この病気になって最も悲しく切なかったこと、それは……。
ステージが、余命がどうのこうのという話は自分自身かなり前から予測して、受け入れていたことなので、別段どうということはなかった。

最も悲しく切なかったのは年老いた両親のこと。
当然、親よりも先に亡くなってしまうことの申し訳なさ、ということはひとまず置いておきましょうか。

いやあ、まさかと思ってたのでけっこう僕にとってはショッキングな出来事でした。

それは、親が僕の病気と本気に向き合ってくれていないことでした。
年齢的にもかなり高齢ではあるけれど、特に痴呆が進んでいるというわけではありません。日常会話はもちろん、喜怒哀楽も普通のかたと何ら変わらないのです。

別に、親にたいして涙を流してくれとまでは言いません。せめて、僕の病気を理解して「大丈夫か?」の一言ぐらは欲しかったです。

ステージ、余命の話をした時も別段悲しむわけでもなく、特にこれといった感情を示さぬまま話を終えてしまいました。こっちが拍子抜けするほどに。

話終えたあと、大阪の自分の部屋に戻って、微かに漏れ聞こえる両親の会話に思わず耳を傾けていました。

そうはいっても、二人きりになればそれなりに重たい雰囲気になってしまうのかなって心配もしました。
ところが、そんな話のあとも、普段通りバカ番組を観ながらヘラヘラ笑っている親の姿をみて愕然としてしまいました。

ホントにこの二人からオレは産まれてきたのだろうか?そんなことさえ頭を過ったほどショッキングでした。

高齢ゆえ、逆に感受性が高過ぎて、狼狽したりパニックになってしまったりするよりは良かったのかもしれませんが、それにしてもねえ。

親なんてそんなものなんですかね。それとも僕がアマちゃんなんでしょうかね。

先日、両親は大阪でそこそこ立派な墓を購入したようで、自慢げに僕に見せていました。俺が先に入るようだなって冗談を言いましたが、いまは親と一緒の墓に入る気にもならない状況です。

いやあ、困ったものですねえ……。