久しぶりに此方で短編を上げてみようかと。
というのも、仄かに書きたいなぁと思っていたイベント絡みのお話。それを偶然にも書いて欲しいとの声を頂きまして。
ならば書こうじゃないかコレ!!とね?(何だソレ
7月7日、皆様ご存知な【七夕】でございます。
ええ、この【七夕】を題材に今日は書かせて頂きたいなぁと。
って、こうやって何かに当て嵌めてお話書くって初めてかも…
どうなるのやら、自分自身でハラドキしつーつ。
それでは参りましょう!
牽牛星(彦星)と織女星(織姫)が織り成す少し切ない恋愛模様。ギュイェで読むのも楽しそうっ!!
七夕伝説汚すなよ!?しっかり読んだるから書きなさいっなーんて私を叱咤激励してくれる(え)ギュイェloverな方はどぞっ!!
【星降ル夜 永久ノ約束(前編)】
カタリ、カタリと広すぎる室内へと響き渡るは短調な音。
時折聞こえる衣擦れの音は、それでもほんの僅かなモノで。
「姫……こんを詰めると体に障ります。」
やっと聞こえてきた一つの声に、それでも反応する素振りは無い。食事すらまともに採らなくなってから、もう一週間は経つだろうか?またこの時期がやって来たのかと、リョウクは仄かに息を吐き出した。
「……その様に痩せられては、旦那様にボクが叱られます。」
言えば、短調に動いていた手がやっと止まり。
後ろへと控えていたリョウクへと、姫と呼ばれた人物がユルリ体を動かした。
「………逢わなければ……心配すら、無くなる。」
まただ。その言葉にもう何度肩を落としただろう?
こうした言葉を紡ぐようになったのは、ここ数年の事。
「姫……そう言って傷付くのは、貴方自身です。」
咎める様に言えば、それだけで憂いを帯びた瞳が揺れ動く。
もう何百、何千年と月日を経て。それでもこの一年に一度の逢瀬を交わして来たのに。
その一度きりの日を糧に、機を織ってきたのだろうに。
「旦那様がそのお言葉を聞いたら……哀しまれます。」
無心で神々の衣を作り続ける手。その手に触れると、冷たい感触が伝わってくる。
天上の者は地上の者とは違い、モノを食さずとも生きられる。
が、人と同じ様に衰弱もする。
下がりきった体温を温めようと、リョウクはその手を包み込んだ。
「今日は貴方様が待ち焦がれた、七月七日……逢いに行かずして、皆の願いは織れない筈です。」
チラリ織り機を見れば、そこには五色の糸で織られた見事な衣が一つ。
「五色の糸は、皆の願いが込められたモノ。それを織り、衣に変えた願いを神々へと受け渡す。その貴方様を支える心を与えてかれるのが、旦那様です。」
だから、逢わないといけない。
告げられた言葉に、漆黒の瞳が一層揺れ動く。
逢いたいのだ、彼は。逢いたくて逢いたくて、心が震えてしまう程に………
天帝の子として生まれた織女。彼女の使命は、神々の衣を織る事。その見事な衣は全ての心を癒し、地上の者の心を織り紡いでいく。そんな中で、与えられた至高の存在。
牽牛は優しくも温かく、織女の全てとなった。それ故に疎かになってしまった、皆の願いを織り交ぜた衣作り。
同時に牽牛もまた、神へと献上する牛達を衰弱させ。
その事が天帝の逆鱗に触れた。
天を流れる川を挟み、離れ離れとなった二人。
それでもその哀しみに暮れる心を憐れに思い、年に一度だけと。天帝が与えた、大切な日………
「………逢ったら……ダメなんだ………」
ポツリ呟かれた声は、誰もを魅了する響きを帯びて。それでも久しぶりに発したせいだろうか……掠れた声が何処か痛々しい。
「逢ったら……もっと……だから……」
言の葉を伝える事を余り得意としない、それでも伝えて来ようとする心に、リョウクは胸が締め付けられる。
こうして傍に居るようになって、どれだけの月日が経っただろうか?最初こそは年に一度のこの日の為にと。懸命に機を織っていた。しかし、何時の頃からか……こうして逢う事を拒む様になった。それは、逢えばもっとと心が求めてしまうから……求めた心はその織物にすら影響を与え、地上の人々からの願いを叶える事が出来なくなる。
だからと、だから逢いたく等無いのだと告げる姿に。
リョウクは一つ笑みをうかべると、蒼白くなってしまった頬へとソッと手を当てた。
「貴方様は、本当にお心の優しい方です……でも……自分を大切に出来なければ、人の願いなど叶えられない。」
「………リョウギ………?」
微笑む姿に僅かに首を傾げて。疲労から思考すらまともに回ってはいないだろう。キョトンとする姿にまた笑って、リョウクは漆黒の瞳を覗き込んだ。
「逢いたくて仕方ないなら、大切過ぎて苦しいなら。それを彼に伝えればいい……我慢なんてね?するだけ損だよ……織姫……ううん………ジョンウニヒョン?」
与えられた名前とは違う、本来の名前。
何時もは畏まった口調で接してくる、でも……時々こうして、弟の様に接してくるリョウクの言葉。
だからこそ、心の奥底へと響く………優しい言の葉。
「………こんな時に弟を演じるなんて……狡いぞ……」
「でも、嬉しいでしょ?」
ニッコリ微笑む姿に何時も救われる。長い長い時を経て、それでも生き続けなければならない運命……
その運命をこうして傍で。共に生き続けてくれるこの命を。
今だからこそ、感謝したい。
「………ありがと……リョウギ………」
そう、我儘を言ったっていい。
年に一度の、この時ばかりは………
我儘を言って、困らせてやる。
「あー…もう、ほら。泣かない!天の川の水が増えちゃうよ?」
クスクス笑って涙を拭う手が温かくて。
「………いい。増えたって、絶対に渡ってやるから……」
夜が訪れる前に。
流せるだけの涙を織姫は、何時までも流し続けた。
※短編なのに続くというこの感じ!!
前編では織姫sideでお話が進みましたが、後編ではきちんと彦星現れます(笑)
さて、この二人の行く末や如何にっ(ハイハイ
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