最終話です。


私の中では最長と言えるだろうこのお話。
その最終話が遂にやってきてしまいました。

正直ね?淋しさが強いです。
どんなお話を書いているよりも、皆さんとの繋がりを深くしてくれたこのお話ですから。
だから、淋しい……

だけど終わりは始まりの合図。

これからも、この二人の世界は続いていくから。
だから、書き終えようと思います。って何だかシンミリっぽいねぇコレ(笑)



さて!!それでは参りましょうっ!!
終わりだけど終わりじゃないよっ!まだまだ二人の時間は始まったばっかりだーーーーいっ!!なーんて言いつつ。私と共に二人を最後まで見守って下さった正きもラバー様な皆様どーーーぞーーーっ!!









【正しい気持ちの伝え方(始まり編)】完結



式を終えて一週間。二人の生活は一変……なんて事も無く。
けれど確実に周りへと向ける意識は変わっていた。

「ヒョーン、歯ブラシ持ったーー?」

リョウクの声に自室から顔を出したイェソンは、朗らかに微笑みつつコテリ首を何時もの様に傾げて見せて。

「忘れてた。ありがと、リョウギ。」

今までは当たり前だと述べる事すら忘れていた感謝の言葉。
それを告げて微笑むイェソンに、何だか未だに慣れないリョウクは逆に照れてしまう。

「まったく…前の日に仕度なんて、のんびりし過ぎ。」

やれやれとリビングのソファで寛ぎつつ。テーブルへと広げていた写真に目をやるソンミンは何処か嬉しそうだ。

「式を放送しなかった分、取材が凄かったしね。」

歯ブラシを渡して戻ってきたリョウクは、広げられた写真の一枚を手に苦笑で答えた。
二人は式をテレビで中継される事を拒んだ。それは本当に仲間たちや親しい人々と過ごしたかったから。
だからという言葉にイトゥクも頷き、中継を断ったのだが。
お陰で本人達だけでなく、周りのメンバー達までもが取材取材で大忙しとなってしまった。

「ま、注目は仕方ないし。代わりに二週間の休み貰えた訳だし。」

良しとしようかなんて、リョウクの持っていた写真を覗き込んで。そのままソンミンは感服の声を上げた。

「やっぱファンが撮ったのは写り方が違うなぁ…」

テーブルに広げられていたのは、出席したファン達から寄せられた写真の数々。山の様にテーブルを梅尽くしていた。
その写真からはどれも二人を想う気持ちで溢れていて、それが手に取る様に判るのだから恐れ入る。

「ボクはコレが好きだなぁ…」

リョウクは持っていた写真を嬉しそうに見つめる。
ウェディングドレスを身に纏ったイェソンを斜め後ろから撮ったのだろう。俯き加減のイェソンは、何だか背中だけなのに幸せだという想いを伝えてきている様で。
その上からは彼等を祝福する花弁が舞い降りる。

そんなイェソンの前。その手を取り、同じ様に俯き加減で瞳を閉じているキュヒョンもまた。とても幸せそうに微笑んでいた。その取った手の薬指には、二人を永遠に繋ぐ指輪が一つ…

「これ、引き伸ばして二人の新居に飾っといてやるか。」

悪戯に言うソンミンもその写真が気に入っているのだろう。
これにはリョウクも異議を唱えるつもりはない。同じ悪戯好きな兄達にも手伝ってもらって、後でバカでかい写真にして飾ってやろうなんて、そんな幸せな事を考えながら。
楽しいが増す毎日を、ゆっくりとその身に感じた。





「眠れませんか……?」

ベットに横になり、優しい体温に包まれながら。
イェソンは囁かれた言葉にモソリと目の前の胸元から顔を上げる。結婚祝いだと、二人は一ヶ月の休みを貰った。だがやはりどうしても抜けない仕事はある。だからと夜遅くまで仕事をしてきたキュヒョン。その体は疲れている筈なのに、やはりこうしてイェソンが眠るまではなるべく起きていてくれるのだ。

「……ドキドキする…」

「ドキドキ……ですか…?」

ん。とコクリ頷いて、イェソンはキュヒョンの胸元へと顔を伏せた。

「だって……結婚して、初めての旅行だもん……」

消え入る様な声で。
そんな事を言われたら、疲れていてもこのまま押し倒してしまいたくなるじゃないか。
だがそこはあのキュヒョンだ。旅行前に疲れさせるのは本望じゃない。

「『新婚』を忘れてますよ?」

クスクス笑いながら抱き締めてやると、それだけでイェソンはまた恥ずかしさから縮こまってしまう。
それに笑って。そのまま柔らかい髪へと唇を寄せて、キュヒョンはその背中をポンポンと優しく叩く。

「式を挙げてまだ一週間……僕達は生まれたての赤ん坊とね、一緒なんです……」

これから先、長い道程を共に過ごしていく中で。一緒に歳をとる為に、赤ん坊に戻ったんだと。

「その僕達に、また新たに皆が出会ってくれる……それって、凄く楽しい事だって……思いません?」

キュヒョンにはイェソンの本当のドキドキの理由が判っていた。だからと言われた事に、イェソンもまた。
キュヒョンが伝えてくれようとしている事を、違えず読み取る。それが成長した、証。

