ブログネタ:成人の日 参加中

成人式を思い出すには、10年弱の時を遡らねばならないのですが、ほんの数年前のことのように覚えています。
それはあの頃、忘れられない日にしたかったという思いがそうさせてるのだと思います。

女の子の場合、成人式の2年前ころくらいから徐々に準備が始まっていたりします。
「ねぇねぇ、袴にする?振袖?それともドレス?」
友達間で交わされる会話はとても重要だったりするのです。
成人式ブームというものがあって、袴が流行る年、振袖が流行る年、2次会パーティーが予定されていればドレスが多かったりとまちまちです。
私が成人式を迎えるまでの間は、袴が何年も流行っていて街角の広告なんかも袴姿のポスターが多かったように思います。
「う~ん、どっちもその日を逃せば二度と着れない一生一度のものだよね」
自分が着たいものはどれか、だけど周りから浮くのも嫌、駆け引きめいた会話はある日突然交わされ何度も交わされる。

翌年あたりから慌しくなります。
着物のしたてやらレンタル予約やらヘアサロン予約と戦争です。
ヘアサロンなんかは、1歩遅れると朝4時とかにあてがわれたりして大変なのです。

私はそんな波に乗り遅れ、成人式半年前というギリギリで事を始めることになりました。
明日する…そんな明日がいつまでたっても来なかったんですよね。

今でも覚えています。
私が母の問いに「振袖にする~」と答えてからバタバタと慌しかった。
応接室に呼ばれて部屋に入ると、部屋中に反物を広げられていて、母と知らないおばあさんが座ってた。
「気に入るのはあるかい?」
そう言われて何十枚という反物から1本を選びました。

それから慌しく体中をメジャーで計られた。
サイズを見ておばあさんは困り顔……。
おばあさんの話によると、最近反物から着物を作る若者が居ないというのです。
洋服の時代だからというのもあるのですが、もう一つ致命的な理由が「反物」にあったんです。
それは、袖が足りないということです。
反物1本で着物を作っていくわけですが、袖というのは反物の幅に当たります。
最近、手足の長い若者が増え、袖が反物でとれないというのです。
そして、私の腕も大幅に足りず、合わせてみると7部袖よりも若干短い仕上がりになりそうな勢いでした。

私は背が低いのですが、腕は背の高い人より長かったりもするちょっと宇宙人体系なのです。
トレーナーやカットソー、上着という上着の袖はほぼ足りません。
部屋着なんかは短いまま着ているのでいつも手首10cm程出ている状態です。
外着はやっぱり難しいですが、7部と誤魔化すか気に入らなくても袖が長いものは迷わず購入といった感じです。

で、着物屋のおばあさんは私に今若い子向けに作られる布仕様の着物にするかい?と提案してくれました。
が、私はやっぱり一生一度の振袖だから、昔の柄で昔の形で着たかったのです。
それから数ヶ月、年末ギリギリに仕上がった振袖は私にピッタリの出来でした。
縫い目ギリギリを一針一針おばあさんが縫ってくれたんですよね……とても感動しました。
私のわがままで出来た振袖、今すぐにでも自慢して歩き回りたかったです。

そして、当日、成人式です。
朝5時起床で髪を結ってもらいます。
あくびをしながら、会場に向かいます。
前年まで流行っていた袴はその年、数えるくらいで振袖が圧倒的に多い成人式になりました。
妊婦も何気に多く、お腹を隠すドレス姿の人も多かったでしょうか。
男性はやっぱりスーツが多くて、紺やグレーの袴もチラホラ、そして調子に乗った白袴も数人居たりします。

市民ホールに集まった同級生たち。
成人式は言わば、大型同窓会。

いつもより多く設置された灰皿には、沢山の新成人が集まります。
今年始めたタバコじゃないだろう?と言いたくなる様な吸いっぷりです。
私も今ではタバコを愛煙していますが、その時は喫煙者を冷めた目で見ていましたね。
不思議と酒を持参する人はおらず、結構まじめな学区だなと、思ったのを覚えています。

会場に入場すると「しおり」のようなものを渡されます。
席は自由席。
前2/3が新成人で後ろ1/3が家族席になっています。
ステージ後方から入る会場ですが、上から席を見下ろすと、ステージから放射線状の席から人が埋まっています。
ど真ん中を避けるように座る新成人。
テレビで暴れまわる新成人を見習えとは言わないけど、これもやりすぎ……。
ステージ中央のマイクチェックをしにきた職員さんが「あ、あ、マイクテスト、マイクテスト、真ん中にも座ってください、マイクテスト」とさり気なくに忠告しています。

それからしばらくして中央席も埋まり市長さんの挨拶やらなんやらの式が始まりました。
プログラムは、挨拶・祝辞などをやりその後四重奏コンサートとなっています。
祝辞が終わり、拍手が鳴り響いている間にステージチェンジです。
そして現れた4人が「タイタニックのテーマ」を演奏し始めます。

と、徐々に会場が騒がしくなってきました。
もしや、テレビで見たような「嵐」がくるのか?
胸騒ぎの中、前方に座っていた人たちが席を立ち会場を出て行き始めます。
それにつられてその近くの人たちも……。
なんだ?と思ってあたりを見回すと、私たちが座っている後ろ席には殆ど人がいませんでした。

