今回で4回目の寄稿文となります。
俳優を目指す方にとって「演技力」を重視する側面が多いかと思います。
ですが「演技力」と同じく俳優にとって大事な技術は「コミュニケーション力」です。
これは、舞台でも映像でも変わりません。
特に昭和・平成・令和と時代が進むにつれて
「コミュニケーション力」の重要性が増してきているように感じています。
さて、「コミュニケーション力」と書くと「誰とでも仲良くする」という事を考えてしまうかもしれませんが決してそうではありません。
あらゆる人に不必要に媚を売る必要はありません。
大切な事は、「他者を尊重する」という事です。
「他者を尊重する」事によって「自分も現場の一員」として受け入れて貰う事が必要な事なのです。
さて、舞台芸術は「総合芸術」と言われています。
これは、他の芸術と違い舞台芸術は「自分1人では決して集団創作を実現できない」からです。
皆さんも日々体感されているように、現在のテレビ・インターネットは映画等、映像作品が飽和状態になっているといっても過言でありません。
誰でもYouTubeに映像作品を公開できる時代です。その為、たとえ上質な作品であったとしても、大量の作品の中に埋もれてしまいます。
この「飽和状態」というのは、「混合玉石」という事です。同じ空間の中で「質の良いモノ」も「質の悪いモノ」も同等に扱われているのです。
「神は細部に宿る」という言葉を聞いた事があるかと思います。これは、「仕事や作品の細かいところに妥協せずにこだわってこそ、素晴らしいものが仕上がる」ということを表しています。
「何百万人もの目にも耐えられる作品」を作る為には、”細かいところに妥協せずにこだわる”事が必要なのです。
その為、集団の中でたった1人でも「妥協」している、「熱意」を込めていないセクション(部門)があった場合、その分だけ作品の質が落ちてしまいます。
集団での創作において「お互いを尊重し、高め合い、関係者が一丸となって創作する事」が必要となってくるのです。
「実力不足」「経験不足」そういった方も集団の中には勿論いる事でしょう。
ですが、その人を決して「貶したり」「責めたり」せず、その人の「”現時点”での100%以上」を引き出して貰う事が、肝要な事なのです。
「関係者全員が無我夢中」になる事。
これに勝る「コミュニケーション力」は存在しません。
その事によって「神が細部に宿った」作品を生み出す可能性が高まる為です。
つまり、「コミュニケーション力」とは、自分自身が「他者を尊重する」という事から始まるのです。
演出家:深寅芥