感謝しておりますラブラブ

先日もお知らせ致しましたが、
ご好評いただいている
【斎藤一人 名代 舛岡はなゑ✨一人道✨講演会】
は今年いっぱいで一旦お休みさせていただきます😌

次回の開催は東京の田園調布です😄
年内の詳しい日程や場所についてはこちらにどうぞ音譜

それでは今日も、物語の続きをどうぞウインク
第四話を最初から読みたい方はこちらから
第一話はこちらにどうぞ


『しあわせ探偵の事件簿』
第四話:「めがね」④

「うん、よくわかった。でも、『しあわせ探偵』って心理学の勉強なんかもするの?」

「いや。心理学は大学のときに専攻してたんだ。でも、途中でいやになっちゃった」

「どうして?」

「なんか、心理学って突き詰めていくと“間違い探し”をしてるみたいで・・・。
『正常な人はこう反応するけど、異常な人はこういう反応をする』みたいなことをやってると、『自分自身は本当に正常なんだろうか?もしかしたら異常なんじゃないだろうか』って考えちゃって。
それと、自分自身が間違えることにすごく怖くなっちゃったんだよね」

「なんかそれ、すごくわかる気がする」

「うん。でも、『しあわせ探偵』の基本的な考え方は『そのままで大丈夫』であり、『困ったことは起こらない』なんだよ。
もちろん、依頼者は困ったことがあって来るんだけど、俺たちはそれを“困ったこと”と捉えるんじゃなく、その人の“学び”として捉えるの。

困ったり苦しんだりしてるのは、その人がいつまでたっても学ぼうとしないから苦しんだり、解決しないんだよね。
だから俺たちはその人の学びを邪魔している“犯人”を、依頼者と一緒に探し出して逮捕する。相手の間違いを探して指摘したり、裁いたりするんじゃないんだ」

内ヶ崎の話を聞きながら、沙由里は「自分も人や出来事を色メガネで見てたんだなぁ」と思った。

内ヶ崎に対してもそうである。
最初は金髪や派手な服装を見て「チャラそうな人。イケメンだけど、自分の好みじゃない」と思ったが、それも色メガネで見ていたからなんだと気づく。
実際の内ヶ崎を知れば知るほど、そのまっすぐな優しさや、何事に対しても一生懸命に対処する実直さに惹かれていく。

「私はこの人が好きなんだ」

色メガネを外し、素直な心で内ヶ崎を見たとき、沙由里は改めて、自分の気持ちに気づかされた。
そして、そう思って見ると「いい顔してるなぁ」とか、「たまに場の空気を読まないジョークを言うのも、かわいくていいなぁ」と思うから不思議だ。

「“恋は盲目”って言うけど、これも色メガネの一種なのかな。
でも、相手のいいところばかり見えるメガネだから、きっといいメガネだよね」

沙由里がそう思いながら一人ほくそ笑んでいると、テーブルに置いてある内ヶ崎のスマートフォンが鳴った。
電話の着信だ。沙由里は、画面を見るつもりはなかった。
でも、目に入ってしまった。いや、本当は気になったのかもしれない。画面には「麻美」と表示されている。明らかに女の名前だ。

「あ、ごめん。ちょっと電話にでるね」

そう言って内ヶ崎は、部屋の隅に行った。

「おお、麻美・・・うん・・・デート?・・・どこ行きたい?・・・うん、わかった・・・俺はそれでいいよ・・・好きだよ・・・じゃあね・・・」

会話も聞くつもりはなかった。
でも、いくら部屋の奥に行って背を向けて話しても、狭い部屋だから、どうしても声は聞こえてしまう。
ましてや、好きな人が誰とどんな会話をするのか、気にならない方がおかしい。

電話を終えた内ヶ崎がスマートフォンに表示されている時間を見てこう言った。

「げ!もう、こんな時間!仕事に戻んなきゃ。沙由里ちゃんはゆっくりしていって。そのコーヒーは俺のおごりだから。じゃあね!」

一人部屋に残された沙由里は、先ほどの電話での内ヶ崎の会話を自分なりに分析してみた。

相手は女の子。名前を呼び捨てで呼んでいたから、内ヶ崎と同年代か年下かもしれない。
前に「一人っ子だ」と言っていたので、妹ではないだろう。

会話の雰囲気からして、かなり親しい間柄。
会話の中で内ヶ崎は自分のことを「俺」と言っていたので、相手のことを好きである可能性が高い。
いや、高いどころか電話の切り際に「好きだよ」と言っていた。
そして、「デート」のことを話していたということは、すでに付き合っているということではないのか。

沙由里は愕然とした。
内ヶ崎には彼女がいたのだ。
マキが言っていたことは間違っていたのか、それとも、最近になって彼女ができたのかもしれない。
どちらにしても、ドキドキしたのも、内ヶ崎のことを好きになったのも、自分の“一方通行”だったのだ。

別にフラれたわけではないけれど、なぜかとても悲しい気持ちになった。

沙由里は誰とも目を合わせないように、逃げるようにお店を後にした。

第四話:了