なんだろうな、流れに乗らなきゃ、そんな雰囲気が会場中に満ちてました。

何の打ち合わせもなく、四重奏コンサートボイコット事件です。

会場を出ると、フロントでは立食同窓パーティのように賑わっていました。
コンサートをボイコットという悪いことをし罪悪感いっぱいに席を立った筈なのに、ドアを抜けたら「もっと早く出ればよかった」なんて思いになっていました。
バイオリンの音が微かに響く市民ホールのフロント。
観客の居ないコンサート……今思えば本当にあの演奏してくれた人たちに悪いことをしたなと少し後悔しています。

市民ホールは毎年、式が終わった後も数時間は貸しきっているようで、その時も3時間ほど同窓会は続いていました。
お昼も大幅に過ぎ、懐かしい顔ぶれが話の流れでグループとなり、1組1組徐々にどこかへ消えていきます。
私たちはというと女5・6人が集まって、何気にナンパ待ち。
「お腹すいた~」
そう思っても誰もそこを離れようとしません。
誰かが「じゃ、何か食べに行く?」と言うのを待っているんでしょうね。

私たちは最後の最後まで市民ホールのフロントにいました。
残っているのは私たち女グループと男グループの2組。
聞き耳を立てると食事に行くような話しをしています。
そのグループの一人が車を出すと言って市民ホールを出て行きます。
「あぁ~お腹すいた~何か食べにいこうか~」
私たちのグループの一人の女子が大きな声でアピールします。
なんだかわざとらしくて、それが面白くて私たちもわざと棒読みで叫びます。
「でも~車がないからどこにも行けないね~」
「どうする~~~?」
男の子たちがチラチラこちらを見ているのもわかりました。

ですが、男の子たちはあっさり退散。

惨めなものです。

男子が消えてから、私たちは笑いが止まらず大爆笑でした。
「ケッ、私たちに見向きもしないなんて」
「車がなくったってタクシー呼んでやるわよ」
何故かセレブ風になっていた私たちはこのあたりから壊れ始めてました。

とりあえずタクシー呼ぼうぜってことで、携帯電話でタクシーを発注。
まずはお世話になった人たちに挨拶周りをしようって事で小学校やら中学校やら個々の仕事先なんかにタクシーを乗り回します。
そして食事をしている間もタクシーを待たせ、大暴れ?です。

そして「どうする?」ってことで、一生の思い出を作りに行こうって事になりました。
今思えば何故それが一生の思い出だったかはわかりませんが、その時は全員一致で即決したことです。

振袖ボーリング。

何が何でもこのスタイルを保ちながらボーリングをやりきろうってことになり、またタクシーで向かいます。
ボーリング場に入ると、皆の視線を集めました。
着物でボーリングに来る人はいません。
新成人でも着替えてきます!
来てみて気づいたのが、足袋じゃシューズが履きづらいということ。
親指と人差し指のまたがキューっとなって、とても痛い。

よっしゃ~やるぞ~って事で振袖ボーリングスタートです。

ボールを振ると袖がバタバタとなびきます。
腰もおとしにくく、ボールを投げるような感じに……ドン!って。
ファーももちろんつけたままで、助走の勢いでファーが後ろに下がって首が絞まってしまった子もいました。

外人さんに写真をもとめられたり、無断で遠くから撮影する人もいたりで、なんだか芸能人気分。

アホな珍しい生き物でしかなかったと思いますけどね。

その後は、街中を練り歩き、自宅に戻ったのは日没。
玄関の鏡を見てびっくり、強姦にでも襲われたのかってくらい私はボロボロでした。
(やぶれたりはしてませんけどね)

「そんだけ振袖楽しめたら、一生一度も価値があるな」
ボロボロの私を見て父が言った言葉です。

実は私はそんなにアクティブな性格ではないのだけれど、この日ばかりは夢中ではしゃぎました。
一生一度だから、何かやっておきたい、その時強く思ってた。
特別なことじゃなくても振袖を着ているってことだけで、普段が特別に変わる。

暴れ狂う新成人も多分、同じ思いなんだと思います。
やることがデカ過ぎなんですけどね。
みんな、思い出作りたいんだろうと思います。

でも、先輩から助言。

私も何かしなきゃ忘れちゃうって焦りのような不安があって、覚えておきたいそう思って小さな暴れを起こしたけれど、この日はいくつになっても鮮明に小さなことも思い出として残ってる。
暴れなくても大丈夫。
目立たなくても大丈夫。
目に映るもの耳にはいるもの、みんな覚えてる。
一生一度の忘れたくない日は、その思いだけで思い出になる。

だからあんまり迷惑かけるような思い出作りはしないようにね。
お酒とタバコも控えめに!

十年経って、何で三十路式はないんだろうな~とか思ってみたり。
懐かしい友を思い出し、新成人を毎年うらやましく思います。
成人おめでとう、成人式を楽しんでくださいね。

そうそう、成人式は最後の子供の日でもあるんですよね。
「これが最後だな」って、父からお小遣いを貰ったこともいい思い出です。
その後、何度か父に助けを求めたのは内緒ですが。

きっとこれから先も、忘れられない日なんだろうな……成人の日って。


------------
メモ判定:★★★★★(金星星
------------
素晴らしいです!