す
武田鉄也がつまり、
同様の女にもてないダメ男、
という設定。
幸せの黄色いハンカチでは自分の分身に見えた武田鉄也だが、
同じ設定にも関わらず、
ここではそう思えなかったのは何故だろうかと考えて、
まあ、元々、
この作品においては寅さんが自分の分身なのだから、
仕方あるまい。
二人に同時に感情移入というのは、なかなか難しい。
この作品では「SKD」=松竹歌劇団のレビューに、
かなりの時間を割いている。
映画は1978年8月の公開なので、
1982年に国際劇場が閉鎖される直前の姿を、
映像に残しているという意味で、
貴重な作品なのではないだろうか。
舞台はきらびやかで、
派手な演出も目を引くが、
一番驚くのは踊り子たちの露出度である。
どちらかと言うと、
ファッションに走っている今のアイドルでは、
太刀打ち不能だろう。
そもそも会いに行けるアイドルの原点は、
AKBではなく、SKDだった、
というのもかなりの衝撃だ。
国際劇場という大劇場が出来て、
その生い立ちの色は薄れてしまったそうだが、
「スターとファンとの間の交歓」
という言葉は、
詳しくは知らないが、
きっと秋元康のAKB創造の礎になっているのだろう。
ヒロインの木の実ナナ(奈々子)が、
結婚を諦めて踊りに生きると決めた夜、
寅さんに、帰らないでと、迫るシーンがある。
本作にふさわしい、
派手な容姿とにぎやかなキャラクターの奈々子は、
寅さんが歴代で最もウマがあった、
スナック歌手のリリーと似ている。
寅さんがどのくらい気持ちで朝まで付き合う、
と言ったのかは分からないが、
そう決めた直後の暗転劇は、
ああ、このシーンは、
見たくなかったなあと思った。
どうしてこんな夜に、
雨なんて降るんだろう。
そんな夜、あったなあ、と。