本館一周年記念のフリーSSです。

貰ってやるよ!と言う素敵な方は、ぜひぜひお持ち帰り下さい。
その際一言ご連絡を頂けると、美花がにやにやしながら喜びます。

昨日9/21が本館立ち上げの日でした。
一年前の今頃、蓮キョへの熱い気持ちが暴走し、そして『身代り姫~』のラストをうっかり破壊して、勢いでサイトを立ち上げたんだったわーと、改めて過去を振り返ってみました。

…勢いだけなのは、今も1年前も、あんまり変わってないなーと思います;

絶賛放置プレイ中の本館で、遊びに来てくださってる方には本気で申し訳がありません~
アメブロ主体の企画やコラボもあるので、そろそろ本気で移転作業とか考えなくちゃと思います…(遅い)

徐々にいろいろ、手をつけて行きたいと思います。

ではでは、どうぞ~


***


光量の落とされたリビングに、グラスとグラスが重なる澄んだ音が鳴り響く。

「一年、傍にいてくれてありがとう。キョーコ」

そう言って、合わせたグラス越しにキョーコの瞳を覗き込んだ蓮は、ふわりと微笑む。
その美貌が柔らかく綻ぶのを、キョーコは瞳を細めて、真っ直ぐに見つめて。

「こちらこそです。一年一緒にいて下さって、ありがとうございます、敦賀さん」

そして互いに小さく頭を下げて、顔を見合わせ、互いに小さく微笑み合った。

ここは蓮の自宅リビング。

今日は、蓮とキョーコが付き合いだして丁度一年目の日だった。

あまり記念日記念日と騒ぐのも子供っぽいのかも?とその話題にはあえて触れなかったキョーコだったけれど、『記念日のデート、どうしようか?』と当然のように蓮に切り出されて、部屋でささやかなお祝いのパーティーを開くこととなったのだ。

考えてみれば、蓮もキョーコと同じように記念日を祝いたがる人だった。
バレンタインだクリスマスだと恋人同士のイベントに心血を注ぐ人が、この機会を見逃すはずはなかったのだ。

リビングには心地よい空気が流れていた。

2人きりの夜は、静かで温かくて…

全てが満ち足りて、足りないものなどひとつもない、幸せな夜だった。

「一年、あっと言う間でしたねえ」
「ん…君に告白したのが、つい昨日のように思えるのにね」

グラスを口にした蓮がそう言って、少し擽ったげに笑う。

そんな彼とソファーに2人寄り添って座り、寛いだ様子で摂る食事は、どんな食事よりも最高の贅沢だわとキョーコは思う。

目の前には宝石箱の中身を撒いたような都内の夜景が広がっているし、隣を見れば愛しい人の輝く美貌がある。
料理を並べたテーブルの、中央に置かれたキャンドルの炎が柔らかく辺りを照らし出し、互いが手にしたグラスの中では、シャンパンが小さな泡をしゅわしゅわと弾けさせていた。

特別な日だからと蓮が開けたシャンパンは、甘くてすっきりとした、口当たりのいいものだった。
クリスタルのフルートグラスに注がれた金色の液体は、淡い光を受けてキラキラと光り輝いている。

「あっと言う間の一年だったけど、得たものも大きかったよ?理由がなくても、君と一緒にいられる時間が手に入ったし」

嬉しそうに微笑む蓮は、そう言ってキョーコの頬に唇を寄せる。

それを擽ったい思いで受け止めたキョーコは、

「それに、お料理も、ちょっとだけ出来るようになったし?」

そっと唇を綻ばせ、瞳に悪戯っぽい色を浮かべて蓮を仰ぎ見た。

目の前のテーブルに並ぶのはスモークサーモンとケッパーのマリネに、長く煮込んだビーフシチューに添えた焼きたてのパン、各種取り揃えたソーセージとチーズ・クラッカーの盛り合わせ、そして生クリームに苺やベリー類をたくさん散りばめたパンケーキ。

この準備は、蓮とキョーコが2人で一緒に行なったものだったのだ。
素材を生かしたものが多いけど、過去の彼の料理の腕前を考えれば、それはお手伝いとは言え劇的な成長ぶりだと思う。

