太極拳の「根」 | 健康・護身のために太極拳を始めよう

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太極拳は、リラックスによるストレス解消、血行改善、膝・腰強化、病気予防などの健康促進効果以外に、小さな力で大きな力に勝つような護身効果もある。ここでは、中国の伝統太極拳の一種である呉式太極拳の誕生、発展およびその式(慢拳・快拳・剣・推手)を紹介する。


原文:其根在脚,発於腿,主宰於腰,形於手指。

 

訳文:その根っこは足にあり、腿から発し、腰で制御し、形が手の指に現れる。

 

上記「その」は太極勁のこと、太極拳の動きの原動力のことを指す。車同様、車輪が勝手に回るのではなく燃料を入れ、エンジンをつけて伝導機構経由で回すのだ。但し、太極拳の勁は既製品の燃料を装填するほど簡単に出来ることではない。自分で燃料を作り、自分で伝導機構を形成し、手動で点火して受け身の体を動かすのだ。

 

《太極拳経》のこの言葉は勁の伝導経路を示唆したもので勁の発生には触れていない。というか、燃料も伝導機構もあり、エンジンをつけるだけで良いという前提に立っているようだ。実際、燃料の生成や伝導機構の形成に太極拳の諸要領が係わり、この言葉通りに簡単に出来ることではない。

 

「起勢」を例にすれば、先ず「鬆・静」の下、「気」が足下に沈むように「虚領頂勁」・「含胸抜背」・「鬆腰垂臀」を徹し、「気」が「脚」に集まれば、「其根在脚」の原理を応用するのだ。「根」は足にあるが、「根」を作るのは「心・意」だ。「心・意」の働きで「気」が伴えば、燃料の出来上がりだ。伝導機構の形成は上記諸要領以外に「中正」がキーポイントになる。「陰陽」は内在の動的要因として決定的な役割を果たす。そのメカニズムは「起勢」の後も続き、太極拳で動く以上、それを繰り返す。

 

「其根在脚」は足指で地面をつかんだり、足に力を入れて地面を踏んだりすることではない。体同様、足にも「気」が巡るように「鬆」が不可欠だ。「根」としての足は地面に堅く固定するのではなく、体を巡る「気」が足を介し地面と一体になって通った結果、足が「根」となるのだ。

 

推手では、「根」がなければ、相手から負荷がかかる度に、均衡が崩れ、転倒する羽目になる。一方、相手の均衡を崩す為に、相手の「根」を引き抜く、いわゆる「抜根」という手法を使うのが一般的だ。太極拳の「根」は武術としてそれだけ重要な意味合いを持つ。