続きです。
今回は(再来編)でございます。

昨日上げたお話が思いの外甘くなり過ぎていて自分でもビビりますが、今回もまた違う意味で甘いような…
アレですね、兄さんはやっぱり強くなり切れないというような?←
そして安定の優男さん、またまた優男度発揮し捲る予感(笑)


そーんな本来の姿を取り戻しつつ、それでも前とは少し変わった二人の甘くも強い絆をまだまだ味わいたいっ!なーんて思って下さる二人の事が大好きな方はどぞっ!!







【正しい気持ちの伝え方(再来編)】



結婚を控えた花嫁はマリッジブルーなるモノを感じる事があるという。
それは全員に来るモノでは無いが、来た時には想像以上の不安と苦痛を味わうらしい。そして今正に、イェソンもその現象に襲われていた。



「……………や。」

プイッと顔を背けて。隣に座るキュヒョンの肩へと顔を埋めてしまったイェソンに、イトゥクは困り顔のままキュヒョンへと目を移した。
11階のリビング。そこにはキュヒョンとイェソン、そしてイトゥクの三人が顔を突き合わせていて。テーブルの上へと広げられた紙には、何人もの名前を書き出されていたりする。
式まで後一ヶ月。仕事が忙しくなる前にと、何とか予約の取れた日取りが一ヶ月後だったのだけれど。

急遽に近い状態で決まったこの結婚。
急ぎ足なのは判っているが、今を逃せば式を上げる日取りがかなり先になってしまうのだ。だからと決めたその日取りにイェソンも納得していた、筈だったのに。

「や、じゃないでしょ?」

イトゥクは困り顔のままイェソンへと声を掛ける。それにすら耳を塞ぎたいのか、キュヒョンの肩口へと埋めた顔をグイグイと押し付けて。
そのままフルフル首を振って嫌だと主張してくるのだ。
その肩を優しく抱くキュヒョンはイトゥク同様困り顔のまま。

「招待状…出さないといけないんだよ?」

決めているのは招待客リスト。本当ならば三ヶ月以上前に決めなければならない事柄だが、時間の無さから一ヶ月前に出す羽目になってしまった。その事からして失礼に当たる行為だが、もう発表する期日も決めてしまったのだ。結婚記者会見の日取りを。

「記者会見前に出さないとでしょ?」

親しい仲間や先輩、お世話になっている人々に発表前に招待状を届ける。
それはイトゥクの譲れない所でもあり、だからこうして決めているというのに。イェソンは突然嫌だと言い出したのだ。


「………や……誰も、呼ばない。」

呼ぶなら、結婚しない。
そう言い出したイェソンに、イトゥクは一つ息を吐き出して。

「ジョンウナっ」

珍しく強めの声を上げたイトゥクにイェソンの肩が揺れる。
ソレを見たイトゥクはキュヒョンへと目を移して。目配せされた事にキュヒョンは小さく頷くと、イェソンの肩をポンポンと軽く叩いた。

「ヒョン……少し、休みましょ?」

時刻は等に深夜を過ぎている。疲れているせいもあるのかもしれない。
さぁと促すと顔を俯けたまま、背中を押されるようにイェソンはリビングを出て行き。後に続いたキュヒョンは出て行く寸前、イトゥクへと任せて欲しいという目を向けてその場を後にした。




キュヒョンの部屋。そのベットへとチョコリ座ったイェソンの目の前。
其処に膝を付きキュヒョンはイェソンの瞳を静かに見つめる。
ダラリ足らされた両手を優しく包んでただ静かに。
イェソンが言いたい事をキュヒョンは黙って待っていた。


「………もん……」

ポソリ。何か呟いたイェソンに、キュヒョンは優しい眼差しのまま僅かに首を傾げて見せる。そうすれば、イェソンはもう少し大きな声で言葉を紡いで。

「だって……やだもん…」

途端に潤み始めた瞳。強くなると言っていたあの姿は今は何処にも無い。
あるのは、ただ目の前の相手に守って欲しいと。
自分の気持ちを判って欲しいのだという想いだけ。

「俺は……キュヒョナと、皆で……」

キュヒョンとメンバーだけで。

「……式、挙げるんだも……」

そのまま泣き出してしまったイェソンをキュヒョンは無言のまま抱き締めた。胸に顔を埋めさせて、その泣き声が聞こえないように。
声を押し殺して泣こうとするから、他の誰にも聞こえないようにとその胸へと顔を埋めさせて。泣きながら嫌だと言い続ける体をただ優しく撫で続けた。



「……落ち着きましたか…?」

静かな声にイェソンは胸元でコクリ頷くと、ユルリその顔をキュヒョンへと向けた。目元は泣き過ぎて赤くなり、唇は食いしばった事で少し腫れてしまっている。その目元を親指で撫でてやりながら、キュヒョンはクスリ微笑んでみせた。

「僕と、皆だけで…お祝い、したいですもんね……」

イェソンは式を細々と挙げたかったのだ。
本当に近しい、親しい者達と。寧ろメンバーと自分達だけで式を挙げたかった。それは心の奥底で燻る不安から。

「僕達を本当に、心から祝福してくれる人達だけで…」

そうしたいんでしょう?

