続きです。

チマッと更新が定着しつつある此処ですが。
好き式含め、他の二人は私の脳内にて色々とやらかしてくれておりますがー……それを文字に起こすまでの時間がね?(はい言い訳ね←

そんなこんなでこのお話も13話目に突入致しました!
前回は何やら意味深な仔犬ちゃんの言葉がチラホラ見えましたが。兄さんは思い出すのか?
それとも思い出せずに終わるのか……まだまだ私にも不明な所ではございますが、なる様になるでしょうっ(オイッ


って事で参りましょう!!
あの夜からまた二人に進展はあったのか!?兄さん早く思い出してーーーっ!なんて思いつつ、それでもまだまだ二人を眺めてたいからオアズケも美味しいよ!なーんて言って下さる二人には盲目的な方はどぞっ!!






昔の自分が目の前に現れたなら。
あの日アイツに言った言葉を教えて欲しい……

そんな馬鹿げた事を考える自分に、思わず笑いそうになった。



【好きの方程式 13 】



久し振りの大雪が街の全てを変えていく。
津々と降り積もるソレは、無用な音すらかき消して……
代わりに必要なモノを引き出せと、そう問い掛けている様な……そんな感覚。

「俺が……何を………」

ポツリ呟いた言葉に返事なんて無いと思っていたのに。呟いた事への返事とは別の言葉が背後から飛んできた。

「カーテン開けてるだけで気温は下がるんだから!無闇に開けないっ!!」

ピシャリとそんな言葉を飛ばす相手なんて、一人しか居ないだろう。母親の様なその物言いに思わず含み笑いをしながら、イェソンは顔だけ振り返ると柔らかい笑みを母親替わりの相手に向けた。

「夜の中の雪って、灯りになるだろ?」

そうして問い掛けた言葉に、やっぱりその人物は呆れた表情を見せるのだ。

「また違うモノを見てたの?もー……悪い癖だよ、それ。」

何時もの事。こうして否定もせず自分の行動を受け入れてくれる相手に安堵する。
長い付き合いだとしても、こんな風に呆れつつも肯定してくれる相手なんてそうは居ないだろう。

ほらほら閉めて!なんて腰に手を当てながら言う相手……リョウクにハイハイとイェソンは名残惜しげに目の前のカーテンを閉めた。

「明日は今日の分もスケジュールが入るから、早く寝ないとね。」

予想に反して降り積もった雪のせいでスケジュールがキャンセルになった。そうなると自ずと仕事は詰まっていく訳で…朝方こなした仕事以外は全て先送りになったのだ。その分しわ寄せは後々の自分達を苦しめる……だからと言われた言葉に、イェソンは苦笑顔で返した。

今はそれよりも自分の胸を占めるモノが深く巣食っている……仕事をしていても、不意に浮かぶその事が……
だから雪を眺めていただなんて、いくら彼にでも言える訳が無い。
そんなイェソンの感情を読んだのか、リョウクは軽く首を傾げて一言。

「教えてくれないのは……もっと時間をかけろって……そう言ってるんじゃないかな……?」

「…………リョウギ?」

驚いた。今までにも色々な事で的確な事を言ってくるなとは思っていたけれど……これは……

目を見開くイェソンに、リョウクは一つ笑みを零して言うのだ。

「灯りを見てたんでしょ?でもその灯りも、ヒョンの見たいモノを見せてはくれない……なら、まだ時期じゃないって……そう言ってるんだよ。きっとね……?」

キュヒョンの言葉が胸を占める。自分が彼を惹き付けた言葉が何だったのか……
それが気になって眠る時ですらその感情に飲まれていた。そんな時に降った雪……

夜の闇に埋もれた世界を、その白く輝く光でもって照らし出す……不思議な灯りを持つ結晶。

その光を眺めたら、消え去った記憶すら蘇る気がした。普段の喧騒に紛れた音すらかき消す……この雪たちが何かを教えてくれると思った。
だから眺めていた事を、リョウクは言葉では無く感じ取ったのだ。
驚かない訳が無いじゃないか。

