1988年、日本を発ってスペイン、のちイタリアでの生活が始まった。

それまでにも仕事をしていた会社で年金の積み立てをやっていたことを34年ぶり(1993年~1994年に神戸に滞在していた期間を除く)に日本での生活を一から始めるにあたって区役所で日本で払ってきた年金について調べてもらっているときに、34年以上前、40年ほど前の記憶が一瞬のうちに蘇った。

 

浦島太郎と言えば竜宮城にずっといる間もう何十年が過ぎたことを知らずに故郷に帰ってはじめて自分がどれほど年を重ねたかを知った。

おとぎ話ではなく現実の海外在住者は、実際何度か日本に一時帰国しているので数週間ではあるが祖国の様子は見ている。

ただバカンスで帰るのと、還暦近くになってから日本で第二の人生を送るのとは全然違う。

国民健康保険や国民年金の話が出てくると日本でお金が出て行く現実を身をもって知ることになる。

 

今回のように再移住する前にこの時どんな気持ちになるか想像してみた通り、これまで海外で暮らした34年ほどの月日が「まるで夢を見ていた」だけで実際にはなかった体験だったのではないか、と考えている。

 

まだ海外に渡航する以前に読み漁っていた筒井康隆の小説を新居の本棚に収めた。

これらの作品に登場する人物が、実際に行ったのだと思い込んでいたことは狂気の中で見ていた妄想だったと言うものが多くある。

もしかしたら、34年ほど暮らしたあの海外での生活は実際には存在しなかったということはないだろうかとマトリックスの映画みたいに疑ってしまうのだ。

 

でもそれはありえない、なぜならオレはイタリアにマイホームとファミリーを持っていて妻と一緒であるからだ。

 

アニメ「耳をすませば」の舞台になった西東京の景色を思い出させるこちらは神戸北区、

丘の上にある町へと昇る階段