オットが切れた日は、夕食も中断してしまった。
そしてずっと、布団にこもったままである。

翌日は、ワタシが仲間と一緒に家で仕事をする日だった。
困ったなぁ。大丈夫かなぁ。
そう思ったけれど、前から決まっていることなので断れば得意先に迷惑がかかる。ということでハラハラしながら、ワタシたちは1階で仕事をしていた。幸か不幸か、オットは2階の寝室でずっと寝たままだった


仕事中に、友人がメールをくれた。評判の良い精神科を職場で聞き、情報を送ってくれたのだ。だから仕事を終えて、さっそく予約の電話をかけてみる。
なんと、さすが噂のお医者さんらしく、予約は1ヵ月先でないと取れないという

オットにそれを言うと、横になったまま「そんなに待てない。今すぐ行きたい」と頭をかかえる。
ワタシも、さすがに1ヵ月もこのままにしておく訳にはいかないと思ったので、ネットで検索をかけた。
するとラッキーなことに、予約なしていける医院が見つかった。しかも我が家から、自転車なら10分ほどで行ける場所である。


オットに言うと、「明日行くからついてきて」とのこと。


この日は、ちょっと奮発してごちそうに。
オットは、ほぼ丸一日ろくに食べなかったせいもあり、比較的箸が進んだ。


そして翌日。この日の診療は夜だけだったので、受付の始まる午後4時前に医院へ行った。オットの自転車について走るワタシ。なんとか普通に走っていたので、ほっとする。

しかし玄関では、すでに7人ほどの人が待っていた。
受付が開くと順番に申し込むが、オットの番までたいぶ待たねばならないようだった。
推定、4時間待ち


うひゃぁ~
驚くと同時に、心の病にかかる人がいかに多いかを思い知らされた


実は、このところワタシは仕事がたいへん忙しかった。めいっぱいスケジュールが詰まっていたのだ。今日も仕事を中断して付き添ったのだが、オットはそれを知っているから「俺一人で待てるから、また迎えに来て」という。

申し訳ないけれど、そうさせてもらうことにする。

家に戻り、仕事を片付けて食事の支度をする。そして午後8時に医院へ行った。
しかし・・・・・・オットは、まだ待合室にいた


どっしぇぇぇ。

それからさらに30分ほど待ち、診察を終えて出てきたのは9時を回っていた
お疲れさん。
診てもらったという安堵と、待ちくたびれたのとで、オットはぐったりしている。
先生は穏やかな人で話をちゃんと聞いてくれたそうだけど。


それから、近所の薬局で薬をもらうことになったが・・・・。


ワタシは、自転車の鍵を家に忘れていた。
こういうときにかぎって・・・・ワタシのバカバカバカーーーー


とんだ失態に、またもやオットの顔が険しくなる。
薬局までは自転車の後輪を上げて押して行ったが、着いてからオットは
「俺の自転車に乗って、先に帰れ」と言う。
「待ちくたびれて疲れてるんだから、そんなことはできない。いいよ、今日はここに留めて、明日鍵を持って取りに来るから」
と答えるワタシ。しかしオットは、ワタシの自転車をひったくるようにして、自分で後輪を持ち上げ、押して帰ってくれた。

オットの自転車を押しながら、並んで歩くワタシ。
「ごめん、もういいから。明日取りに来るって」
何度も言ったけれど、オットは無言で自転車を押し続ける
途中で何度もため息をつき、舌打ちをしながら。
額には、青筋が何本も浮いている。


ごめーーーーーーーん。本当に、申し訳ない。
気まずい、気まずすぎるっ
自分で掘った穴だけど。


結局、20分ほどかかって家に帰る。
そして食事を済ませ、オットは薬を飲んで寝た。