この小説は純粋な創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。






フェイクの死線
2015-10-26 18:43:21
テーマ:クロネコ物語

この小説は純粋に創作です。
実在の人物・団体に関係はありません。


今夜は
サガさん帰らないわね。

彼は
蒼白な顔を
サガさんの胸に寄せ
体を丸めている。

肩が、
びくっと上がり
震えては落ちる。

ひゅーひゅーと
胸から響く木枯らしの音を
サガさんは
どんな思いで聞いてるのかしら。

ぬるま湯を飲ませ
痰を吐かせ
発作が収まるのを待つ。

胸が張り裂けそうになってるわね。

だって
腕に抱えてる美しいものが
弱っていく様を
ご覧なさいよ。

前髪が
汗で
張り付いているわ
額に
頬に。

血の気の失せた
大理石の肌は
あえぐような呼吸に消耗して
透明度を増してゆく。

しかも
その両手は
サガさんのシャツを
握りしめてるのよ。






しがみついた指が白いわ。
発作が苦しいのか
発作で心細いのか
って思うわよ。

無力な自分を呪ってるわね。

何か囁いてるわ。
サガさんは
そっと彼をソファに凭れさせ
急ぎ足で部屋を出た。

ニャーニャー!
ダメよ!

彼はゆらっと身を起こしたの。
あえぎながら
ソファのマットの間を探ってる。

あなた……って子は!!?


サガさんは

大きめのバスタオル、
汗ふきタオル、
彼のスウェット上下二組、
下着の袋詰め
加湿器、
ティッシュケース
等々

……入院セット一式をもって戻った。

サガさんは
そっと彼を抱き起こし
覗き込む。

サガさんの顔がゆるむのが
見上げてる私も
嬉しいわ。

そうよね。
彼が苦しんでるから
気が狂いそうだったんだもんね。

あなたは
本当に
彼を思ってくれている。

ごめんなさいサガさん。
どうしようもないわ
この子は。

彼は固く目を閉じている……わね。
この小悪魔!!

なんてことするのよ?!
死んでたかもしれないのよ!?

吸入したふりで
サガさんを騙すなんて!!


「あ、いてくれたの?」

思い切りいい笑顔ね。
弱々しいし。

ニャー

そのしおらしい声
甘ったるい語尾


「ねぇ、
今夜は、
帰んないよね?
こんなに
収まらないのは
初めてなんだ。」

どの口が言ってんのかな?


サガさんは泊まった。
彼のベッドで
彼を抱っこして
一晩過ごした。

私は
同情する。
サガさんは本当にいい人だ。



画像はお借りしました。
ありがとうございます。



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