それを思って笑って蓮を見上げると、同じく笑った蓮がキョーコを見つめる。

「確かにこれは、俺にとっては大きな進歩かもね。鬼教師が傍についているから、今後も頑張らなくては」
「『鬼教師』って…それってもしかして、私のことですか?」
「『食事は人の基本です!』って、食べることも作ることもみっちり叩き込まれたからね。それに『こんなことも出来ない人とは別れる』って言われるのが怖くて、頑張りましたから」
「もう、それぐらいで別れるなんてこと、私言いませんてば」

蓮の鼻先を軽く指先で弾いて苦笑したキョーコは、グラスをテーブルに置くと、蓮に柔らかく身を寄せる。
すると蓮は、当然の動きでキョーコを引き寄せ、その身体をそっと抱き締めてくれた。

そして、

「君もこの一年で成長したね?今やどのドラマにも欠かせない、立派な助演女優だ」

指先を近付けてきた蓮の仕返しを避けるため、笑って鼻を隠したキョーコに優しく微笑む。

その微笑みを見つめて、キョーコも一緒に照れ臭げにそっと微笑んで。

「大先輩の敦賀さんに言われると、大変お恥ずかしいですけど…出来る限りの力で、頑張っています。まだまだ、いじめ役が多いですけどね」
「君になら、俺もいじめられてみたいって思うけどね?」
「もう、敦賀さんったら」

蓮に叩く素振りを見せながら、甘い香りの漂う胸に顔を埋めて、キョーコは心の奥でこっそりと考える。

私の本当の一番の成長は、こうしてあなたの傍にいられることだわ、と。

一年前、恋に嵌るのが怖くて、蓮ばかりに夢中になりそうな自分が恐ろしくて、キョーコは自分の気持ちに蓋をしていた。
キョーコの知っている『恋』はその気持ちにだけ縋る、何も周りが見えなくなるような、盲目的なものだったのだ。

そうすることでしか自分を確立できなかったし、そう言う自分しか求められてこなかった。

だから自分は、またそうなることを1人恐れていた。
もう、愚かな恋に身を焦がすような真似は、絶対にしたくはなったのだ。

でも、だけど。

キョーコを求めた蓮が望んだものは、好きなことに夢中になる、ありのままの『キョーコ』だった。
盲従を求めることもなければ、追従を求めて自己を確立することもない。

こんな恋もあるのかと、驚くばかりの日々が重なるこの1年だった。
蓮と恋に落ちることを恐れていた自分を、『勿体ない時間を過ごしたのかも』と振り返るようになるほど、幸せな日々がキョーコを待っていたのだ。

蓮のお陰で、自分の『恋』は大きく形を変えた。

そのことへの感謝の気持ちを、そして好きと言う気持ちを少しでも伝えたくて、キョーコは蓮に抱くつく腕に力を込める。

すると、小さく笑った蓮がそっと動いて。

「キョーコ…来年も再来年も…この先ずっと、毎年この日は、2人でお祝いをしようね」

顎に手を添えキョーコの顔を上げさせると、頬に額に優しいくちづけの雨が降ってきて…

知らないうちに瞳を潤ませていたキョーコは、その言葉にこくりと頷く。

「傍にいて下さい、敦賀さん。この先も、ずっと」

そう願うように囁くと、間近の距離で蓮が微笑む。

ゆらゆらと揺れる、オレンジ色のキャンドルの灯りに照らし出された蓮は、酷く綺麗な幸せそうな表情を浮かべていた。

「こちらこそ。君が傍にいてくれる、こんな幸せを知ってしまったら…俺はもう、君を手放せない。もういいって言っても許さないから、覚悟して」

そうして額を重ねた蓮は笑うと、気配を察して瞳を閉じたキョーコにゆっくりと唇を重ね合わせた。

柔らかな唇を受け止めながら、キョーコは思う。

自分と同じように、蓮もキョーコを求めてくれる。
それは、とてつもなく幸せで、幸運なことだと思うのだ。

そうやって想う相手と求め合える関係を、来年も再来年も、この先もずっと、続けていけることが大切なことなのだ。


願うのならば、この幸せな日々が、ずっとずっと続きますように。


祈るように、誓うようにそう考えながら…



蓮に身を委ねたキョーコは、彼との幸せな触れ合いに、夢中になっていくのだった。




*END*


最後に。

マックちゃん、素敵ネタを頂きましてありがとうございました~(^人^)♪