優しい瞳にイェソンはまたホロリと涙を零していく。
ポロポロと零れ落ちる涙は、不安と心細さで埋め尽くされて。
本当はそんな涙をキュヒョンに見せたくないのに。
嬉しい涙だけを見せてあげたいのに。

「……だって……」

もしも、呼んだ相手が自分達の結婚を祝福してくれなかったら?
そんな人達が沢山いたら?
そう思うだけで、イェソンはまた水分量を増して涙を零してしまうのだ。

「や………幸せに……なりたい、もん……」

キュヒョンと一緒に、幸せに……

罵声罵倒なんて覚悟している。それでも、それを聞いた時。
心の痛みは絶対にあるだろう。自分も、そしてキュヒョンも……
だから嫌なのだ。自分は我慢する。どんな事を言われても、我慢出来る。
好きな…大好きな相手と一緒になれるのだから。
だけど、それでキュヒョンが傷を付けられたら?言葉は鋭い刃よりも深く傷を与える。その刃で傷を負ったキュヒョンの瞳なんて、見たくない。

どんなに言い聞かせられても拭い去れない奥底の感情。
それが疲れや迫り来る結婚という大きな出来事に、不安を増幅させ爆発してしまったのだろう。


「だから………や…」


嫌だと繰り返しまた呟く唇へと、キュヒョンは優しくキスを落として。
そのまま涙に濡れた瞳を真摯に見つめた。

「僕もね……貴方が傷付けられるなんて……嫌です。」

見つめた先の瞳は未だ不安で揺れる。

「僕達の結婚を、良くは思わない人も居るでしょう。」

そんなのは色々な感情を持つ人間が世の中には沢山居るのだから当たり前の事。でも、だからと言って……それを怖がっていたら前には進めない。
自分達はコレでいいのだと、一緒になるのだと誓ったのだから。

「僕が貴方を愛していて、貴方が僕を愛してる……」

そして僕達が愛する仲間も、僕達を愛してる。

「それ以外に、何が欲しいというんです?」

フッと微笑む姿は何処か力強くて、イェソンの不安に揺れる心を救い出すには十分な力を持っていた。

「それにね?僕達が好きだと、尊敬出来ると思っている人達が……」

僕達を、受け入れないと思いますか?

「トゥギヒョンが、僕が。そんな相手を呼ぶと…」

選ぶと思うんですか?

「……………おも、わない……」

自分達の周りには本当に尊敬出来る人達と、本当に心から信頼出来る相手しかいない。そう信じているから、仕事も共に出来た。今も、そしてこれからも……

「だったら……」

僕を、皆を。

「もっと信じても……いいんじゃありません?」

ニッコリ。微笑む姿は男らしくもあり、心を和らげてくれるモノでもあって。だからだろうか?イェソンは流していた涙の量を徐々に少なくしていき、コトリ首を傾げるとキュヒョンの胸元の服をキュッと握り締めた。


「………やく、そく……?」


絶対に自分達を祝福しない者など呼ばないと、約束してくれるのかと。
そう告げた唇に。


「約束です……」


貴方を幸せにしたいから。心からの笑顔を浮かべて欲しいから。


「僕と貴方の……二人だけの、約束です……」


密やかに囁かれた言葉と共に降りてきた唇に、イェソンは瞳をユックリと閉じて。甘い感触を与えられながら、誓ってくれた心へと。

やっとその瞳から、涙を静かに消し去った。





※マリッジブルー、再びっ!!
いやあ花嫁の負担は相当なんだよーって事ですよねコレ←

自分達を皆が祝福してくれるのかとまたも不安に陥り、結婚したくないと訴えた兄さん。だけどその心すら優男さんは深く優しく受け止めるのです。
強くなるって言いつつ泣いちゃう兄さんも、そんな繊細な心を持ってるから余計に大事なんだよって所でしょーか?(え

にしてもマリッジブルーですら甘く収めるこの二人何っ(笑)





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