正きも(深心・その後)です。

ちょいと長くなり過ぎたので、その後という形でことの真祖を書きたいなぁと(え
何で兄さんがあんな形で優男さんへと接したのかとか、実はこんな形で裏では動いてたんだよー。とかとか?(どんなだよ
それを気軽に読んで頂ければな、と。

それでは参りましょうっ!!
結局纏める能力皆無はその後に頼るって毎度ながらの流れだよっ!それも安定判ってるからだいじょぶバチコイ二人と共に笑ってやるよーーーーっ!!なーんて言って下さる、どんな二人も大好きだと言って下さる方はどぞっ!!





『んで?結局どーにかなったんだろ?』

そうぶっきらぼうに告げてくる声に、機械越しからでも判る見目麗しいその顔が呆れ具合となっている事を容易に想像出来て。
それに一つ返事でだけ返す。
そうしながら手元の珈琲を片手にリビングを抜け、朝から生憎の雨となったその空を冊子越しに緩り眺め見た。





【正しい気持ちの伝え方(深心・後日談)】






『いい加減、俺を巻き込むんじゃねぇよ……』

ったく……。
そうブツブツ言う声に珈琲を一口静かに啜ってから、苦笑で以てソレに返した。
尚も続くだろうと思われた苦言は、しかし次に放たれた声音で終止符が打たれた事を悟る。

『ま、お前等の状況知れっから…たまにゃあ良いけどな?』

フッと笑う音が聞こえた。それは心の底から自分達を想い笑んでくれている、その音。
こうやって何だかんだ言いながら、彼は自分達を見守ってくれているのだ。
その事に少しの擽ったさと、そして感謝の意が胸から湧き上がる。


にしても、と受話器越しに、また相手の声が上げる。

『アイツより先に、まさかお前から相談来るとは思わなかったけどな……』

ジョンウナ?


そう自分の名を呼ばれて。
それまで眺めていた空から目を離し、イェソンは足元へと並べられたサボテン達へと視線を落とした。



キュヒョンがヒチョルへと連絡を取るその数週間前。実はイェソンは、キュヒョンよりも先に今回の騒動となる悩みをヒチョルへと相談していたのだ。

結婚してから数年。イェソンは兄や他の仲間達へとキュヒョンの事で相談するなど皆無に近く、毎日をポヤリポヤリと緩やかに過ごしていた。それ程に毎日が幸せで楽しくて。喧嘩もしたり悩む事だってあったけれど。
それでも誰かの力を借りようとまで思考が向くことは無かった。

だが今回。そう今回ばかりは兄へと助けを求めたのだイェソンは。
そのキッカケになったのは、ご近所さんとの井戸端会議なのだけれど……


それは買い物からの帰り道。ぽてぽて歩いていたら呼び止められた数人の奥様会合。そうなるとイェソンもまた奥様であり、ご近所付き合いもせねばと輪に加わる事となり……
そこで聞いた、それぞれの旦那様の話しの数々。

「だって……」

あの時の奥様方の会話を聞いて、ふと疑問が湧き上がったのを思い出す。

「キュヒョナがずっと、優しいから。」

そう。優し過ぎて……だから疑問が浮かんだ。

彼はいつ、ストレスを発散してる?
大きな声で怒鳴ったり。
八つ当たりしたり疲労を全面に出してみたり…
愚痴を言ったり機嫌が悪かったり何も手伝わず無視を決め込んだり………
そんな世の奥様方の愚痴を聞いて。だから余計に疑問に思った。

「キュヒョナの色々が………無かったから。」


彼は自分へと、そういった姿を見せた事が皆無に近かった。何処の旦那もそんなモノだと納得する彼女達に、ならばもしかすると……キュヒョンは自分にそんな姿を隠しているのかもしれない……
だから悩んで悩んでヒチョルへと、相談した。


『………俺みたいなアイツが見たいってのが、余計だけどな。』


やれやれと。ヒチョルが肩を竦める姿が見える気がする。それにもやっぱり苦笑のまま。だってヒチョルは自然体の己を何時だって臆すること無く見せている。イェソンはペタリ床板へと座るとタンコマサボテンへと指をちょいちょい優しく触れた。

だから、今回のこの相談は……

「ヒョンじゃなきゃ、だめ。」

それにヒチョルは思わず携帯越しで良かったと胸を撫で下ろした。だってこんな風に自分じゃなきゃ駄目だなんて言われたら、嬉しくてニヤけた顔が見えてしまうじゃないか。



『んで?見れたのかよ……お前の欲しいモンは?』

不意に言われてイェソンは片手に持ったままの珈琲カップをコトリ床へと静かに置いた。
そのまま思い出されたあの日あの時の情景に、思わず口許を押さえてしまう。

『……………言わなくて良いわ…』

つーか絶対言うな言ったら今すぐキュヒョンを殴るぞマジで。

「…………だめ。」

それにはむー。と、何時ものイェソンお得意唇突き出しながらの膨れっ面よろしく。大切な旦那様を殴るだなんて許さない、と父親と成り代わったヒチョルへ小さな牽制一つ。携帯越しなので見えていない事はこの際置いておこう。

「俺の旦那様……殴っちゃ………や。」


ヒチョルのアドバイスでキュヒョンを追い込む事にイェソンは見事成功した。
ヒチョルは言ったのだ。小さな苛々を積み重ねれば、その内必ず爆発すると。
幸か不幸か今のキュヒョンは仕事が結構忙しい。
ならばソコに小さな嫌を積み重ねれば、必ず優しさだけでは無いモノが現れる。

