今のロシアを思うとき、

店主は、

第二次世界大戦時の日本を思います。

ですが、

文学の世界で、

侵略者であった自国と向き合う作品は、

ほぼほぼ見られません。



戦争が間違いだったことは

繰り返し語られてきましたが、

侵略者であったことと向き合う作品は、

手に取られてこなかったように感じています。



それは、

たとえば、

侵略あるいは虐殺を知りたいならこの作品をという中に、

「アンネの日記」や「あの頃はフリードリヒがいた」に類するものがないという意味です。



「ガラスのうさぎ」「はだしのゲン」

「この世界の片隅に」等々、

語り継がれる作品はありますが、

それは国内で起きた悲惨についてのものです。

自国が他国に対して行った残虐を語るものを子供に語る話を、

読んだ覚えがありません。



なぜなのか。

それは侵略者であった過去を語ることそのものが、

日本ではできない相談だったからと思います。


☆「月に吠えらんねえ」清家雪子作
  多くの戦争文学、それを世に出した文人たちの苦悩を感じることができる作品です。


侵略者は皇室ではなく、

当時の軍部であり政府であったのですが、

旗印は天皇で、

それが侵略をしたことと向き合うときの八方塞がりにつながります。



アメリカが日本に天皇が必要と考えたことで、

日本は君が代を国歌とし、

皇室は国のために天照大神に、

その子孫として祈り、

万物に神宿る国は、

その伝統文化の上に戦後の復興を果たしてきました。

日本国民が天照大神を信仰していなくとも、

現人神の国体は継承されています。



プーチン大統領は神ではない。

戦後、

何かの折りに、

政府転覆が起きましたなら、

その像は引き倒され、

ロシアは彼に一個だに与えず次の国体へと歩を進めることでしょう。



日本はそうはいかない国でした。

三島由紀夫の言うところの、

伝統文化というものの存在の大きさは、

たいそう正しい分析だったように思えます。



店主は、

その文化を愛しているし、

皇室に対し含むところをもちません。



ただ、

ロシアを思うことに重ねて、

その向き合いの困難を抱える我が国に、

危うさを感じることがあります。

あるなと思っています。

たとえば、

一つの詩を紹介しようかと思うとき、

ぐっと踏みとどまるものがある程度には

危うさがございます。


その詩を紹介することが、

とても難しいなと感じたこと、

それがこの記事を書いた動機です。




詩集をおいて、

北京五輪の録画を流しました。

アイスダンスです。

そしてロシア選手の演技を拝見しました。

ああ見事だなと思いました。

次に、

昨夜の男子シングルの録画を流しました。

ウクライナの選手の演技です。



そして思いました。

とても共に競うことは考えられないと。



ロシア選手の、

あまりに明るい曲調も、

愛らしい仕草も、

幸せそうなオーラも、

とても とても とても

彼のいる空間に、

共にあることはできない。


そう思いました。


それが侵略であるという思いを、

ロシアのどのくらいの方々がもっているのかわかりませんが、

公的には正義を行っている設定で通っています。


その認識の違いがあまりに無惨で、

踏みにじられている国で、

砲撃にさらされた一ヶ月をすごし、

今も家族が命の危険にさらされている青年のいる場で、

ロシアの選手がこの演技をすることは、

不可能だと感じました。



戦争は、

すべてを歪ませる。

何をしたというわけではない人々も、

その歪みを背負って生きなければならない。

平和とは切実に必要で、

何をおいても守らねばならぬものだと感じました。


向き合うことの難しさを

この詩が思い浮かんだときに

強く感じました。

ロシアの人々もまた、

それを感じるでしょうか。



朝鮮張下村の丘の教会で 

           川崎洋子


1919年3月、当時日本の支配下にあった朝鮮各地で反日独立運動が起こった。それに対し、日本はすさまじい弾圧を行った。水原郡堤岩里では日本軍が村人を教会道に集め、出入り口を閉ざし、外から銃火をあびせた。そのうえ教会堂に放火して生き残った人々をも一人残らず焼き殺した。

●「朝鮮の歴史」三省堂出版 朝鮮史研究会編 S49・2・15初版


ぼうや

泣かないの

こわいことはなんにもない

こうして きもちのいい風の吹きこむ教会で

窓からは ながれる雲もみえて

村の人たち みんないっしょで

おまえのアボジもそばにいて

ほら あひるも一羽


軍刀をつるし 拳銃をかまえ

日本の憲兵がいそがしげに歩きまわっていても

剣つき銃の兵隊が教会をかこんでいても

ぼうや

こわくはない

オモニの目のなかには

夾竹桃の花がゆれ 花のなかに

おまえがいる

オモニの胸に顔をおしつけ

まるいちいさな鼻をおしつけ

そう ねんねよう

あんしんしておいで


鉄砲の弾丸は

アボジの胸がさえぎるだろう

ふりおろされる軍刀は

オモニの肩がさえぎるだろう

二人の血で

ぼうや

おまえをまぶし

おまえをくるみ

おまえをかくし

きっと

おまえを 生かしてやる。



また10時かと思ったら、

女子シングルは明日の早朝なのですね。

うーん

早寝します。


画像はお借りしました。

ありがとうございます。