最大の武器






クロームちゃんの異変から早3日。



骸さんの幻覚で補っていた内臓を

自分で補うように促したのは雲雀さんだった。






「君に死んでもらっては困る。」











おそらく、困るというのはクロームちゃんが死んでしまったら

骸さんと戦えない、ということだろう。



まだ決着はついていないようだ。






そうわかっているのにもかかわらず、クロームちゃんに嫉妬してしまうのは

ただの私のわがまま・・・なのだろうか。










クロームちゃんの容体悪化、ラル・ミルチさんの不調。





これだけの戦力不足でも、ツナくんは作戦決行を決定した。






京子ちゃんたちのため、クロームちゃんのため、ラル・ミルチさんのため。



ツナくんはみんなのためにメローネ基地に乗り込もうとしている。










作戦決行前日。









最後の会議が雲雀さんの部屋で行われていようとしていた――――

















いつもの倍の数の湯のみをおぼんにのせながら

私は手に全身系を注いでいた。

そして慎重におぼんを置いてふすまを開ける。








「失礼しま・・・」


「貴様ぁ!中坊のときから成長せん男め!」


「落ち着いてください!笹川さん!」





予想していた光景に驚きもせず、私は湯のみを配っていく。






「少しは協力しようと思わんのかぁ!」


「僕の目的は、君たちと群れるところにはない。」


「くっ・・・」




私は離れたところに京子ちゃんのお兄ちゃんの湯のみを置いた。






「いつもこうなのか?」


「もう慣れました。」



呆れたように尋ねてきたラル・ミルチさんにそう答える。









すると別のふすまが開いて小さな影が姿を現れた。








「邪魔するぞ、雲雀。」


「あぁ。」
















「それでどうだったんだ?

 明日の突入作戦のシミュレーション結果ってのは出たのか?

 そのために俺を呼んだんだろう?」


「はい。明日の作戦の成功率をハイパーコンピュータで計算しました。」




リボーンちゃんの問いかけに草壁さんが答える。





「敵施設の規模から人数をわりだし、

 ミルフィオーレ戦闘員の平均戦力を入力、

 その他の要素を掛け合わせた結果、作戦の成功率・・・









わずか、0.0024%。」







「!?」



部屋に緊張が走る。






「0.0024%・・・?」





「これはラル・ミルチの戦力を含めて高く見積もった数値です。

 他の要因による補正も考えられるのですが、

 どれもこれも、こちらの旗色の悪いものばかりです・・・」


「ま、そんなもんだろうな。」






草壁さんの暗い言葉にあっけからんとリボーンちゃんが答える。




草壁さんは続けた。






「ちなみに、ヴァリアーは成功率が90%を超えないと

 ミッションを行わないと聞いています。

 ・・・もっとも、ヴァリアークオリティーを持つ彼らの基準ですがね。」


「一流のプロってのはそういうもんだ。

 確実性を最優先し、無謀な賭けはしない。」


「ふっ・・・奇跡でも起こらない限り成功しない数値か。

 沢田たちには黙っておけ。士気に関わる。」





リボーンちゃんの言葉にラルさんが自嘲するように笑った。






「今更ショックを与えても、他に選択肢はないのだしな。」


「そうですね。」



笹川さんと草壁さんが重々しく頷いた。


















「あ、あのっ・・・」




私がそう言いかけるとすべての視線が私に集まる。




するどい視線に思わず体を硬直させた。












「何だい?亜姫。」




それまで黙っていた雲雀さんに促され、私は口を開いた。









「それって・・・その数字ってあまり意味がないですよね?」





私の言葉にその場にいる全員が怪訝そうにまゆをつりあげた。







「ほらっ、きっとみなさんみたいなプロっていうか・・・

 そういう人たちは完成されているので数字に出せると思うんですけど・・・」








今のツナくんたちをそれに当てはめるのは少し違うような気がする。









「えっと・・・ツナくんたちは数字に出せるほどプロじゃないですし・・・」


「その通りだぞ。」







つっかえつっかえしゃべっていた私にリボーンちゃんが助け舟を出してくれた。








「完成されたプロなら戦闘力や可能性を数値化することに意味があるだろう。

 だが、伸び盛りのあいつらを当てはめるのは馬鹿げてると思うぞ。」





リボーンちゃんはニヤリと笑いながら続けた。






「数値化できないところに、あいつらの強さがあるからな。」