人がテーブルに置いたポットから
コップに何かを注いでいる。
長くて細い指が
取っ手をもっている。

私、
部屋の隅っこにいる。

こんな遠くから
彼を見るなんて初めて。
だいじょうぶ?
ほんとに?

でも、

なんて綺麗なんだろ。
コップを持つ指先まで
私の彼は美しい。

コップを口許に
喉を反らす彼。
首筋から
肩まで
襟元から
僅かに覗ける。

喉をならすごとに
肩から胸までが
ピクッ
ピクッと動く。

キャッ。
胸がざわつく?
ピクッを見たら落ち着かない。
キャットツリー行こ。

上からの彼は
何度も見てるもの。

飲み終わって俯けば
大きい人が
弛めていった襟元から
引き締まったお腹まで
…………見えちゃうじゃない。
場所間違えた。

だるそうに
彼はソファに横たわる。
左腕は背もたれに載せ、
右腕は床に落として。

大きなお部屋にある
綺麗なお人形?

彼の肌は
本当に血が通っているのかしら。
しんと静まっている。

唇が微かに開いた。
ドキっとする。
お人形に命が宿ったみたい、

もうダメ。

綺麗すぎて側にもよれない。
近寄れないのに離れられない。

「おいで。」

え?

「来ていいんだよ。
おいで。」
彼が微笑んでいる。

降りたよ。

そっと私に手を伸ばす彼がいる。

まだ顔色が悪い。
でも…………
いつもの彼?

「お腹空いたろ。
ご飯、
出しといてもらったから
食べといで。」

目が明るい。
声が優しい。

うん!
食べてくる。

彼は戻った。
私も戻った。

でも…………今日はべたべたしないね。

なんだか
しちゃいけないみたいだから。




画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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