アメリカの製薬会社の営業マン・マイケルが、
ひょんなことから「とらや」の一員になる。
マイケルが町のく薬屋を訪ね歩き、
薬を置いてほしいとトークするシーンに、
おお、正に昔の営業だな、
と、かつて経験した営業のイメージに重なった。
要領を得ないトークを、
話しても仕方のない人に一生懸命に訴える姿は、
いかにも滑稽で、
今の人たちは絶対にやらないんだろうなと、思うけれど、
いやいやそんなことはない。
きっと今だって、
形を変えて同じようなことをしているんだろうと、思う。
どんなに話したって、
決して本音なんて言ってくれないSariに、
何か言わせようと、
一生懸命な様子とか。
男はつらいよには、
海外ロケの回もあるくらいなので、
決して外人が出てくるのが異色というわけではないのだが、
ほぼ準主役級の扱いだったのは、
このマイケルだけだろう。
多分、真面目、
というところは少し寅さんと違うかも知れないが、
不器用なところや、
惚れっぽいところはアメリカ版寅さんと言って良いのだろう。
さくらを好きになるところなんて、
極め付けの正に寅さん。
もしも兄妹でなければ寅さんは、
一も二もなくさくらに惚れていたに違いない。
それも過去最高レベルの重たい恋病に掛かっただろう。
マイケルのように「I love You」とは言えなかったかも知れないが、
つきまとい度数は、
マイケルの比ではないはずだ。
相手がマイケルということで、
さくらがよろめくことはなかったが、
さくらの揺れる女心のような展開が、
一度や二度あっても良かったのかなと、
思うが、
倍賞千恵子の可愛らしさを見せるシーンは、
ふんだんにあっても、
女を意識させるシーンは殆どなかった。
あるとすれば寅さんの夢の中だけ。
これも寅さんが、
さくらを(女として)好きという現れなんだろうと思う。
それはこの時代の日本映画、
特に国民的映画の中では難しかったのだろう。
多分、今ならやっているだろう。
そうしないと共感が得られない時代になってしまったから。
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