戸田てこの「て、ことだ！」

ねえ、ライブにいこう！
寒くって風の強いところだから
あったかくして来てね

いいけど、
なんのライブ？

ん、いろんな人が出るけど
おもにヤノアキコかなあ

チケットあるの？いくらくらいなの？

んー。電車賃だけ持ってくればいいよ
ちょっと遠いところだから

ふーん



×××


ほんとうに遠いねえ

うん。
でも、すっごいいいライブなんだよ

行ったことあるの？

うん。偶然、見つけたんだ。
そのときね、絶対これは
いっしょに行きたいなって思ったんですよ

そうですか



×××



ここ、海だけど…

そうだよ。海だよ。
はい、これ。

これ、アイポッドじゃん。

そうだよ。
ヤノアキコね。

……。

どう？
ね？
かたっぽがヤノアキコで
かたっぽが海と風のオーケストラだよ
すごい豪華競演ですよ

うん

いいね

すごく…

ピアノと波の音って
こんなに合うんだねえ

うん。
もう、わたしおどっちゃうよ


まって。
君が踊るとなると
僕も引っ張られることになるわけですよ

そうだね
次回はアイポッドは二台必要だね

（それもさみしいけど）

あ、それもさみしいなって今思ったでしょ。

思ってません。
けど、思ってやってもいい。

ふふ。









っていう、
すごいいいデートプランを思いつきました。
昨日、稲村ガ崎で映画撮影してたら。


あー
実行したいなあ。

クリームを顔に塗って

と言った。

もうけんかはイヤだから

目に付いた美容クリームを手にとって。

目をつぶると
笑いをこらえて

あの子は私の鼻の穴に
指をつっこもうとする。

こらー

と目をあけると
笑っている。

ちょっとほっとする。

目をつぶっていると
不器用な手が
わたしの鼻に
わたしの頬に
おでこにもべったりとクリームを塗る。

目をつぶったまま
ありがとう
というと

できたよ。変な顔が。

といって
笑っている。

私は
インディアンの酋長みたいな模様をかかれていて

こらー
ともう一度言うと

彼は両手で頬をつつんで
ぐりぐりと
クリームをのばした。

きれいになるかな

おふとんのなかのきすはすてき
そふぁにならんだきすもすてき
でももっとすきなのは
いちばんさいしょにしてくれたように
ふたりでちゃんと
にほんあしでたって
する　きす

あなたのしんちょうには
ぜったいにとどかない
あたしのおおきさはこのままがいい

ちょっとかがんだあなたのまえがみが
ちょっとあげたあたしのあごが

うれしいから



あしをからませるのも
みしみしおとをたてるほど
だきしめてもらうのも
すてきだけど

たまにはさあ
しょしんにもどってさあ

うでをせなかにまわすのも
ためらってしまうようなさあ

だからそういうんじゃないってば
さそっているわけじゃないってば

きのうのきすもすてき
あしたのきすもたのしみ
でもきょうは
こうこういちねんせいみたいな
さいしょのころのきすをして

ばいばい

の後

いつもさっと行き過ぎる！

とクレームをつけたら

あれは照れ隠しです

と恥ずかしそうに言っていた

照れ隠さない！

照れるなら照れたままでいればいいの！

と言ったら

うん

これからは

こっそりふりかえるよ

てこが見えなくなってから

と言った

それは、意味がないのでは…

かわいいひとだから

すきになってきた。

ねえねえ

あの子が明日結婚するよ

わたしなんだかそわそわしてるよ

かなしいのかさびしいのかうれしいのかたのしみなのか

ただわたし今あなたにきいてほしいよ

あなたがそれをきいてなんていうか

どういうふうにおどろくか

知りたいの

ねえねえすごい色々あったよ

あなたと話さなくなってから

話したいこといっぱいあるよ

あなたならこんなときどういうんだろう

いっぱいそういうことあったよ

こんなわけのわからない気持ちも

いっしょうけんめいきいてくれる

答えをきめつけないでまっていてくれる

あああなたに話したい

あの子じゃだめなの怖くてはなせないの

言いかけてもきっとすぐ否定されてしまう

ねえこんなのおかしいかなあ

ねえねえ

今あなたと話したい