この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。








泣いてるの?
2015-10-19 22:14:35
テーマ:クロネコ物語



私……食べない。
小さな檻の中で
もう
どのくらい
時間が過ぎたのかしら。

ときどき
檻を覗きこむ人は
皆、同じ服を着ている。

目が覚めたら
ここにいたの。
彼を呼んだわ。
もう気が狂うほど
私は呼んだ。

声が枯れて
力も尽きて
私は
もう動けない。

彼が
私を
捨てたのかしら。

私は
もう
可愛くないの?

それなら…………、
そんな私
私は要らない。

そんな私
消えてしまえばいい。

彼が愛してくれないなら……
私なんか
私は要らない。

……………………。

キィィィッ……。
また
誰か来た?

目がよく見えない。

カチッ
開けないでっ!!

私に触った手を
私は
最後の力を振り絞って
噛んだ。

「だいじょうぶです。」
え?
噛んだ歯から……力が抜けた。

「おいで」
私はフワッと持ち上げられる。
薄暗い廊下を
私は運ばれていき

キィィィッ

ドアの外に出た。

ふっと目の前が
明るくなった。

彼だ。
やっぱり彼だった。
なんだか混乱してしまう。
私のこと……嫌いじゃないの?

あっ
わ、私、噛んだ!?
彼を……噛んだの??

もう死んでしまいたい!!!
ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ………………。

「ごめん」
え?
頭にポツンと何かが落ちた。
見上げると
彼が泣いている。

「ごめん」

その頬を涙が伝う。
あとから
あとから
伝い落ちていく。

私のために
あなたが泣いている?
そうなの?
ニャー

「帰ろうね」

うん!



お家だ。
私と彼のお家だ。

ミルクを飲んで
私は
丸くなった。

彼の手は
大きい人が手当てした。

私は
うつらうつらする。

ボンヤリと声が聞こえる。

「医師の診断書だよ。
この子は
側に置く。
許可は出た。
構わないね。」

パシッ!!
鋭い音が響いた???…………すーすーすー


んーっ
キャッ!

目の前に彼の顔だ。
じっと私を見つめている。

「スープからだね。」

彼がお皿を置いてくれた。
いい匂い
美味しそう

ああ
私……彼に食べさせて欲しかったんだ。
食べられる。
食べたい。

スープをピチャピチャ舐める。

頭にそっと
彼の手が載せられる。

「もう離したりしない。
本当だよ。」

キュンッ!
胸が痛いみたい。

私は
また彼に洗ってもらった。
タオルでゴシゴシ体を拭いてもらった。

そしてね
彼は言ったの。

「さあ綺麗になった。
世界一可愛いよ。」



画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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