2017年1月11日、同年2月1日、そして雛祭りの日にあたる同年3月3日の三回、私は和歌山市加太の淡島神社を訪問した。 日本各地に同名の神社があることから加太淡島神社とも呼ばれ雛祭り発祥の場所らしい。 何よりもここを有名にしたのは昔からの「髪の毛が伸びる人形伝説」と大阪市内の或る外資系アミューズメントパークが淡島神社から借り受けた市松人形を同園のアトラクションのおばけ屋敷に陳列し市松人形の業界から抗議を受けてお茶の間を賑わしたことであろう。 そのような訳で私はこの神社にいたく興味を覚え今回の撮影の題材に選んだのだ。
(淡島神社本殿)
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淡島神社は南海電鉄加太駅から徒歩約30分の風光明媚な紀伊水道を臨む海岸近くの静かな港町に鎮座する。 中規模の神社ではあるが本殿に到着すると左右の本殿回廊に圧倒的な存在感で人形が出迎えてくれる。 特に向かって右側の市松人形が圧巻だ。 感じ方によっては数十体の人形から一斉に視線を浴びているような恐怖を覚える。 伏見稲荷山の千本鳥居に続く山中の鳥居群も圧巻だったが、淡島神社の夥しい数の人形もまた或る意味感動を禁じ得ない。
(淡島神社本殿右回廊の市松人形)
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尚、市松人形が陳列される右回廊の下段には花嫁人形が陳列され、左回廊には日本人形、そして境内の至る処に招き猫や侍人形等、凡そ人形と名のつくものが所狭しと整然と陳列されている。 もちろんお稲荷さんも祀られているし、子宝に霊験ある神社ということで女陰や男根の張り型までもが陳列されている。 又、婦人病にも霊験あらたかということで女性参拝者が病気平癒を祈って、また病気快癒の報恩感謝でその下着等を供養されている。 その下着等供養の境内のエリアは17時以降立ち入り禁止となっている。 恐らくはそれらを失敬しようという不届き者浸入防止の為だろう。
(本殿に陳列された雛人形/雛祭り)
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さて、3月3日(12:00)は大祭の日である。 いつもは鄙(ひな)びた田舎の港町もこの日は大賑わいである。 外国人観光客の姿もちらほら散見され、マスコミも各社取材に来ている。 この日淡島神社では奉納された雛人形に神事を行ってから、用意された小舟三艘に巫女により雛人形が乗せられ、それを女性参拝者の手によって近くの桟橋に運び、海に流す雛流しの儀式が挙行される。 海に流された雛人形はやがて回収されて近くの浜辺でお焚きあげの儀式(雛人形の焼却処分)に付されて一連の儀式が終了する。 つい数分前まで美しい姿で本殿に飾られていた雛人形が今は紅蓮の炎の中で悲しく苦しげに朽ち果てていくその姿にその場に居合わせた多くの善男善女が涙するのだ。
(お焚きあげされた小舟の雛人形)
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これを以って私の淡島神社撮影取材は完了した。 もう暫くは此処を訪れることはないだろう。 私は神道信者ではない。 神社はあくまで被写体であり、自分が追求する幽玄の美の対象でしかないのだ。 それにしてもここの神社の巫女さんは美人揃いだ。 宮司さんが顔で選んどるやないのかとさえ思う。 案外、来月もそれ目当てに来たてりして(笑) 。 しかし、大阪から淡島神社までは2時間半かかるのでそれはないか。 いずれにせよ一見の価値ある場所だった。
おわり。