『やった事がガキだけどな……』

自分のアドバイスを受けてまさか子供の様な悪戯を仕出かすとは流石のヒチョルも思わなかったと彼は笑う。その内堪りかねたキュヒョンから自分へと連絡が来る筈だから、そうしたら最終手段を使えとイェソンは言われていたのだ。

そして、見事ヒチョルの言う通りとなった訳なのだが。

「…やり過ぎた、かな……?」

ポツリ言うイェソンにヒチョルはまた笑う。
どれだけお前達は互いを心配し合うのかと……



『気ぃ使い過ぎたらな……その内それに押し潰されるって、知ってるか?』



相手の事を思う余り、自身の想いを留めすぎるのは……それは違うと。



『お前等は、それでどうにかなる程、薄くねーだろ………?』



「………………ッ…だから、ヒョンじゃなきゃ……」



そう。今回のこの相談は、だからヒチョルでなければ駄目だったのだ。こうして自分達を誰よりも理解し時には優しさだけでは無い叱咤と共に見護ってくれている。
そんな彼を、イェソンは知っているから。


『こら……泣いても俺は慰めねーぞ?』


ヒチョルは尚も言う。泣くならば、ちゃんと慰めてくれる相手が傍に居る時に、と。

それに一つ笑ってイェソンは緩り頭上を見上げるのだ。



「だいじょうぶ…………もう、いるもん………」



『………………………オイこら……』



待て待てそりゃどーいう事だと突っ込みを入れようとするヒチョルへと、それまで聞こえていた声とは明らかに異なる声が音を成す。



「僕を嵌めるなんて……酷いですよ?」



お義父さん?



『…………気色悪り……』


ヒチョルの返しも何のその。未だ自分を見上げるその瞳へと、おはようのキスを一つ。

『つーか何でお前が知ってんだよ……』

きっとゲンナリ顔だろう受話器越しの相手に、キュヒョンは人の悪い笑みを浮かべて楽しそうに言うのだ。

「貴方達の教育の、賜物でしょう?」

『……………おめぇも再教育してやろうか?』

「それ、楽しみに待ってても良いですか?」

『……やっぱ嫁にやるんじゃ無かった…』

盛大な溜息と共に漏らされた言葉。本心では無い、ヒチョルの優しい嘘の一つ。



「………ありがとうございました……ヒチョリヒョン。」

告げながら、よいしょとイェソンの真後ろへと腰を下ろす。最近では共に居る時必ずそこが定位置なのだ。


『……何かあったら、何時でも聞いてやる。』


「……………」


『なーんてな……?』


そんな言葉で通話は切れた。無音となった携帯を耳から外して、キュヒョンはその口元へと笑みを浮かべる。自分達の兄であり、父親の様な存在である彼は……きっとどんなに忙しくとも、自分達の事となれば駆け付けてくれるだろう。

なんたって…


「……はよ………旦那様。」

なんたって、馬鹿正直な程想いを伝える事に全力になれるそんな愛しの奥様を。育て上げた、そんな優しい彼だから。

「おはようございます……僕の奥様…」




「これ……僕の珈琲でしょう?」

イェソンがコクリコクリと飲んでいるモノへと、カップを取り上げながらそう告げてやれば。

「………俺の。」

苦味で眉間に皺が寄りながら。そんな風に言う唇へとごめんなさいのキスを一つ。

「今日は寝坊、しちゃいました。」

「……………疲れてる?」


自分の背へと寄り掛かりながら、イェソンは伺う様にちろり顔を上げてくる。
それに一つの笑みと共に、キュヒョンは肩を竦めてみせて。


「疲れてるから………甘やかして下さい。」


「………ん。」


コテリ一つ小首を傾げたその後で。
はい、とぽふぽふ膝を叩いて花開く様な笑顔を一つ。


「……僕を、甘やかし過ぎです。」


「甘やかすの……俺、得意。」


ニッコリ笑顔は誰もを魅了して止まない。そんな風に受け入れられたら、甘えない訳にはいかないじゃないか。


「ヒチョリヒョンが、怒ってましたよ?」

今回の計画をイェソンが素直にキュヒョンへと伝えた事に怒っていると。そう告げてみても彼は何処までも
澄んだ瞳でコテリ小首を一つ傾げて。



「そんなの……ヒョンは判ってるもん。」



自分がキュヒョンへと真相を告げる事すらヒチョルはきっと想定済みだ。
当たり前の様に言うから、キュヒョンはこの日初めてヒチョルへと同情の念を抱いてしまった。
この息子は、本当に手強い。



静かに降り行く雨音は、優しい静寂を与える琴葉。
その音へと耳を傾けながら、二人は今日も今日とて優しい音を奏でていく。

「タンコマ達に、挨拶は?」

「した………けど…」

病院は、嫌だから。

「いっぱいは、しない。」

「あの時の事、聞いてたんですか?」

盗み聞きは、いけません。

「…だって、前は焼きもち、した………」


……………………


「やっぱり貴方は、欲しがり過ぎです。」


「……………や?」



「………『や』じゃ………ない。」



そうして二人の口許へと今日もまた、笑顔が花咲く。

そんな二人の、緩やかな日々。




※おまけというか、番外か?こんな事があったんですねぇ……ってか兄さん計画全て優男に言っちゃうとかやぱーり安定ぽややんさん?(笑)
こんな二人が私はやっぱり好きなのですな。
昔の彼等と出逢えたかはね……皆様へと、お任せしますっ(待て
それでは、また。