1月最終の金曜日。

我が家は夫婦別々の仕事を持っているが、共にパソコンに向かう作業のため仕事部屋が同じである。

この日も夕方まで、同じ部屋で仕事をしていた。
オットは、ちょうど2日前から根を詰めた仕事の仕上げをしており、それがうまくいかずいらついていた。そんなところに、どうしてもワタシが一人でできないことがあり、手伝ってもらっていた。
けれども端から見れば、そう負担にも怒っているふうにも見えなかったので、ワタシはいつも通りに相づちを打ったり冗談を言っていた。

しかし、6時前になって突然パソコンを落とし、「風呂に入ってくる」と言うオット。ワタシはまだ仕事をしていたので「今日は早いね」と言うと

「風呂に入ったら悪いのか!」
突然、語気が荒くなった

「別にかまわないよ」
そう言って、仕事を続けるワタシ。

ちょっと機嫌が悪いみたいだけど、もともと気の短い人だし、あまり心配もせずにパソコンに向かっていた。
しばらくしてリビングへ行くと、テーブルにブランデーのビンが置いてあり、それをコップに注いで呑んでいる。

普段から我が家は、毎食晩酌をする。それはビールだったり焼酎だったりワインだったり、いろいろ。けれどもオットは、風呂上がりに缶ビールを先に飲むことはあっても、しっかり呑むのは食事が出来るまで待っていた。

「ご飯、すぐ作るからね」
ワタシがそういうより先に
今日は飯、いらないからな

すでにオットの目は、据わっていた
もう、かなり呑んでいるようである。風呂上がりの空きっ腹に、滅多に呑まないブランデーをがぶがぶ。酔いも早く回るはずである。そしてワタシが口を開くより早く、ブランデーのビンと半分ぐらい入ったグラスを持って2階へ上がっていった。

今日は、何かおかしい。
そう思って後を追いかけると、仕事場に座っている。

「どうしたの?」
「自分に聞いてみろ!!」
そう言いながら、突然泣き出した。

「おれ、もうダメだ」
手で顔を覆ってわんわん泣く、オット
本当におかしい。
結婚生活15年目で、オットが泣くところを見たのは数回。まだ勤めていたときに、気合いを入れた企画が通らなかった悔し泣き。そして親族が亡くなったとき。しかしそれも、さめざめとか、ぐすんとかいう程度で、こんな子供みたいに泣くのは初めてだった。

けれどもワタシは、まだこの時点では何がおかしいのか気付いてなかった
だから、仕事がうまくいかなかったことがしゃくに障ってヤケ酒を呑んでいるのだと思い、とりあえず疲れているのだろうからと、先に寝させた。

この日、オットは素直に寝床へ入り、ほどなくいびきが聞こえてきた。