降り続く雨と恋心




「これがランボちゃんとイーピンちゃんのね。」


「わぁ~!」


「ランボさんが全部食べるんだもんね!」


2人はカラフルなゼリーを持って走り回る。




「ランボ、イーピン、走るなって!」


「ツナくんにはコレね。」


私はモンブランを渡しながら言った。






「京子ちゃんとハルちゃんにはイチゴのショートだけど・・・よかった?」


「もちろんだよ!」


「ハル、ショートケーキ大好きです!」


「よかったぁ」






正直、自分のより選ぶのを迷ったのは彼女たちのぶんだった。

2人ともケーキにはうるさいからなぁと心の中で苦笑いする。






「山本くんは?」


「今はリボーンと修行中だと思うよ。後で渡しておこうか?」


「うん。お願いね!獄寺くんは?」


「あーっと・・・」




山本くんのカップケーキを渡しながら聞くと



ツナくんは困ったような顔をした。











―――あとで聞こう。







たぶん、ここでは話せないんだろう。

京子ちゃんたちの前では。











「フゥ太くんたちのもここに置いておくね。

 気に入ってくれるかどうかわかんないけど・・・」


「了解です!」


「ちゃんと渡しておくね。」



ハルちゃんと京子ちゃんの返事を聞いた後、

私はツナくんに目配せをした。


ツナくんは重々しく頷く。





「じゃあ私、行くね。」


「もう戻っちゃうんですか!?」


「もっとおしゃべりしたいのに・・・」


「ごめんね!でも雲雀さんが心配するといけないし・・・」







そう言って私は部屋を出た。

もちろんツナくんもついてくる。











「それで?どうしたの?」


「実はさ・・・獄寺くんの昔の話を聞いちゃって。」


「獄寺くんの?」


「獄寺くん、ビアンキとは違うお母さんの子供らしいんだ。」


「え?ってことは異母兄弟なの?」


「うん。獄寺くんのお父さんが獄寺くんのお母さんに

 一目惚れしたらしくて・・・」



それからツナくんは獄寺くんの過去を話してくれた。





「獄寺くんのお母さんは獄寺くんを産んだ後、

 年に2回くらいしか会えなくて・・・」


「そんな・・・っ!」


「5歳の誕生日の2日後に会う予定だったんだけど、

 事故で亡くなったんだ・・・」


「・・・もしかしてファミリーの人に殺された、とか?」


「よくわかったね!たぶんそうじゃないかって・・・」


「そう・・・だったんだ。」








初めて聞く話に驚く反面、寂しさを感じる。





これだけ一緒にいても知らないことがあるんだな・・・。












「あと、これは別の話なんだけど・・・」


そう言って彼は別の話を切り出した。






「クロームが・・・ここに来てるかもしれない。」


「え!?」



ツナくんの唐突な発言に思わず声をあげる。




「まだわかんないけど・・・

 クロームが来たら会ってくれる?

 たぶん落ち込んでると思うから・・・。」


「・・・うん。わかった。」


「あ、俺もラルとの修行だっ!じゃあまたね!」


「・・・いってらっしゃい。」




足早に去っていく背中を見送りながら私はつぶやいた。












「クロームちゃん・・・」




何度か話したことがあるが、

とっても可愛くていい子だ。





でも雲雀さんはいい顔をしない。




クロームちゃんというより、

骸さんと私が話すことが相当イヤらしい。













「いいかい?南国果実みたいな変態が話してきたら

 すぐ僕のところに来るんだよ。」











珍しく雲雀さんが冗談を言っていると笑ったら睨まれた。





「まさかパイナップルみたいな頭だったとはね・・・」



パイナップルを見て露骨にイヤがる雲雀さんを思い浮かべた。


悪い人ではなさそうだが、なんだか一癖ある人だったような気がする。














「そういえば・・・」



獄寺くんのお父さんは獄寺くんのお母さんに一目惚れしたんだっけ。





私はツナくんから聞いた話を思い出す。





「一目惚れ・・・か。」




私も一目惚れ、だったのだろうか。


雲雀さんと初めて会ったとき、

目がひきつけられたのを覚えてる。





整った顔、さらさらした黒髪、鋭い目、

女の私よりも白いんじゃないかっていうくらいの白い肌。








一目見て、この人のことを知りたいと思った。










それは風紀委員になってからも同じで。








今でもそうだ。







こんなに一緒にいても、まだ足りない。







その上、私にはもっと贅沢な願いができた。











―――この人のそばに、ずっといたい。











「って何考えてるんだ、私。」



我にかえった私は、失礼します、と言ってふすまを開ける。







「雲雀さん、お茶、入れましょうか?」




そう尋ねると彼は、そうだね、と言って私を見る。










私は台所へと向かった。













外ではジトジトしたイヤな雨が降り続いていた―――