「………忘れて、ない?」

忘れていないだろうか?自分達の事を……
旅行先でこれから会うだろうその人が。自分達を忘れているんじゃないか……それがドキドキの本当の理由。

「忘れてる訳、ないでしょう?」

こんな可愛い貴方の事を……

「………ばか…」

不意に顔を上げさせられて、チュッと降り落ちてきた唇に顔を赤くして。イェソンの尖ってしまった唇に、またキスを一つ。

「新しい僕達の道に……あの人の足跡、付けてもらわないと。」

自分達の道を作ってくれた人の一人だから。この新しい道に、まだまだ生まれたての自分達とでまた出会ってもらう為に。

「その為の、旅行なんですから……」

ポンポンと。リズムよく叩いてくれる手と優しい声音に。
イェソンは小さく頷いて、そのまま心地良い眠りへと引き込まれていった。




「で………何で貴方達まで此処に居るんです?」

最上級に不機嫌だと言わんばかりの目線を向けた先。そこには本国に居る筈のメンバー達が勢揃いしていたりする。

「「だって、休み貰ったし。」」

とはウニョクとドンへの言葉。その横ではシウォンが熱心に建物を観察している。

「まーまー、気にするなってっ!!」

大いに気になるだろうと突っ込みたくなるシンドンの言葉に、ソンミンとリョウクはから笑いしか出ない。

「お前らだけじゃ、頼りねぇだろ。」

何が頼りないのか。良く分からない事を言ったヒチョルに、イトゥクが補足とばかりに口を開いた。

「お前達がお世話になった人でしょ?なら、ちゃんとご挨拶しなきゃ。」

意気込むのは結構だが、何故そこに皆が?なんて言葉は最早愚問と言ってもいいだろう。何たってお祭り騒ぎが大好きな人達なのだから、理由なんて無いに等しい。

「みんな、一緒?」

泊まるのも一緒なのかとコトリ首を傾げたイェソンだけが、何だか一番事の起こりを楽しんでいる様に思える。
全ての事を柔軟に受け入れる。彼のそこが魅力なんだがと改めて皆が思った時。


「お待ちしておりました。」

聞こえた声に、イェソンとキュヒョン。そして周りの皆も一斉に其方へと目を向けた。
そこには久しぶりに見る人物の姿が一つ。

「ご結婚、おめでとうございます。」

ニッコリ微笑む姿に、数ヶ月前に此処へと訪れた時の彼女と。あの仲居として世話をしてくれた彼女が全く変わらぬ姿でそこにいた。


イェソンとキュヒョンは決めていたのだ。新婚旅行に行くなら、また日本へ……と。
まだ迷い悩んでいたあの時。結婚を決めたのも、その手助けをしてくれたのも……この場所と、彼女だと。
だから新たな道を刻み始めたこの時に、どうしても会っておきたかった。例え自分達だけの想いだとしても……

そして出向いたこの場所。そこで彼女は二人の心を汲んで、言ってくれるのだ。

「この空の元……繋がる先のお二人に、おめでとうと……あの日私は伝えておりましたよ?」

まだ旅館へも入っていない空の下。その空を見上げながらの言葉に、キュヒョンの笑みは深くなる。そんな彼女はしっかり韓国語を話してくれているのだから、やはりというか恐れ入る。

それにイェソンは一歩足を踏み出し、恥ずかしそうにしながらチロリ仲居と目を合わせた。

「名前……教えて?」

モジモジする姿が何だか可愛らしい。こんなにも可愛い生物はやはり他には居ないだろう。そんな事を思いつつ、仲居はクスリ微笑む。

「雅代、といいます。」

苗字は前に教えてあった。だからと今度は下の名前で。それにイェソンは嬉しそうに笑いながら、スッと手を差し出して。

「俺達を覚えててくれて、ありがと……雅代さん。」

覚えていてくれて。こうして真っ先に出迎えてくれて……

「おめでとうを、ありがと……」

伝えたかったのだ。彼女の名前をちゃんと呼んで、自分達の今を作ってくれたこの相手にありがとうを。言葉では表し切れない、その想いを。
そして、これからの自分達を見つめていて欲しいんだと……

「本当、随分と心配したんですからね?」

雅代と呼ばれた仲居は、そう言って優しく笑う。たった少しの時間を過ごしただけの相手。それでも、その時間がどれだけ大事だったのかを、彼女は笑顔一つで伝えてくれる。

「新しい道を、作るんですね……」

手は離さないまま。そう言ってイェソンの周りへと目を向けて。最後にキュヒョンを見つめると、一言。

「皆さん幸せで、良かった。」

その言葉は多分彼女だけじゃなく。きっと皆からの言葉なんだと。そうキュヒョンは思うのだ。そして恐らくはこの場にいる全員も感じただろう、その想い。

「貴女に出会えて、良かった。」

そう言って、イェソンの手の上から彼女の手を握ったキュヒョン。それを合図に、イトゥクもヒチョルも。その場にいる全員がその手を握り締めていく。
幾重にも重なった手は、これから共に歩く道を重ね合わせる様に……

「………重いですって…」

目元を少し赤くした彼女は、もしかすると泣いていたのかもしれない。
だけどそれを見る事はない。皆がただ空を仰いで、何処までも繋がるソコを眺め見る。

そう、繋がっているのだ……皆。
空と同じ様に、あの式の日に繋げた道たちが。


ずっとずっと、繋がっている。



「……お帰りなさい。」


そして、何時でも帰れる場所として。
こうしてお帰りと言ってくれるその道を。


「………ただいま。」


ただいまと言えるこの道を、永遠に感じる為に。





あの砂時計と共に……



二人は全ての繋がる道へと、ゆっくりと歩み出す。



それが終わりのないこの物語の、新たな始まり。








※最終話です。

皆様………本当に長い間、このお話を読んで下さって。
ありがとうございました。

私の中でも最大級に長かったこのお話。
それでも付き合って下さった皆様には、感謝してもし尽くせません。
本当に、私とこの二人をありがとう……

やっと【正しい気持ちの伝え方】


終了です。

とは言っても、番外もチラホラ書き続けますけどね?←
だってこの二人が大好きなんだもんっ!!(ハイハイ


皆様。ありがとうございましたーーーーっ!!!!




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