電話 | 月のベンチ

月のベンチ

両親の闘病記

母が倒れるだいぶ前。
兄が結婚して独立したころ。

母は家が盗聴されているといい、自宅では電話をかけたがらなかった。

携帯も盗聴されやすいと、やはり使いたがらなかった。

兄や叔母たち(母の姉妹)に電話をかけるときは、必ず電話ボックスを使った。
今ではもうほとんどないが、当時は歩いて数分の団地の側にあった。

母は、夜、夕食を済ますと、暑くても寒くても、雨でも星空でも、私を連れて電話ボックスに電話をかけに行った。

その行き帰り、月や星を見ながら、他愛のない話をしながら、母と二人、テクテク歩いたっけ。