無題(追記) | 月のベンチ

月のベンチ

両親の闘病記


ポジショニングの仕方が違うことが多い。

療法士さんに相談して、忙しくても簡単かつ的確にできるポジショニングの仕方を写真入りで貼り付けてあるのに、右足に入れるべきクッションを左に入れてあること数回。

何度も『右足です』と口頭でもお願いしている。


なぜなのか…?

写真を見れば一目瞭然なのにな。

これでは緊張が増してしまう。





夜間の病室、
ふと気がつくと、母以外の患者さんは、穏やかな寝息をたてている。
みんな苦痛の表情は出せる人たちだ。

母はずっと歪んだ顔で、緊張のため左に顔をこれ以上ないくらい力いっぱい押し付けて、顔が半分枕に押しつぶされている。
筋肉がこうなっている以上、動かしようがない。
緊張が緩むのを待つしかない。

病室でぽつんと、思った。

何で四六時中こんな状態でいないとならないのだろう。

それでなくても植物状態で何の楽しみもないというのに。

母だって、きっと頭か心の中で
『痛い痛い痛い…
苦しい苦しい苦しい…』
そう感じていることだろう。

もう毎日一年以上もこんな状態。

いつも思う。
せめて苦痛の時間がもう少し少なかったら。
笑顔とか、反応とか、そんな贅沢は言わないから、せめてもう少し穏やかな時間を母にくれないだろうか…





父親も兄も居るには居るけれど、ほとんど何も知らないし、ほとんど何もしない。

なるようになる。
そう思っているのだろう。


ほんとうに私の周りの男の人は

だらしがない。

昔から、母の病気から逃げ続けてばかり。


≪目を背けるな≫

≪真実を見ろ≫