釜山でおもに食べていたのは3000ウォンのグッパ。
グッパ屋が6軒くらい並んでいる通りがあって、店につき一人か二人のおばちゃんが呼び込みをしている。「いらっしゃいませ。」って感じじゃなくて、「ちょっとおいでよ。」みたいな感じでみんな手をひらひらさせてる。
どこの店も味は野菜の出汁のスープにご飯と小さい肉とたくさんのもやしが入ってるグッパが食べられる。味はたいして変わらないんだけど、グッパの小皿についてくるキムチ系サイドメニューが少しづつ違う。僕は大根のキムチが一番のお気に入りで、その次がにんにくのキムチとニラのキムチかな。
あ、あと必ずヤクルトがついてくる。香辛料でびっくりしちゃった腸を、最後にヤクルトで落ち着かせましょう、的な?


釜山最後の夜は魚料理って決めてて、店頭の水槽で魚が泳いでる1軒の店で刺身どんぶりを食べた。確認する前にぐちゃぐちゃに混ぜちゃったし、味付けがキムチ風だったから、なんの魚を食べたかはわかんないけど、結構おいしかった。セットでついてきたグッパは出汁を魚介類でとってたから、野菜出汁グッパしか食べてなかった僕には新鮮だった。蟹と鰈が具で入ってて、身は殆どなかったけど、肝はちゃんとついてて、おいしかった。

21時過ぎに行ったから、その店にいたのは僕の他には1グループしかいなかった。親戚なのか、2組の夫婦とその子供が4人。店は広くて座敷で20卓ほどあるんだけど、僕とその8人しかいないから、スペースはすかすか。子供が元気に遊んでてくれなかったら、寂しい感じだったろうな。子供は1番上が3歳くらいの男の子と女の子、次がまだ歩き始めたくらいの男の子あと一人は、ずっと寝てる男か女かわかんない赤ちゃん。
3歳くらいの男の子は利口そうな顔をしていて、じっと僕を観察していた。逆に女の子は元気だった。走りまわりながら、僕のそばを通るたんびになんかしら話しかけてくる。僕が返事を適当な英語でしていると、観察している男の子は僕の言葉が普段聞いてるそれと違うことに気づいた。そのことを女の子に教えてあげようとするんだけど、女の子は走るのに夢中だから聞いてない。男の子は教えてあげたいから、女の子を追いかける。しばらく走ってると男の子も楽しくなって、もうなんのために走り始めたのか忘れちゃって、ただ走ることに夢中になる。

走り終わった後の、女の子のひらめきはそれは素晴らしいものだった。
お父さんの靴を履いて歩いちゃうなんて、いままで一度もやってないことなのだろうから。

座敷を1段降りたところに置いてあるスニーカーに足を入れ、ぶかぶかで脱げそうになるのを上手く引きずりながら、出口にいるおじさんを目指す。おじさん、これ見たら笑っちゃうだろうな、って想像しながら歩く2人は1歩進むごとに笑っていた。
そんな楽しそうな遊びには自分も混ぜろ、と歩き始めボーイも余ってるスニーカーに足を入れる。こちらは、スタートの遅れがある分、進んでいくさまは真剣だった。でもその歩みは不安定で、いまにも転んでしまいそうだった。僕は心配で見ていたが、大きな靴でなくても日々転びそうになりながら歩いている彼には、これといって心配はないようだった。
出口は死界になっていたので、座敷に座っていた僕には、ぶかぶかの靴を履いた3人の子供をみたお店のおじさんがどんな反応をしたのかは確認できなかった。

しかし、よちよちボーイが見えなくなってから間もなく、彼はおじさんに抱えられて帰ってきた。彼の向こうに行く前との変化はぶかぶかの靴を履いてなかったことと、ズボンの前がびしょびしょに濡れていたことだった。

「漏らしてましたよ。」
とおじさんから母親に引き渡されるよちよちボーイ。
彼のズボンを見た母親は、この年齢の子を今までほったらかしにしていた自分のことは棚に上げて、彼を怒っていた。そんな母親を前にしても彼はただボケっとしているだけだった。表情は全く変わらなかったが、歩き方が若干濡れたズボンを気持ち悪がっているように見えた。

そのあと、母親は彼の服を脱がし、またおしゃべりの席についた。すっぽんぽんにされたことは、彼にとって各段気にすることでもないらしく、また年長2人組の遊びに混ざろうとよちよちと歩きだした。

そんなすっぽんぽんの彼を見ていたら、14日に観た、松本人志『しんぼる』を思い出した。

『しんぼる』


前作の『大日本人』より、雰囲気がおしゃれだった。
この人が映画でやりたいのは、日々考えていたり、思っていたりすることの映像での表現だから、笑いっていうジャンルの面白さだけを求めて観に行ったら、ちょっとがっかりしてしまうかもしれない。でも、そっちはテレビで十分やってるから、ってことなんだろうな。この人がつくる完全笑いオンリーの映画はぜひ観てみたいけど、それは映画という表現が媒体として不向きだからやらない、ということなのだろうか。そこらへんはシロウトの僕には分りかねる。
『大日本人』との共通点がほぼゼロだから、次回作もたぶん、いままでの2作品とはまったく違うものを作るんだろうな。そういう意味で次回作が楽しみです。

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