さてはて続きです。
昨年第一話を投下し既に1ヶ月近く経っているのではと思われるのですがー………

二話目で(知ってます

着地はボンヤリ決めておりますが、流れは彼等に任せるという毎度ながらののらくら発進。
皆様飽きたらボスッと切り捨て後免でお願い致します責任は取りかねます故ボスッとズバッと!それでもどうしても責任取れと仰るならば我が嫁にでも(嫌がらせだろ


それでは参りましょうっ!!
久しぶりのお話投下にて胡蝶さん文章支離滅裂っ!なんて苦言はゴックリ飲み込んで!(オイ)静かなこのお話の流れは結構好きだよ仕方無いから読んだるよってぇ待つ時間すら寛容に受け止められるそんな大物さんはどぞっ!!!!(何だソレ









【追憶の欠片~時と針2~】



硝子越しに暖かな光を感じて意識が浮上していく。
そうなると浮上する前までの無音の闇は薄れていき、風で揺れる草木の音や鳥の囀り。それに楽しそうな笑い声が響き届く。
折角気持ちの良い空間も、その笑い声だけで打ち壊されてしまうんじゃないかと。無意識の内に眉間へと寄せてしまう皺はどうにも隠せない。

「……………うるさい…」

「貴方のイビキも、大概煩いですけどね?」

クスリと笑うその声に、完全なる覚醒を促された。うわ言に近い言葉だったソレに、まさか声が返ってくるとは思いもよらず。というか、もうそんなに時が経っていたかという驚きの方が今は大きい。

「これでまた、サボり確定です。」

どこか楽しそうなその音に、重かった瞼をやっと押し開いたジョンウンは頬へ当たる陽の暖かさと自分を覗き込んでくる相手へと、気だるさを隠しもせずにその目元へと乗せて見せた。




「今日のお昼は、野菜サンドです。」

ハイ。そう当たり前の様に差し出してくる相手は、やはり当たり前の様にジョンウンの隣へと腰を下ろしている。どうかしました?なんて質問には答えないまま……その姿に何でコイツは自分の昼飯をわざわざ買ってくるのだろう?とか。何より今はもう昼時よりズレた時間なんじゃなかろうか……とか。
思いは巡るだけで口にはしないが、だけれど。

此処に何故彼が毎日同じ時間に現れるのか………
疑問に思って当然の事が、何故だか当たり前の様な気がして。その事が一番不可解だと、ジョンウンは受け取った野菜サンドを握ったまま隣でカツサンドだろうソレを頬張る相手を無遠慮に眺め見た。

「曇りだって聞いてましたけど…天気予報は当てになりませんね。」

モグモグと口を動かしながらの言葉は世間一般でいう雑談。硝子を隔てた先の広がる空と雲を眺めているのだろう彼は、食を満たす事と雑談という二つを一度に熟す事が出来るようだ。とはこの一週間で理解した。

「明日は雨だと言ってましたが……この感じだと今日と同じ晴れですね。」

一つ目のカツサンドを食べ終えて、二つ目へと移行する。食欲は年頃に見合ったモノなのだろうが、飲み物を飲まずに食べ続けて喉に詰まらせないのだろうか?というか、同じモノを食べて飽きないのだろうか?

「あー……アンパンも買えば良かった…」

あ、やっぱり飽きるのか………
なんて呟かれた言葉を意味もなく観察する毎日。

この目の前の相手。チョ・ギュヒョンと名乗る男と出逢ったのは、丁度一週間前のこの時間。
午後も三時を過ぎた頃………
フラリと入った中庭の、木々で囲まれたこの場所で。
彼の奏でるその声と、出逢った………



『初めまして………記憶のナイ貴方……』



そんな言葉に身体が動けなくなったのは記憶に新しい。あの時の旋律は、記憶を無くし何事にも関心を得られなかった自分の心へと。深く強く流れ込んできた………
その音はまるで、自分の弱く波打つ心臓を。強く大きく震えさせる様に身体中へと響き渡り。
止まってしまった思考と【時】を、突き動かそうとするような………そんな響きを乗せていた……



『「そんなに見られたら、穴が空きます。」』



思考に嵌っていたジョンウンへと、困った様に笑みを向けて。その言葉もあの日出逢った時と一字一句変わらぬ同じ羅列。

「食べないなら、僕が食べちゃいますよ?」

ブクブクになったら責任取ってくださいね?

