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物語は今日から第四話へと入っていきます。
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『しあわせ探偵の事件簿』
第四話:「めがね」①

「こんにちは!マキちゃん、いますか?」

「え〜、なんで俺じゃないの〜!」

珍しく店のフロアーで接客をしていた内ヶ崎が沙由里の来店に気づき、冗談ぽくこう言った。

沙由里は心の中で「なんで今日に限って、ウッチーが表にいるのよ〜!」と思いながらも、「ちょっと、美開運メイクのことを聞きたくて」と返答する。

それに対して内ヶ崎は「美開運メイクなら、俺もできるよ」と返してきたので「あっ、それと小泉さんのことも聞きたかったから・・・」と言うと、「小泉さんね、ここに来た翌日に報告の電話をくれたんだけど、娘さんは何事もなかったように自分で『学校に行く』と言って出て行って、学校から帰ってきたら楽しそうに友達のこととか、学校での出来事を話してくれたんだって。
ちなみにマキちゃんは、今日は出張捜査でいないんだ。どうする?」とのこと。

「そっか。じゃあ、また出直してくる」

「あ、沙由里ちゃん、それなら今から少し時間ある?」

「うん、あるけど」

「じゃあ、俺とお茶しない?と言ってもここでだけど(笑)。ちょうど、休憩なんだ」

「いいよ」

「よかった。先に奥の部屋に行って、待ってて。沙由里ちゃん、ホットでいいよね」

そう言って内ヶ崎は奥へと消えた。
先日、マキから内ヶ崎のことを聞いて以来、なぜか内ヶ崎のことが気になって仕方がない。今もなぜかドキドキしてる。

「なんか、変な展開になっちゃったなぁ・・・」

そう思いながら、なぜかうれしい。

「本当はマキちゃんにウッチーのこと、いろいろ聞こうと思ってたのになぁ。まあいいか。この際、本人に直接、いろいろと聞いちゃおう!」

そう気持ちを切り替えて、待つことにした。
しばらくして、内ヶ崎がお盆にケーキとコーヒーを乗せて部屋に入ってきた。

「ねぇ、ウッチー。さっきの話の続きなんだけど、小泉さんが自分の幸せを邪魔する犯人を捕まえられたのは私も目の前にいたからわかるんだけど、小泉さんの娘さんも学校に行けるようになったということは、娘さんも犯人逮捕できたのかな?それとも、同一犯ってこと?」

「そうだね。娘さんの場合は同一犯というよりも、自分で仕掛けた“時限爆弾”かな」

「時限爆弾!?」

「そう、時限爆弾。娘さんの場合は、自分が仕掛けた時限爆弾の一つが爆発して不登校になったんだよ。

詳しく説明すると、娘さんは生まれてくるときに、自分に時限爆弾を仕掛けてきた。その爆弾は、ある時期までに母親が変わらなかった場合、爆発するようにセットされていたんだ。
そして、そのうちの一つが爆発した。でも、母親がそこで変わることができたので、残りの爆弾は処理された。だから学校に行けるようになったんだよね。

実は、こういうケースはすごく多いんだよ。
子供はみんな親を、特に母親を幸せにしたくて生まれてくるの。
そのとき、神様と相談して様々な仕掛けを考えてくるんだけど、その中の一つが時限爆弾なんだ。
爆弾が爆発した結果、それが不登校という形で表れる子もいれば、病気や非行という形で表われる子もいる。そうしたことも含めて、生まれてくる前に決めてくるんだ。
最近では、そうした生まれてくる前の記憶を覚えている子も多いんだよ」

「でもそれなら、爆弾を仕掛けるよりもダイレクトに、親にそのことを伝えた方がいいと思うんだけど、どうなのかな?」

「そうだね。ほとんどの子は生まれてくるときにその時の記憶を神様に預けてくるんだけど、中にはその記憶が甦ってきて、親や周りにそのことを話す子もいる。
それは、生まれてくる前にそういう風に決めて来たのか、周りの人にそれが必要だと神様が判断したんだろうね。
だけど、多くの場合は親の修行というか、親自身の魂の成長にならないから、知っていても言わない。または、言いたくてもうまく言えないんだよ」

「私の周りでも不登校の子の話をよく聞くんだけど、みんな爆弾のせいなのかな?」

「みんながみんな、同じとは限らない。
でもそうした、魂的に成長した子がたくさん生まれて来ているのも確かなことだと思うんだ。
基本的には後から生まれてくる魂の方が、その分だけ学びの時間が長いから成長してて、魂的には上なんだよ。
だから、その魂を“しつけ”や“教育”の名の下に『立派にしよう』なんて、本来はおこがましいことなんだよね。

確かに、子供には知識はないし、知らないから失敗もする。
でも、それも含めて子供たちは“経験”したいんだよ。経験をするために“この世”に生まれて来たんだから。

“あの世”の世界というのは物質的な制限がないから、知りたければなんでも知ることができる。
でも、“知るだけ”では魂は成長しないんだ。経験や体験の中にこそ真の学びがある。そのために俺たちの魂は何度も生まれ変わってくるんだよね。

その経験を、多くの親は止めようとする。『子供に失敗させないことが親の愛だ』と思ってるからなんだろうけど、本当の愛とは『子供に経験させて、失敗したときに否定するんじゃなく、そこから学びを得て前に進めるように、自信を持たせること』だと思うんだよね。

そういうことをわからずに、『しつけだ』とか『この子の将来のため』とか言って、子供のことをいじり壊す親がいる。
自分も親から同じように『しつけだ』とか『あなたのためよ』とか言われて育ったから、自分の子供にも同じことをしてしまうんだろうね。

でも考えて欲しいのは、『それであなたは幸せになりましたか?』っていうことなの。『本当はイヤだったんじゃないですか?』『今もそのせいで自分を責めたり、本当の気持ちを自分で押さえ込んでいませんか?』と自分に問うてみて欲しい。

今の子供たちは、自分の魂の成長のためもあるけど、それ以上に、親にそのことを気づいて欲しい、そして幸せになって欲しいと願って生まれて来るの。
しかも、そのことに気づいてもらうために自分に時限爆弾を仕掛けたりとかして、決死の覚悟で来てるんだよ。

今、こういう子たちが増えているのは、彼らは『ある絶対数が変わればこの世の中全体が変わる』ことを知っているからなんだよね」

「じゃあ、親は子供を育てるときに“しつけ”も“教育”も必要ないってこと?」

「生きていく上で必要な社会のルールとか、子供に危険が及ぶようなことは教えた方がいいとは思うけど、そうしたことも含めてその子の自主性に任せるのが一番いいと思うんだ。
偶然は一つもない。
その子は、必要なものはすべて持っている。
持っていないものは必要ないもの。
だから、そのままで大丈夫。
『あなたが思うままでいいよ』と育てるのが一番いいと、俺は思うな。

つづく・・・