平成30年(2018年)6月1日午後11時、今年度2回目の夜中の伏見稲荷大社撮影に臨んだ。 例によって伏見稲荷大社に到着するや同神社警備員詰所に夜間勤務の警備員に挨拶に赴く。 そうして最近の猪の出没状況や被害者状況等を聞くのだ。 警備員によると猪の出没目撃情報は数多く寄せられているが、未だ人的被害は幸運にも勃発していないとのことだった。 しかしながら、人が猪に襲われるのはもはや時間の問題との認識らしく、夜間に警備に就く警備員としては緊張を強いられる日々とのことであった。
当夜の警備員は親切にも猪の出没が数多く目撃されている危険箇所を事細かに案内してくれた。 中に100キロを優に超える大猪もいるらしく、特にウリ坊(子どもの猪)を連れている猪は気が立っているので特に注意されたいとのことだった。 また、猪はその巨体にもかかわらず数メートルめジャンプができ細心の警戒が必要であるとのことだった。
私は警備員に問うた。
私:「そんな危険な動物が出没するのに、やはりここは宗教施設で殺生はできないので猟銃会等に駆除を依頼しないんですか?」
警備員:「いや、ここは京都府の鳥獣保護指定区域なのでむやみに鳥や獣を捕獲したり駆除できんのですわ。」
私:「なるほどねぇ・・・。」
警備員:「せやけど誰か犠牲者がでたら有名な観光地でもあるので京都府当局や伏見稲荷大社も重い腰を上げますやろ。」
私:「それはそうですやろなぁ。」
警備員:「せやからあんたが被害者第1号になりなはれ!」
私:「うっくっ! こ、この私が!?」
警備員:「そうだす。そうして京都府が猪を駆除してくれたら我々警備員も安心して仕事ができます。」
私:「で、私は?」
警備員:「あんたは第1被害者で有名になりテレビや新聞雑誌にも出れまんがな。」
私:「それはそうだすなぁ!」
警備員:「我々警備員仲間でも第1被害者は夜中によく来るあんたやろうて噂してましたんや。」
私:「はははは! いい加減にせい!」
しかしながら、警備員の話も全く冗談とは思えない。 確かに確立から言っても私が一番危ないわなぁ。 警備員との長話に花が咲き稲荷山頂上に着いた頃には東の空が明るくなってきた。 私は日が出てきたので必死になって寝床の地下の棺桶へと急ぐドラキュラの如くに早足で夜中の伏見稲荷大社及び稲荷山を撮影して回った。
(終わり)