「ヒョンは直ぐ顔に出る……そんなんじゃ、あのキュヒョナを転がせないよ?」

フフッと笑う顔は何時もの彼の姿。鋭い物言いは鳴りを潜めて、ただそう言って笑う。
だから彼とのこんな時間が大切だと……そう思うのかもしれない。

「………ちょっと、外に出てくる……」

恥ずかしさと、読まれ易いと言われた事への打撃から。そんな事を言うイェソンにリョウクは途端に目を吊り上がらせる。

「ボクは早く寝ないとって」

「判ってるってちょっと散歩にっ」

「見えないかもしれないのに?」

言おうとした事を遮るのは、また先を読んでの鋭い言葉……だけど見たいのだ……見て感じて、それでも駄目なら。直ぐに戻って来るから……

「………転んだら、笑うからね。」

強情なイェソンには何を言っても無駄だろう。諦め半分のリョウクの言葉に、イェソンはまた意表を突かれてから。

「……ありがとな…」

そう一言だけ告げて。コート片手に雪の降る街へと足を向けた。





静かに降り頻る雪は、世界を静寂へと包む。
常に付き纏う雑念すらも埋め尽くす銀世界……
その中で、サクリサクリと歩みを進めて。

着いたのは、胸に巣食う想いの残る場所。


「…………しろっ……」


凍てつく様な寒さが身体を包む。吐く息の白さと、自然と力の入る肩は仕方のない事だろう。
そうして歩いていく先には、座る事を拒む様に重ね上げられた雪の掛かったブランコが一つ。

その横へと立ち、イェソンはユルリと空を仰ぎ見た。

そこには星空など見る影も無い、灰色へと彩られた空が雄大に広がるばかり。



「俺が………何………?」



自分が何を言ったというのか……
その言葉に彼は自分を意識したというのに……



「…………アイツを狂わせたのが……俺だって………?」



華やかな世界。苦しくても、辛くたって立っていようと決めたこの世界で。同じ様に彼も懸命に足を着けていた。その先には沢山の幸福が待っていたかもしれないのに……

なのに、自分という存在が……彼の世界を止めてしまった。
その光を遮って、自分という空で覆い尽くしてしまった………
その事が、イェソンの胸の中に闇を落とすのだ。

「もっと色んな道……あるだろ……」

自分は彼に、色鮮やかな世界は魅せてやれない。
だからと言って……目の前に立つ彼を……



「もう……通してやれない……」



そうだ……彼の行くべき道を……
世間一般に言われる普通の恋愛等………もう、させてやれない………

それ位には、彼の存在が。
あの強く自分を惹き付ける存在に、もう引けなくなっている自分が居るから………



「……………ほんと………やな、奴………」



一陣の風と共に。冷え切った頬を掠めていく白く光る結晶へと。

小さく告げて、思い出す事の無い記憶へと。
今はただ、背を向けた。





帰宅してからの第一声は、やはりというか予想通りの言葉達。

「転んだでしょ?」

「お尻痛かった?」

冷やかしにも近い言葉で出迎えられる。
全くこの階の住人は、自分を弄り倒す事に命を掛けているんじゃなかろうか?

先程までの憂いを帯びた空気は一掃され、途端に口元へと浮かぶのは引き攣った笑みだけ。

「転ぶ?………俺はそんなに馬鹿じゃな」

「ヒョーーーーンッ!!!!」

言おうとして後ろからの突撃に、イェソンは危うく舌を噛み千切りそうになった。
この激し過ぎるスキンシップは間違え様も無いだろう、馬鹿で唯我独尊なお気楽星人。キュヒョンに他ならない訳で。