笑って告げられる優しい声音に……一瞬胸が揺らいだ気がした。





「もう暗くなり始めました……」

共に遅いだろう昼食を摂ってから、針はどれだけ動いたのだろう?
ジョンウンはその言葉に眺めていた硝子越しの空から、隣へと視線をユルリ動かした。
そこには恐らく数時間前と変わらぬ、同じ笑顔。

「………何色だ…?」

どこか軽くなってしまう響きは、既に失われたモノへと対して興味という【モノ】が無いからなのかもしれない。ジョンウンのその声にやはりキュヒョンは変わらぬ笑顔をその口元へと静かに讃え、耳に心地良く響く音で声を発するのだ。



「今日の空は………薄いオレンジ色です…」



あの日……………あの事故という名の出来事から久しく目覚めたあの日………
あの時は見えていた、色鮮やかなあの輝き達が………
今の自分には、もう見えない。
徐々に色を失くしていくモノ達を自分はただ。

静かに静かに………受け止めた……



「今日は貴方の時計に少し、仕事を与えます。」

キュヒョンの声がどこか遠くから聞こえてくる様な、そんな感覚に陥った。
彼へとこの事を告げたのは、出逢って僅か三日目の事……母親と呼ばれる相手にも。そして父親や弟という、その役割を受けた彼等にも………告げてはいない、その事実。


「【色】で感じられないのなら………音で……」


スルリと手が伸びてきて、キュヒョンの大きな掌がジョンウンの右腕を緩やかに掴み上げる。


「風や陽射しだけじゃ……受け止められないモノもある。でしょ………?」



目覚めた時には見えていたあの色達が、自分から完全に消え去ったのは何時だったろう?
黒と白……そして灰色の………モノクロへと変化してしまった、自分の世界。
だから時の経過を感じられない。感じる事が………今はもう、出来ない………



「感覚だけでなんてね?………それは、もう少し時間が経ってから………」



長い指が右腕へと嵌められた時計へと伸びていく。そのままピピッと軽い電子音を響かせた。
恐らくは夕刻なのだろう、告げられても判別の出来ない白黒の世界を映したジョンウンの瞳へと。長い指がスルリと時計の硝子を指で撫で去っていく。



「これで貴方は、僕とのこの時間以外だって……感じる事が、出来る。」



何処か物憂げなその表情も、白黒の世界では深く感じる事は出来ない。
彼が自分との時間を共有するのは午後の三時からなのだと、この一週間で理解した。
それまでは何故か足が向くこの場所で……
この中庭で、朝から延々時が経つのを待つ……そんな日々。



「サボりで怒られるのは、嫌でしょう?」



軽く言う出逢ったばかりのこの相手だから、誰にも言わずにいた事を……伝えられたのかもしれない。
昔の自分がどんな人間だったのかを、今は知らない。
だから自分を知る相手には、知らず知らずの内に警戒心というモノを持ってしまっている。前を……自分の知らない以前の自分を……求められているとそう、感じるから。

だが目の前のこの相手からは、それを感じられない。
今ある自分を……色を忘れて時の経過を理解出来ないこの自分を。笑ってただ受け入れてくれていると……そう、感じるから………



『「……………お前は【前の俺】を…知ってるか……?」』



出逢ったその日に聞いた、そんな言葉の羅列達。
一週間というその短い時間で距離を詰めてきた目の前の相手へと。また同じ言葉で問い掛ける……
俺に【俺】を、求められる事が……怖いから。周りの皆が見せるあの悲しい笑顔を、彼からも感じたくはないのだと……何故だかそう、思うから。


それに彼はあの時と同じ笑顔で、軽く首を傾げて言うのだ。



『「新聞でだったら、知ってます。」』



あの時のあの言葉と同じ、紙面に踊った事故の記事でのみの出逢いだと。
そう言いながら笑った彼のその瞳に、二度目の【自分】を生きて初めて、安息の地を得たような……そんな気がした。








※二話目でございます。
そしーて何だかゴッタゴタと詰め込んだ気がムニャムニャニャ(は?

記憶喪失な兄さんとキュヒョン氏の出逢いから、既に一週間過ぎてからのお話展開いか如何に。
既に展開読めてる方もおられるやもですがー……
そこは言わない喋らないって喋りそうになったらその口思っきり濃厚ちぅで塞ぎに向かいま(黙れコラ



のったりですが、続きます。