久しぶりに浅草に出たのだが、あまりにも人の気配がなくてとてもさみしい思いをした。

神谷バーのシャッターも閉まったまま、雷門のぞくと浅草寺まで、数えるほどしか人がいない。

ホッピー通りもがらんとしていた。もんじゃ焼きのお店が、酒を出さずに営業していたが、客はまばら。声も聞こえない。

観劇の前に腹ごしらえをしようとしていたら、雨が降り出した。雨音だけがササササと通りを駆け抜けていく。

こんな町に誰がしたのか。本当にあの賑わいは戻って来るのだろうか。

もしかしたら、相当に時間が掛かるのかも知れないと怖くなった。僕には多分そんなに時間はないのに。

 

調べたら九劇に前回来たのはもう2年半も前になる。1年半のつもりだったので、ちょっと驚いた。

時間の流れにムラがあるように思う。なかなか流れない時間がある一方で、滅法速く過ぎてしまう時間がある。

 

自分に自信を持てない主人公が、見栄えのする友人に身代りを頼んだところから物語は動き出す。役目をしっかり果たす友だちに、それが元々の計画通りだったというのに、何故か嫉妬してしまう主人公。静かな田舎町の、とても緩やかに時間の流れるお屋敷の出来事は、大きな事件も緊迫する場面もなく、とても穏やかである。舞台転換もなく、ともすると退屈になりがちなところを、役者さんたちの技量で温かく優しい舞台として見せてくれたと思う。

 

以前とは比べものにならないくらい、少ない客席。一番前列だった為にフェイスシールドを付けたが、観劇にこれはとても邪魔だった。役者に近い一列目は本来特等席だと思うのだが、今のご時世では、フェイスシールド不要の二列目以降の方がいいと思う。

 

ほぼ準主役的な役どころだった姪の演技も、今までの良きにつけ悪しきにつけ、要はちょっとおまぬけな「可愛い子役」から、一歩抜けたところを見せてくれたように思った。舞台をはじめてから5、6年だと思うけれど、正にこれから、ここからなんだろうな。少なくとも、舞台が開いて、客を入れて公演が出来る機会がこれからも続くことを祈らずにいられない。

 

夢の続きは、また今度。

私も自分の夢の続きを、お互いに諦めないで頑張ろう。