続きです。

桜舞い散るこの季節。
暖かさが増し冬の寒さを忘れ行く昨今、皆様如何お過ごしでしょうか?
4月へと入り新生活が始まり、忙しさに目を眩ませている方々も多いやもしれませんね……
斯く言う私もその波に包まれ中々お話を書く時間が取れず……え?ボーッとしてるんだろうって?
いやいやそんなそんなっ……

バレてました?(ぅおいっ

っとまぁ堅苦しい挨拶は此処までにして!!←
前回を忘れてる方もいらっしゃるやもですが、簡単に説明すると仔犬が狼に大変身で兄さん大変っ!早く逃げてーーっ!!なんて所でしょうか?(ザックリ過ぎ
はてさてその先は如何に……


それでは参りましょうっ!!
仔犬ちゃんの暴走止まらず!?でもソレ兄さんのせいだよねっ!仕方ないない此処はズッパリ諦めて食べられちゃおうよでもでも二人にゃまだ早いんじゃ!?なーんて言って下さるドキハラ時々えっちぃ二人を暇じゃないけど眺めたいよいって大食間の方はどぞっ!!








『僕は何時までも……仔犬じゃない。』

そんな言葉と共に向けられた瞳に、一瞬息が止まった気がした………



【好きの方程式 16 】



息苦しさから浅い呼吸を吐き出す中で、どうして自分を仔犬じゃないと言ったのか?彼は何故その事を知っているのだろう?
そんな場違いな事が頭を占める。
なのにその思考を止める様に動く手が、身体中を熱くしていく。

「や、めろ……ッ…」

今までこんな事は一度として無かった。
激しいキスはもう何度となくしている……だが、それだけ……
彼はその先を急かす事も、ましてやそういった事を求められる事も無かったのだ。
だからイェソンの中では全く想像すらしていなかった、その行為……

「止めたらココ……苦しいままですよ……?」

耳元で甘く囁かれる。そうして布越しに撫で上げられた場所に、イェソンの喉が反り返った。
同時に首筋へとチクリ甘い痺れが走る。

「いい顔………」

フッと笑う気配を感じる。身体中を走り抜ける痺れに足の力が抜けそうになりながら、それでも何とか立っていようと目前の相手の肩口を強く掴んだ。
そうして震える瞼を開けば、そこには熱を帯びた瞳が一つ………


「仔犬のままなんて……もう無理だ。」


「ッ………キュヒョッ」


言いかけた言葉を止めるキスはやはり熱い。
深く入り込んでくる舌に紛れて布越しだった掌が、スルリと直にその熱さを伝えてくる。
それは今まで感じた事の無い熱さと強さを帯びて……

途端に思考が白い霧へと包まれる。
どうかすればそのまま崩れてしまいそうな身体を、目の前の相手は当たり前の様に自分へと引き寄せてそれを許してくれない。

「っ待………キュ、ヒョナ……っ!」

「だからもう待てないって……判るでしょう…?」

チュッと音を立てて吸われた唇を離される。それだけで背筋が震えるのに、そうしながら手の動きは段々と加速していく……

こんなのは………

「は、な……ッンン…」

互いの息が掛かる距離。仄かに唇の感触を感じながら、性急に高められる熱は正常な思考を支配していく。
抑えようとする声は、それでも狭いシャワー室へと響き渡っていって。

だからこんなのは………



「ほんと……いい声……」



こんなのは………だから、違う。



瞬間、イェソンの昇り詰めた熱が吐き出されかけたと同時。
ゴッ!!と鈍い音がシャワー室へと響き渡り、キュヒョンは思わず声も無いままその場へとしゃがみ込んでいた。そうして次に聞こえた音はキュッと蛇口を捻る音と、この季節ではまだまだ冷たい水の感触。



「こんなお前は………ッ…………嫌いだっ……」



声と同時に向けられた背にキュヒョンはただ呆然とその背中を眺める。小さく震えたその背は何を思うのか……

「少し頭………冷やせ。」

乱れた息はそのまま。イェソンはただそう呟くとそのままシャワー室を出て行ってしまった。


「……………あーあ………」


そうして残されたのは、冷たい水が降り注ぐ中で座り込んだまま額を押さえるキュヒョンが一人。

「頭突きとか……本気で痛いって……」

色気ある表情でそれまで身体を硬直させていたイェソン。そんな彼が取った行動に思わず苦笑が漏れる。
まさか頭突きなんて行動で行為を阻止されるとは思ってもみなかった。
だけど本当に苦笑したくなるのは……
暴走してしまった自分の心。


「ほんと………痛すぎ……」


頭突かれた額が痛い。でももっと痛いのは、我慢の効かない自分の心………

「仔犬は、嫌だったのにな……」

ポソリ呟いて。
キュヒョンは頭上から降り注ぐ冷たい水を、ただ無言で眺めていた。







「やーっぱり……」

呆れた声にキュヒョンはハイハイとベットに体を埋める。それに一つ溜息を吐きつつ手元にあった薬を差し出して。

「何があったかは知らないけど……自分を大切にしない人はボク、嫌いだよ。」

冷たい響きは言葉だけ。それでも労りある目を向けてくれるリョウクにキュヒョンは無言のまま薬を飲み込む。何だかんだで冷たいシャワーを二時間以上は受けていただろうか?濡れた練習着と乾かさないままだった髪の毛で宿舎へと帰宅して。
夜になる頃には見事な病人へとキュヒョンはその身を変えていた。

