間に合うかしら…!?
きょこたんハッピーバースディ&メリークリスマス♪
我が家は旦那の仕事の関係で昨晩のうちにパーティーでした。
…鍋でww
ほほほ、アットホームと言って!←


と言うわけで、きょこ誕記念フリーです。

お持ち帰りの際には一言お声掛けいただけると嬉しいです。
マックが小躍りしながら喜びます♪←



゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆あなたの理想に…゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆




普通の恋人たちなら、もうとっくにデザートまで食べ終えて、街を彩るイルミネーションでも見に行っているのかしら………

本日自分をデートに誘った相手が『普通』でない事を十二分に理解しているキョーコは、ホテルの中庭に飾られたツリーの下でぽつりと一人待っていた。


今日はクリスマスイブ。
時刻は既に22時。

待ち合わせの時刻でもあるはずなのだが、目の前に誘った張本人は現れない。

二つガラスを挟んだロビーで幸せそうに寄り添いながら歩くカップル達を、キョーコはただぼんやりと眺めていた。



今年のグレイトフルパーティーは、マリアの方が皇貴に会いにアメリカへ行った為に行われない予定だった。
それを知った蓮が先週ラブミー部へと突如現れ、デートの約束を(キョーコにしてみれば)無理矢理取り付けていったのだ。

今夜キョーコの体を包むのは、蓮の見立てたオフホワイトのドレス。
ふわふわとした可愛らしいシルエットと触り心地はさすがアルマンディの一級品。
キョーコの心を一瞬で拐った。

その上から、同じくアルマンディの赤いコートを羽織っているのは、テンへ預けていた蓮の勝ちだ。
『ドレスだけじゃ寒いでしょ?これをちゃんと着るんだよ?』とメッセージカードまで付いていて、ううむと唸りながら袖を通した。


キョーコのメイクも、蓮からのプレゼントだ。

『欲しいだろうなと思って。』
『似合うだろうなと思って。』

そう言っていた通り、コフレもドレスも、キョーコの良さを最大限に引き立たせる。

本日着付け&メイクを施してくれたテンも、蓮のセンスとキョーコの出来栄えを絶賛してくれた。


だけど―――

肝心のデートのお相手、蓮は仕事が押して遅刻気味だ。


(だってお仕事は仕方ないのよ。社さんが謝ることじゃないのに……)


1時間ほど前に、彼のマネージャーから電話があった。

『CM撮影長引いちゃってて…!蓮をそっちにやるのが遅れるかも、ごめんキョーコちゃんっ!!』

今日は確か、有名な某アイドルグループの子と一緒に、ミュージックプレイヤーのCMって言ってなかったかしら……


演技力は定評があるけるど蓮を狙っているとも有名な女の子に、『まさかわざと…じゃないわよね?』と邪推しては、首を振る。

テンに綺麗にセットしてもらった髪の毛が、ぱさりぱさりと空気を揺らすとキョーコの心はその度に少しずつ落ちていった。

(そもそも、どうして敦賀さんは私なのかしら?敦賀さんなら女の子なんて選びたい放題のはずなのに……)


蓮がキョーコに告白したのは1カ月前。
いつも通りに蓮の部屋へ夕食を作りに行って……
帰りの車の中で、突然『好きだ』と告げられた。

その時は突然の事に頭が働かず、『……ほへぇ?』などと思いっきり間の抜けた返事をしてしまったものだ。
堪らず噴き出してしまった蓮を『またからかったんですね!?』と怒ったのだが……

「からかったんじゃないよ?本当に最上さんの事が好きなんだ。」

そう言って優しく微笑んだ蓮は、それ以来時間を作ってはキョーコを口説きに訪れていた。


(あんな目で見つめられたら…誰だって『はい、好きです』って答えちゃうに決まってるじゃない!だって天下の敦賀蓮よ!?……私はそんな愚かな子にはならないんだからっ!)


………だけど、キョーコ自身も気付いている。
心の奥底にたくさんの鍵をつけて沈めていた『恋心』が、実はとっくの昔に蓮によってこじ開けられていたことを。

自分が蓮に恋していることを、本当はわかっているのだ。


だからこそ、人気も実力も素晴らしい『敦賀蓮』の彼女にはなれないと、キョーコは思っていた。

蓮の周りには、常に美人な女優や可愛いアイドルがたくさんいる。
自分も同じ業界にいるはずなのに、蓮と自分の周りの華やかさの違いに驚くことばかりだ。

(でも…私なんかじゃ敦賀さんに釣り合わないんだもの。『好き』なんて、言えるわけないじゃない……)


『好きだ』と言う蓮の言葉に流されて付き合ったところで、華も何もない自分はあっという間に飽きられて捨てられてしまうのではないか……

その不安が、キョーコの恋心を臆病にさせてしまう。


「敦賀さんの理想の彼女って、どんな人なのかしら……」

彼の周囲の女性達はどんな人でも自分に自信を持ち、輝いている。
そんな人達と比べられたくない、でもあんな風になりたいし……などとうにゃうにゃ考えていると、突然目の前が暗くなった。


