昨日はキャリさんこと石原夏織さんの1st LIVE「Sunny Spot Story」に行ってきた。

 

すでにTwitterなどにもぽろぽろこぼしてはいるものの、やはりちゃんとまとまった文章にして感想を残したいのでこちらでも書いておく。

つまり、そうやって書き直さねば気が済まないほど、僕にとって大きな意味を持つライブだったのだ。

 

そもそも、昨日に至るまでの道のりはどこまでも果てしなく、ともすれば苦笑せざるを得ないものだったとすら言える。

 

僕もキャリさんをデビュー時から知っているわけではないが、それでも2011年ごろ、小倉唯ちゃんとセットでアニメのモブキャラを演じていた時にはすでにその存在に惹かれ始めていた。

30分のアニメでひと言、ふた言しか話さないモブの声が、不思議と僕の心に音を立てた。落ち着いた低音も透き通るような高音も爽やかに響く、印象的な演技をする人だと思った。印象的すぎて、思わずモブには向いてない声だなとか思ったような記憶がある。

 

高校時代はゆいかおりとStylipSをよく聴いた。キャリさんの出演する作品を調べて観ていた。あの頃は意味があるのかないのかわからないまま野球をやっていたためライブやイベントに行く選択肢など最初からなかったが、そんな泥沼みたいな生活だからこそキャリさんの歌声や演技が支えてくれていたのだと、あとになって思う。夏には「Intro Situation」が欠かせないし、「凪のあすから」は今見返しても心を打たれる(ちょうど先日登録したdアニメストアで久しぶりに見た)。

 

正直言って、大学一年生の辺りはオタクへのモチベーションみたいなものが限りなくゼロに近かった。あの頃は弟の影響でμ'sを何となく応援していたが、アレが終わったらオタクとしての自分は終わるのだろうと思っていた。多分、大学生活が楽しかったからだろう。高校の頃の、取ってつけたみたいなテンプレート的人間にうんざりしていた僕からすれば、変人の巣窟みたいな文芸学部はあまりに刺激的だった。大袈裟かもしれないが、世界の広さを垣間見たのだ。

そうやって世界が広がった結果、奇しくも僕はライブというものに行くようになり、そこでまた眠っていた感情に火が点いた。2016年のアニサマ3日目でゆいかおりのパフォーマンスを見て、ふたりのソロに行きたいと思った。同年3月に行われていた「RAINBOW CANARY!!」武道館公演に参加していなかった後悔も重なった。幸い、アニサマの翌週には『Promise You!!』のリリースイベントがあり――そこでツアーの開催が発表された。僥倖では片づけられない運命を感じた。

 

代々木で見た景色は素晴らしかった。このふたりならどこまでも行けると思ったし、その場所が作られていくことが当たり前だと思っていた。

 

その矢先の活動休止。キャリさんは追われるように元の場所を去り、唯ちゃんは一人で活動を続けていく。キャリさんが不気味な沈黙を続ける一方、着々と「小倉唯」の体制が整っていく――でも、肝心の唯ちゃんがその体制の核ではなく歯車として稼働していく感じが怖かった。代々木で見つけた気持ちが輪郭を失って、鉛色に色あせていく。今度こそ、ここで終わるのか。そう思った。

 

でも、それは杞憂だった。一年ほど前に発表された、石原夏織のアーティストデビュー。そして、それに伴うラジオ番組のスタート。なくしかけていた心が、一気に色を取り戻した。ラジオでメチャクチャにぶちかます姿が、アーティストとして放つ曲が、色んな感情になって僕の心を動かしてくれる。8月にはバースデーイベント「Career up Carry」があって、先週は(7年間応援していてようやく初めて)お渡し会で言葉を交わして、僕にとっての石原夏織がどれだけ大切な存在か、やっと気づかされた。いや…気づいていなかったわけではないが、何と言うか、「あぁ、おれってこんなにキャリさん好きだったんだ」みたいな、そんな感じである。あまり上手く言えないので、諦めて次に進む。

 

そして、昨日のライブ。単純に「楽しかった」「盛り上がった」「感動した」といえば安易に聞こえるかもしれないが、それを裏打ちするだけの「あたたかさ」に満ちていた。歓喜や興奮なら色んなライブで味わえるが、この「あたたかさ」だけはどうにもキャリさんでなければ作り出せなかったものだと思う。

幕間の映像だったり、持ち前の独特なトークスキルだったり、ダンスに合わせて緻密に作られた演出だったり――彼女の魅力を惹き出すための仕掛けが、これでもかというほど炸裂する。例えば映像とのマッチングで言うと「Orange Note」「Ray Rule」が圧巻だったし、夜公演では虹を作ってからの「17才」で胸を貫かれて自然と涙した(ぶっちゃけ2018年で一番泣いた)。「石原夏織」にしかできないことを、チームが一丸となってやり遂げたステージだった。

そして、そうしたステージ上で起こる出来事ひとつひとつに、「あたたかさ」を感じた。これはもうキャリさんの持つ人柄が、それに応えようとしてくれるスタッフ、そして彼女を応援する我々ファンの心に染みるように届いたからだとしか言いようがない。「愛される才能」――というと少しいやらしく聞こえるかもしれないが、キャリさんにはそういう力があるのだと思う。

ライブのタイトル「Sunny Spot Story」に相応しい、あたたかな陽が降り注ぐ空間であった。

 

キャリさんは不器用だ。

料理もできないし、ラジオやイベントのクイズ系企画ではとんでもない珍回答を連発するし――あれだけのステージをやってのけるポテンシャルがあるのに、それをするまでにひどく遠回りをしてきた気がする。

でも、その歩みが彼女らしさなのだと思う。もし彼女が器用で、近道を最短で行く人だったら、昨日のステージにあれだけの「あたたかさ」は見られなかった。客席を見渡せばわかる通り、客層の幅が広い。特に若い女子と中年男性の量には驚いた。キャリさんが遠回りをする中で出会ってきたファンなのだろう。どの道をどう歩いたら出会えるんだと笑ってしまうほどに色んなファンがいて、それらが集まってあのステージにたどり着いた。

月並みな言葉だが、今までのどのライブより幸せだったと断言できる。

 

幕間の映像で、来年ツアーをやりたいと言っていた。

言葉通りに叶うかもしれないし、また不器用なルートをたどって随分先のことになるかもしれない。

でも、それが早いか遅いかはあまり問題じゃない。不器用でも、遠回りでも、その先で美しく咲き誇る場所を、僕らは知っている。

2019年も、キャリさんの活動が楽しみだ。