終わらぬ戦い






「ん・・・っ」



突然射した光を避けるように顔を背けた。

そしてゆっくりと目を開ける。








「やぁ、起きたかい?」


大好きな低い声のほうを向くと雲雀さんが座っていた。


「あれ・・・私・・・」


「いきなり泣き出したと思ったら気を失うなんて・・・

 まったく、あいかわらず世話が焼けるね、君は。」











そうだ。


雲雀さんが帰ってきたと思って向かった先にいたのは

”過去”の雲雀さん。

私が、一番よく知っている雲雀さん。


あまりのショックに気を失ったようだった。













「でも雲雀さん・・・どうしてここに?」


「知らないよ。」



雲雀さんはため息をつきながら答えた。







「草食動物たちだけじゃなくて君までいなくなって風紀委員に探させてたんだ。

 それで屋上で少し寝てたらいきなり瓦礫の中にいたんだよ。」


「そうだったんですか・・・」












この時代の雲雀さんと入れ替わったんだ。

まだ彼に何も言えてないのに・・・伝えてないのに・・・

別れの言葉も、お礼の言葉も、それから・・・















「亜姫。」


「え?あ、はい、なんですか?」


「大丈夫だったかい?」


「ッ!」




滅多に他人の心配をしない彼の口からその言葉を聞いたとき、

また涙腺がゆるみそうになって、必死に堪えた。







「大丈夫・・・です・・・」


「そう。でも僕を心配させたんだから、それなりの代償は払ってもらうよ。」


「え!?だ、代償ですか!?なんでしょう・・・?」


「さぁ、なににしようか。」





そう言って雲雀さんは楽しそうにニヤリと笑った。




















・・・うん。聞かなかったことにしよう。













「そういえばツナくんたちは無事なんですか?」


「さっきまで一緒だったよ。向こうのアジトじゃないの。」


「そっか・・・よかった・・・」






とりあえずみんな無事だった。

京子ちゃんたちも喜ぶだろう。











「もう・・・戦わなくてもいいんですよね?過去に帰れるんですよね?」


「どうだろうね。」




私の切実な願いを、雲雀さんはあっさり否定した。













「ミルフィオーレってやつらと『チョイス』で戦うらしい。」


「『チョイス』・・・?」


「まぁ僕は咬み殺せるなら何でもいいけど。」














戦いはまだ終わらない。

あとどれだけ歯がゆい思いをしなければいけないんだろう・・・















「亜姫。」


「はい?」






私の名前を彼に呼ばれるたびに、それだけでドキドキする。

今も、昔も。











「お茶、入れてきてよ。」


「・・・はい!」






私は笑顔で部屋を出たのだった。