「俺の理想?最上さんだけど、それがどうかした?」
「………敦賀さん。」

ふと顔を上げると、蓮がすぐ目の前に立っていた。
背の高い蓮がキョーコに届いていたロビーの光を遮った為に、ツリーと中庭のイルミネーションによる淡い明かりのみしかない。

その中で見る蓮の姿は、いつも以上に美しい男に見えた。


「ごめんね、10分も遅刻した。」
「お仕事は仕方ありません。」
「でも誘ったのは俺だよ?最上さんは俺を思いっきり怒る権利がある。」
「先輩にそんな畏れ多いこと出来ません。」
「いつも食事の事で怒るくせに」
「あっ、あれはだって!敦賀さんが食をおろそかにしているのがいけないんです…っ!!」

キョーコがいつもの調子でぷりぷりと口を尖らせるのを見て、蓮はほっとした様子でキョーコの頬をそっと撫でた。


「待たせ過ぎて不安にさせてしまってたかな?俺の理想とか考えてたって事は…」
「別に、そんなことないです。」
「ううん、最上さんがそう言って目を逸らす時は嘘吐いてる時。本当に待たせてごめんね?」
「……いいんです。勝手に私が凹んでるだけですから。」

両頬を蓮に包まれ目線の事まで言われてしまうと、キョーコにはもうどうにも逃げ道がなく、そっと目を伏せるしかなかった。
そんなキョーコの目蓋に、蓮はそっと口づける。


「俺の理想の彼女だけど…『最上キョーコ』さん、君ですよ?」
「…リップサービスはもう結構です。」
「俺は本気だよ?ずっとずっと君が欲しくて見てきたんだ。
強くて優しくて料理上手。可愛い物やキラキラした物が大好きで、メルヘン思考で妖精さんとよくトリップしちゃって。負けず嫌いで泣き虫で、でも泣いた顔もなかなか可愛くて……」
「きゃあぁ~っ!もう恥ずかしいので止めてください~~っっっ!!!」


若干『それは褒められてるのかしら?』と疑いたくなる言葉もあったが、これ以上続けさせてもこっぱずかしい思いしかしないとわかっているキョーコは、慌てて蓮の口を塞ぐ。

蓮は口元に来たキョーコの掌にちゅうっと強く吸い付いた。

「っ!本当にやめてください、こんなこと…勘違いしちゃいます。私なんかでも敦賀さんの彼女になれるんじゃないかって……」
「最上さんは間違いなく俺にとって『最高の理想の彼女』だよ?そこをちゃんと理解してもらわないと、俺が困るな。」

口を押さえていた手を取られ、手首へと唇を這わせられると、今まで感じた事のない甘くて熱い痺れがキョーコの体を駆け抜けた。

「んっ!ダメです!こういうことはちゃんとした『恋人同士』がすることですって!」
「だよね?でも俺は君を好きで、最上さんも俺が好き。なら立派な『恋人』じゃない?」

手首から唇を離して耳元でそう尋ねられると、思わず「ううう…」と唸ってしまう。



それは最高に甘い誘惑。

再び恋愛にうつつを抜かすバカ女になる為の―――



「……敦賀さんを呆れさせると思います。」
「呆れるほど愛してくれるの?」
「敦賀さんが思うような子じゃないかもしれないんですよ?」
「最上さんの新たな一面を見せてくれたら、益々好きになりそうだよね。」
「敦賀蓮の理想の彼女にはきっとなれません。」
「世間の思う『敦賀蓮』なんてどうでもいい。『俺』の理想は最上さん一人だから。」

そっと優しく優しく抱き締められると、胸がきゅうと苦しくなる。
ショータローの時にはなかったこの甘い苦しみは、蓮も今感じているのだろうか……


苦しくて切なくて、でも何故だか無性に嬉しくて。

キョーコも蓮の背中へおずおずと手を回した。


「お願いだ、俺の『恋人』になって?ただ一度、頷いてくれるだけでいい。全力で君を愛すよ……」


徐々に強くなる抱擁に、キョーコの胸は熱くなる。


もう一度だけ、信じてみようかな。
敦賀さんに傷付けられるなら、それもまた本望かも………


小さくこくりと頷いてから顔を上げると、すぐそばには優しい目をした蓮の顔があった。

ほんわりと明るいイルミネーションをバックにした蓮の神々スマイルは、本当に奇跡のように美しく思えて……
思わずぽーっと見惚れていると、そっと唇に触れるだけのキスをされた。


「これからどうぞよろしくね?俺の恋人さん。」




************


永遠プレッシャーのポンコツが案外可愛くてツボです(´ψψ`)