「っおま!!ちょっ!離れっ」

慌てて引き剥がそうとするイェソンの体を後ろからギュギューーーッと強く抱き締めて。

「暴れない。ちょっと、このまま………」

ポソリ呟く声は甘く冷えた身体へと染み渡っていく。
絶対に離さないと決めたのだろう腕が、自分を締め付けて苦しさをも伴うというのに。

「僕を置いて行った、罰です。」

耳元で囁かれる声は何処までも甘く。
ただ優しさを秘めた響きに身体が言う事を聞かなくなる。そうして暫く経った後。

「あー……俺達居るんだけど……?」

ソンミンの呆れ果てた声にやっと身体の呪縛が解けて、イェソンは慌てて回された腕を解こうとした………が。

その瞬間、パッと離された腕に思わず二の句が継げなくなった。普段ならばしつこく付き纏って来るのに……だ。

「お風呂湧いてますから……入って下さいね。」

ニッコリ笑顔で言われた言葉に、イェソンは何も言わないまま。ただ離されたキュヒョンの腕と胸元を、無言で眺めていた。




湯の音が響く浴室。そこへと繋がる洗面所への扉を、静かに閉める音が鳴り響く。
外は未だ降り止まない雪に覆われているだろう。
その雪ですら、答えをくれなかった事に肩を落としたまま……

ユツクリと押し当てた浴室へと続く扉は、自分と彼を隔てる壁なのかもしれない……
そんな事を思いながら俯いた瞬間、浴室から響く聞きなれた声が耳を擽った。


「寝ないとリョウギに怒られますよ?」


深夜へと向かう日付けは、普段ならば自分達を追い立ている時間でもある。
その時間が突然ポッカリ空いたのだ。眠れと言う方が無理と言うモノ……  

「折角あったまったのに……風邪、引いちゃいますよ?」

優しく響く声に胸が大きく揺れる。
だって………彼はもっと冷えていた筈なのに。

「まさか一緒に入りたいとか……?僕は全然構いませんよ?」

扉越しに言われた事に思わず顔を上げる。そのまま言い返そうとして、強い力で引かれた扉にそのまま身体が持って行かれそうになった。



「腰……打たなかった?」



悪戯な顔が自分を覗き見る。外気との温度差で湯気に包まれる中で……それでも鮮明に見える表情は何処か悪戯を共有した子供の笑みが見え隠れして。

「……………打って、ない。」

逸らした目線からも見える彼のホッとした表情に、また胸が高鳴った。
あの例の公園からの帰り道。実は足を取られて背中から地面へとご対面していたのだ。
だがそれを言うのはどうにも恥ずかしい。だから隠そうと思っていたのに……
背中に着いた雪は嘘を付かなかった。

それをキュヒョンは瞬時に読み取り、帰宅したばかりのイェソンの身体を包み誰も気付かぬ内にその証拠を消しさってしまったのだ。その体温でもって……

だから身体を離された時、代わりに濡れたキュヒョンの胸元とその優しい腕に、目が奪われた。


「気付いてたなら」

「怪我が無くて、良かった……」


言おうとした言葉を奪われる。気付いていたなら、笑い者にすれば良かったのに。
自分が濡れてまで雪を溶かす事なんて……無かったのに……

馬鹿げた自分の行動を、こうやって無言のまま覆い隠していたなんて知らなかった……
それが何時からかなんて、知らない。
でもきっと………気付く前からこうやって、彼は自分の粗を隠していてくれたのだ………きっと………

だから………また、惹かれていく。
駄目なのかもしれないと………そう思うのに。



「……………俺は……お前が好きになった俺とは、違うかもしれな」



「貴方は今も昔も………僕の好きになった、貴方ですよ………」



言おうとしたのは、壁を打ち砕く言葉の筈だったのに。彼の道を塞いだ壁を壊してやろうと……そう思ったのに………



「今の僕は………何点?」



一枚の扉はもう、無いに等しいのかもしれない。



「………………40て」



「なら…………合格点だ……」



そう言って近付いてきた瞳に。
この日初めて、イェソンは自ら瞳を閉じて。


仔犬では無い男としての熱さと嬉しそうな瞳……そしてその熱く優しい唇を、深く深く受け止めた。






※兄さんキュヒョンさんを初めて自分から受け止める回!!
いや……これまでも何だかんだで受け入れてたけど、自分からして欲しいとか思っちゃったのは初めてかもー……とかね?←

あ、兄さんして欲しい思ってましたよエエやられてますね仔犬ちゃんに!!


そんなこんなで続きます←