続きです。

早く上げようと思っていたのですが、中々に時間が取れず……要するには書けてなかったのですが←

さてはてお正月も過ぎ。既に半ばとなりつつある中お正月話でござります(笑)
前回の続きですので忘れたぞーっ!って方は私同様、前話を読んで振り返って頂くとして(オイ


今回は仔犬ちゃんがどう動くのか……いやはや楽しみではございますがー……兄さんの心は如何に!!



それでは参りましょうっ!!
初詣に行ってた事を何故に仔犬が知っていたのか!?兄さんはどう出るの?そろそろ話の進展待ってるんだけどー!なーんて言ってくださる寝ても覚めてもギュイェ好きって方はどぞっ!!








「初詣……楽しかったですか……?」

何処か冷たいその言葉が、静かな室内へと重く響き渡った。



【好きの方程式8】



「寒かったでしょう?珈琲でも入れましょうか。」

発せられた言葉に、イェソンは何も返さない。いや、返せない…の間違いかもしれない。
帰宅早々の言葉がその胸の内に響いたまま、未だ身を固くし口を開く事すら出来ずにいた。

何故キュヒョンが初詣の事を知っている?誰にも言わずに出掛けたし、この階にはキュヒョン一人の靴しか無かった筈だ。出掛けてから帰宅までは2時間と少し……その間に何を何処で……


その思考を読んだ様に、ソファから立ち上がったキュヒョンがクスリと声を漏らした。

「自分達の知名度……もう少し理解した方がいいですよ?」

言いながら向けられたキュヒョンの視線の先。そこへと目を移したイェソンは、ソレを目にして一瞬息を詰めた。それにキュヒョンは面白いモノでも見る瞳を向けてくる。

「何処で誰に撮られているか……判らないモノですねぇホント……」

キュヒョンが座っていた場所。そこにはパソコンが置かれており、その画面にはデカデカと画像が映し出されていた。それは、先程まで一緒に居たチャンミンと自分の姿………
境内でクジを引く姿や、肩を並べて笑う姿が上げられている。

「こんなに至近距離で撮られてて、気付かなかったんですか?」

まったく……言葉尻に咎める響きがあり、その顔を見れば呆れた表情をしていて。
こういう時のキュヒョンはイェソンよりも強い。
兄だろうと叱るべき時は叱る……そんな体の姿勢に、何時も二の句が継げなくなるのだ。

「別に……悪い事してた訳じゃ…」

何となく言葉に力が無くなる。言い訳の様な響きになってしまうのは、こんな風に叱られているからなのか…それとも………
フイッと背を向けてキッチンへと姿を消したキュヒョンに、イェソンは此処に来て初めて息を吐き出した気がした。

変な緊張から体が固まってしまった気がする。その力を抜こうとまた一つ息を吐き出して。
同時に姿を現したキュヒョンはその手にカップを一つ持っていた。先程言っていた珈琲を入れてくれたらしい。

「はい、砂糖は入れてませんよ?」

最初に感じた声の冷たさは何処へやら。そう言ってニッコリ笑顔で差し出されたカップ。それを受け取ったと同時……イェソンの手はそのまま一回り大きな手にイガシリと掴まれ、また一気に体に緊張が走った。

「さっき、甘い物……食べて来たんですもんね?」

「っ……な………んで……」

言われた事にハッとする。そのままパソコンの画面へと目を走らせれば、そこには近所のケーキ屋でお茶をしている自分達の姿があり……
ああ…だからかと頭の片隅で思いながら、少し強くなった手の力にイェソンは思わず眉を顰めた。

「あそこ、前に僕が行きたいって言ってた所だって……覚えてます?」

「え………」

言われた事に瞬時には頭が回らない。未だ笑顔を崩さないキュヒョンの、穏やかな声とは裏腹なその言葉。

「貴方も行った事無いって……だから今度行きましょうって………それ、覚えて無いんですね……」

穏やかな声と、増していく手の力。

「じゃあコレは覚えてますか?」

一層強くなった力に、カップが割れるんじゃないかと思った時。


「休みが重なったら初詣……お参りは、僕と行こうって………」


言葉と同時に離された手。余りにも強く握られていたせいで、離された瞬間弱まった手の力がそのままカップを床へと落とさせた。
響くガラスの割れる音と、床へと広がる褐色の液体。

