前回の振り返り



鬱蒼と生い茂るジャングルの中

やっと目的のシーギリヤロックが

見えてきた。

 

 

岩肌とジャングルの緑、

コントラストが美しい世界遺産だ。

 

 

蒸し蒸しとした気温の中、

急な階段を登る。

頂上に着いた途端、

クミ子は心地よい達成感に包まれた。

 

 

頂上からは広大なスリランカの

景色が一望できる。

 

 

「こうやって景色を見ていると

自分の存在とか悩みとか

小っぽけな事だなと思えるよね」と

メグが呟く。

 

 

軽く頷きながら

クミ子は大きく深呼吸をした。

 

 

シーギリヤを後にした二人は

今回の旅の目的地、

カルナカララリゾートへ向かった。

 

 

カルナカララは、心身の癒しを

コンセプトに作られたホテル。

滞在中はヘルシーな食事や

アーユルヴェーダやヨガなどが

提供される。

 

 

二人は蓄積疲労を取りのぞくべく

4泊の滞在中、すべてこのホテルで

過ごすことにした。

 

 

 

ホテル内の澄んだ空気。

キラキラと輝く川の水面、

そして、木漏れ日の差し込む森。

 

 

想像以上に素敵な場所で

もっと長い滞在にするべきだったと

クミ子は少し後悔した。

 

 

医師の問診を受け

決められた治療内容をもとに

トリートメントを受ける。

 

 

毎日3時間、心を無にして受けた

トリートメントのおかげで

クミ子の身体も心も軽くなっていった。

 

 

疲労困憊が口グセのメグも

徐々に顔色が良くなっていた。

 

 

カルナカララの最後の夜。



二人はハーブティーを片手に

夜空を見上げていた。



「会社をね、辞める事にした」

クミ子は唐突に話し始めた。


 

「辞めて、どうするの?」



「…カフェを開く。

チャイとスパイスカレーに特化した

カフェ。今、銀行にも相談してる」



「生活は?大丈夫?」



「生きていくための蓄えは

それなりにあるから大丈夫。

今までは、日々の生活や

老後のために働いてきたけど…

これからは本当に自分のやりたい事に

フォーカスして生きていきたいなって」



「そっか、決めたんだね。

新たな一歩、心から応援してる」



家族や友人の

誰にも話していなかった決断を

初めて話した夜。

星がいつもより輝いて見えた。



続く