キミのそういう所、ちょっと良いと思うよ
一体全体、何故、私はショーキの初めてのカノジョになっちゃったんだろう
例えばこれが4人目とか5人目とか
社会人３年目くらいで出会っていたら
私はそのままショーキの人生の残りを、全部自分のモノに出来たのに
中学の時の同級生
ショーキはサッカーばっかりしてて、勉強は普通
面白くて、でもモテる、っていうよりは、学年に2、3人くらい、実はアタシ、ショーキの事好きなんだよね、って子がいる感じ
高校に入って、周到に狙った帰り道
3回目くらい一緒になった時に
えっ？じゃぁお祭り一緒に行かない？ってさりげなく誘ったら
えっ？えっ？えっ？あ、うん
て勢いで頷いた
えー、お前ら付き合ってんのー？
お祭りで会うと言うよね、DK
想定の範囲内、いやむしろ、計算通り
いや、えっと、付き合ってないよね？
困った顔のショーキに
ふーん、付き合ってない女の子と2人でお祭りとか行っちゃうんだ、って言ったら
なら付き合っちゃう？って、少し上擦った声で真っ直ぐに言った
何だよそれ、ロマンティックじゃないなー
なんて言ったけど、きっと私の背後に花火が50発くらい打ち上がってたと思う
ぎこちなく手を繋いで
下手くそに触れ合って
何でも言えた
それは嫌だ、こうが良い
ねー、もっとこうして、だからちゃんとアタシの事を考えて
喧嘩もしたけど、それさえも愛おしかった
ショーキは彼女にベタ惚れだもんな、なんて言われて
鼻の下伸ばして、え、別にそんなんじゃねーし、って言ってる顔が大好きだった
一度だけ、ショーキの親友の安井くんに言われた事がある
だけど本当はキミの方がショーキの事好きでしょ？
何も言い返せなかった
安井くんは意地悪になれるくらい勘が鋭いけれど
意地悪ではなかった
ただあまりにも鋭くて、きっとその先に待っている感情が見えてしまっていたのだと思う
何もかもが楽しかった
２人で一口ずつ齧ったりんご飴も
一緒に撮った変顔のプリクラも
親に嘘をついて泊まりがけで行ったディズニーも
何もかも
何もかもが楽しくて
何もかもが宝ものだった
きっとそのままズルズルと付き合う事だって出来た
そうしたら、しかるべき歳になった時に
きっと、あまりセンスの良くない指輪とか買ってくれようとしたのだと思う
私は髪の毛振り乱して
ショーキは頭ペコペコ下げて
2人で必死に2人か3人の子供を育てて
そんな人生も、すごく素敵だと思ってた
いや、本当は心の底から願っていた
だけれども、そんな風にこれから先のショーキを独り占めするには
私はあまりにもショーキの事を好き過ぎた
卒業間近のバレンタインデー
差し出されたチョコレート
えっ？アラン？それともレオ？
あー、えーっと、安井先輩で
そう言った後輩ちゃんの言葉をショーキはそのまま受け取った
だけど私にはわかる
そのチョコレートは本当は、ショーキのためのものだって
あー、二つも頼まれちゃった
ショーキが笑った
大好きな笑顔で、大好きな声で
別れよっか
はっ？
本当に驚いてた
えっ？待って？えっ？どう言う事？えっ？俺、なんかした？
えっ？好きな人とか出来た？俺のこと嫌いになった？
めちゃくちゃ焦ってた
でもショーキは、別れたくない、とは言わなかった
色々言われたけれども、最終的にラインをブロックしたら連絡は来なくなった
当然なのに、私は泣いた
ほんの少し、別れたくない
そう言って、家まで来てくれるんじゃないかなんて
そんな期待をしていた
そうやって私は初恋を手放した
そのまま独占するには
私はあまりにもショーキの事を好き過ぎた
後悔はしてない
だってショーキにはきっとその方が幸せだから
でも、初恋で良かったという思いと、初恋なんかじゃなかったら、と言う思いが
きっとずっとずっと心の中のどこかに引っかかって行くのだと思っていた
卒業した後、偶然会った安井くんに言われた
もしかして、再会して、とか期待してる？
ズキっとした
期待してるわ、そりゃするわ
だけどないのは分かってる
安井くんは少し笑った
キミのそういう所、ちょっと魅力的だと思うよ
ちょっとかよ
思わず笑った
だけど安井くんがモテる理由がわかったよ、そう伝えた
私はショーキじゃない別の人の苗字になる
10年ぶりの笑顔でおめでとう、と言われた
ショーキも幸せそうだね
そう言った私に鼻の下伸ばしたショーキが照れて、まぁ、うん、て頷いたのを見て
初恋で良かったと心から思えた
そしてきっとその瞬間
私の長い長い初恋はようやく報われたんだ
リボーンの制服姿の自担様が可愛くて
妄想するよねー（すな）