「その顔………やっぱり忘れてた……」

静まり返った室内に、乾いた声が落ちる。

「仕方なさそうに頷いてても、僕は良かったんです。」

キュヒョンの声が遠くから聞こえる気がするのに、その声に意識が引き込まれる……

「僕は貴方を好きだけど……貴方の好きは、まだ遠い……そんなのは判ってた。だけど………」

段々と震え始めたその響きに、床へと広がる液体を見つめていたイェソンの目が向く。その瞳に映ったのは……



「だけど僕の気持ち……もう少し…判っていてくれるって……」



震えた肩と声……なのにその顔は、やっぱり笑ったまま。

「キュヒョ」

「僕の事、少しは考えてくれました?」

言われて胸が締め付けられる。
そうだ……自分は彼と約束をしていた。何時もの様に鬱陶しく引っ付かれ、根負けして無理矢理膝枕をさせられていた時。

『来年、もし休みが重なったら……一緒に初詣、行きません?』

一度は断ったが、駄々を捏ねる言葉に判ったと告げて。大喜びをしながら彼は言ったのだ。


『あのケーキ屋にも寄りましょうね?新しい年に、ヒョンと初めてを一緒に……ね?』

子供の様に喜ぶ姿に苦笑しながら、自分はハイハイと……
そう約束したのは数週間前の事だった。



「僕にとっては大切な約束だったんです……でも貴方には………そうじゃなかった。」

思い出した約束に、イェソンは自身を叱咤した。
あの時……そうだあの時は、本気でそれを叶えてやろうと思っていた。あの笑顔を見た瞬間に、そう思っていたのに……

「ヒョン……貴方にとって、僕って何ですか……?」

「なに……って………?」

体が強ばる。喉の渇きを覚えて、言葉が上手く紡げない。

「優しくしてくれるのは……弟だから?それとも飼い犬を可愛がってる様な感覚?」

「っそんな事」

「それとも、ただの同じょ」

言おうとした言葉を遮る様に、イェソンは思わず目の前の頬を叩いていた。
乾いた音に叩いたイェソンの方が驚き、慌ててその頬へと手を向けるがソレはキュヒョンの手に阻まれる。

「嫌でしたか……『同情』って言われるの……」

拒絶する様に払われた手……今まで一度とて無かったその行動に、その手に痛みが走る。

「でも………僕はもっと痛い……そう感じる事が……」

向けられた瞳は思いの外弱くて、それだけで胸がドキリとする。こんな瞳を、本当は時々感じていたのだ。
だけど見て見ぬフリをしていた……

「恋人だって、ただ僕が浮かれてたとでも?僕はそんなに馬鹿じゃない……貴方がそう思ってないのも、知ってる。それでも……」


それでも僕は……貴方が好きだから…………


「……キュヒョン………」

切実な胸の内……それは狂しい程の想いが込められた、切ない心の声……

それに自分はどう応えればいい?
今のこの関係が、心地良い……だから本当はこのままずっと共に居れれば……

そう思っていた自分の考えが甘かったと。改めて気付かされる。


「ヒョン……貴方にとって、僕は……なに……?」


もう一度問われた事に、イェソンは拳を握り締めた。
脳裏には、チャンミンから言われたあの言葉がチラつく。

『可能性が無いなら……希望を見せないで下さい……』

可能性が、無いなら………

「イェソニヒョ」

「お前はっ………」


そう………傷は、浅いままで…………


「俺にとって、お前は………」


痛みはきっと、直ぐに癒えるから………


「お前は………大切な、弟だ…………」


「………………判りました……」


少し間を置いての言葉……そう呟かれた声は、最初に聞いた痛みを含んだ響きを帯びてビクリと肩が揺れる。
それをキュヒョンは見ているのか否か……

見上げた先の瞳に、イェソンは息を飲んだ。
そこにあったのは今までに見た事も無い様な……傷を負った瞳………
そしてソコへと溜められた水分が零れ落ちる寸前。

「これからは、弟として……貴方の傍に………」

真正面から受けたその瞳から一筋の涙が頬を伝って。



「さよなら………ヒョン……」



淡い笑顔と共に、キュヒョンはリビングを静かに後にした。
残されたイェソンは、その場を動けぬまま……痛みの増していく胸を強く押さえる。

「アイツを……傷付けた、筈なのに………」


言葉は震えて冷たい空気へと溶け込んでいく。
傷付けたのは、自分の筈なのに……
これ以上痛まない様にと、言った言葉なのに……


「何で、痛いんだよ…………」

何でこんなにも自分が痛いのだろう?
何でこんなにも………あの背を追いたくなる………?



「あんな風に………泣くなよ………」



崩れそうになる足へと力を入れながら、イェソンは暫くその場を動く事が出来なかった。






※やっと更新出来たと思ったら………
何たる展開ですかねコレっ!?仔犬ギュ何処行ったーーーーーっ!?←
そして好き式にはまだ訪れないであろうと思われたこの展開(え

いやはや………


続きますっ!!(ぅおーーいっ





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