(再び千本鳥居へ)
熊鷹社からの階段を下り寂しい参拝道を進むとやがて便宜上名付けた「第一三つ辻」に達する。 その地点を左に折れると稲荷山徘徊の出発地点であった千本鳥居へと至る。 ものの数メートルも進めば懐かしい奥社奉拝所の薄明かりが見えるはずだ。 熊鷹社から奥社奉拝所までの参拝道も非常に魔物に遭遇しやすい難所だが有形無形のあらゆる脅迫や障害を振り払い前進しよう。 折角今まで無事故稲荷山徘徊を達成してきたのに、ここで命を落としては満行とならないからだ。
(2016年6月11日撮影/熊鷹社から奥社奉拝所へ)
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思えば私も初めて夜中の稲荷山徘徊を決意するまで約2ヶ月間逡巡した。 そうして徘徊を決意してからは肉食妻帯を諦めたつもりで精進し、心の中で五穀を絶って身を清めたつもりになり、神仏の加護を念じつつ景気付けのため好きなBABYMETALを聴きながら現地に向かったものだ。 稲荷山徘徊中は己の足音や腰にぶら下げた携帯虫除け機のモーター音にもビビり、鳥居の陰からニャーと現われた猫の姿にも腰を抜かしたこともあった。 以来、夜中に稲荷山徘徊をすること数え知れず、徘徊の度に自身の成長を自覚するのである。
(2016年6月11日撮影/奥社奉拝所への参拝道)
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さぁ、千本鳥居に無事に帰還した。 夜中の稲荷山徘徊者の特典がある。 この名所である千本鳥居を独り占めできることだ。 昼間に来てみれば分かるが、ここは大都会の駅の朝のラッシュアワー並の状態だ。 記念撮影するにも万博のアメリカ館やソ連館並の順番待ちとなることも珍しくない。 しかしながら、夜中ならあなたの占有物となる。 千本鳥居の中で寝てもいいし、ゴザを敷いて弁当を食べてもいい。 しばしの優越感に浸るがよいだろう。 そうして朝の始発が出る5時過ぎになったなら大人しく帰宅するがいい。 或いは引き続き朝の稲荷山徘徊と洒落込むのも一興だろう。 そして、いつか人間界に帰還したならば、その夜に起こったことは誰にも話してはならない。 これが稲荷山の掟だからである・・・。  夜中の伏見稲荷大社の巻終わり。
2016年6月11日撮影/千本鳥居)
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