「これ以上俺、嫌われたくないんだけど?」

自傷気味に笑うキュヒョンにリョウクはヤレヤレと肩を竦める。
恐らくは兄であり、今はキュヒョンの恋人となったイェソンと何かがあったのだろう。
だがそれは二人の問題であって、自分が関わるべき事ではきっと無い………

「嫌われたく無かったら、もう少し素直になったら?」

言われた事にキュヒョンは目を瞬かせた。
素直過ぎる想いを伝えている様に見せて、実は本心は心の奥へと留めて。
そうしてイェソンと接してきたコレはその代償だと……
だから気持ちを留めておけなくなったんだと、そう言われている様で………

「リョウギ……特技を読心力に変えたらど」

「いい具合に腫れてるそのおデコ、もっと大きくして欲しい?」

「リョウク様ノ料理ハ天下一品ダナァオ腹一杯ダァ」

ニッコリ笑顔で恐ろしい毒を吐くリョウクに引き攣り笑顔を一つ。
そんなキュヒョンへとまた笑顔を向けて、早く熱が下がる様にとリョウクは早々室内の電気を落として部屋を出たのだった。







少し荒い息が室内を占める。
熱で苦しいのだろう、その額へとヒヤリ冷たい手を当てて。そうすれば深かった筈の眠りが緩やかに解けていく………

「……………ゴホッ…」

何か言おうとして。先に出てしまった咳に冷たかった手がそのまま頬へと降りてくる。
暗闇へと包まれた室内はその人物の輪郭だけを捉える事しか出来ない。それでも判る、掌の持ち主。


「あったまって、ない……」

呟いた声は掠れていて、頬へと当てられた手が喉元へとスルリ優しく下りてくる。
そうしながら言う事は何時もの彼と変わらぬピリリと辛い言葉なのだ。

「どっかのバカはコレで風邪引いたらしいが俺はそんなにヤワじゃないって実験しようと思っ」

「ヒョンまで風邪引いたら泣きますよ……?本気で。」

先制攻撃なんのその。
静かに告げられたその言葉に、イェソンは目の前の相手を無言のまま見詰めた。

訪れる静寂は、二人の心を交差させる様に室内を覆い尽す。


「やっぱり僕はまだ……仔犬です。」


飼い主の心は判っていても、目の前にあるモノへと向かう欲望を抑えられない。
待てと言われて待てる程、抑制が効かないのだ。
だから相手の心を汲み取ってやれない様な心なら、そんなのはただの傲慢に、過ぎないと………

「何時になったら……男として見てもらえるんだろ…」

当てた掌越しに喉が大きく上下する。
そうして深く吸い込んだ息が揺れている感覚に、イェソンは朧げに見える輪郭越しのキュヒョンの目元へと指を向けて。
そのまま触れた先は、生暖かい水で目元を濡らしていた。

「………仔犬はもっと、可愛い。」

自分が大切だと思っていた仔犬は、何時も笑顔で人懐っこくて……ウザったい程足元へと纏わり付いて離れない。それが本当は可愛くて、だから仕方ないなと抱き上げていたけれど。

「もう………違う……」

大好きだった仔犬なのに、いつの間にか知らない内に。大人へと変わっていた大切なその仔犬……
だけど自分へと向ける想いの強さの本気を目にしたから。

だから、戸惑った………

「待ってるって………言った癖に。」

待っていてくれると思っていた。まだまだ相手の想いへは辿り着けていない心を待っていてくれると……
だから強引に先へと行く相手へと拒絶を占めした。
無理だと………今はまだ時期ではないと。

なのに………



「なのに何で………お前が浮かぶ……?」



そのまま柔らかな感触を受けて、キュヒョンは自身の熱以上の熱さを感じた。
怒っている筈の彼からの……
もしかすると嫌われるかもと思っていた彼からの……
イェソンからのそれは、想いを込めた熱いキス。

「仔犬なら、仔犬らしくしろよ………」

可愛いと思えるだけで留まっていて欲しかった。
なのにそれはもう………

叶わない。

だってどんなに冷たい水を浴びても、熱が冷めないから。だから………だからこの熱を与えたこの相手が悪いんだと。そしてきっとこの熱を冷ましてくれるのは、やっぱり目の前のこの相手だから。



「本当のお前………見せてみろ。」



「………………我儘な飼い主は、だから飼い犬が困るんだ………」



それだけ告げて。冷えた身体を温める様に………
キュヒョンは目の前の相手へとその熱い腕を大きく伸ばした。







※おおーう又しても新たな展開来る!?(え
何やら今回は少し兄さんが仔犬ちゃんを仔犬として見れなくなる場面がチラホラとww
しかしアレですな一度上げられた熱を収めるのは非常に難しいと!!

そんなお話という事でっ(どんな話だよ

思っていた方向とは違う道を魅せてくれる二人を早く書きたいなぁと思いつつ。


続きます次回はやっとこえっちぃお話突入か!?←