道で転んだ。
道というのはパリのルーブル美術館と川のあいだの車道。
車は来てなかったが横断歩道の信号が赤に変わったので少し小走りしたら、つまづいてバランスを崩した。
ダウンジャケットのポケットに入れていた両手は、崩れたバランスを整えるには出てくるのが遅すぎて、ただ僕の前周り受け身の補助の役割だけを果たした。
崩れた体勢のまま2、3歩粘ったおかげでスローで倒れ、ダメージは少なく済んだのだが、その代わり周囲の注目を集めた上で転倒することになった。「オー、アミーゴ!」と心配そうに叫んでくれたおじさんに、置き上がってから「サルー」と返したが、果たしてスペイン人だったのだろうか。。
ポケットに手を突っ込んで歩くと危ない、というのは、転んだときに顔を打つから危ないのかと思っていたが、なるほど、バランスを調整することができなくなる、ということだったのか。
もともと、手がすぐ冷たくなるほうだから、ポケットに手を入れたり、こぶしに息を吐きかけたりするのは癖なのだが、パリに来てからというもの、僕の両手はずっとポケットに入りっぱなしだ。
ヨーロッパに来て、カメラを取り出さなくなったのは、この寒さが1つの原因だが、やはりもっと根本的な原因もある。
ルーマニア、ブルガリア、ギリシャ、オランダ、イギリス、ドイツ、フランス。
国の数にして7カ国目、時間にして約1カ月。
最初はヨーロッパの建築物に目を奪われ、見つけるたびにシャッターを押していたが、さすがにもう飽きがきた。
もともとそういうセンスがある人間ではない、物珍しさで感動をしていたのだ。
ブログを書かなくなったのも、それと近い理由も。
ただ海外で起こった出来事ってだけで、中身は「で?」っていう話ばかり。
ロンドンで、
70パーセントオフバーゲンで本を大量に買ったら、送料が本の値段の倍した、とか。
キオス島からの船で出会った韓国人のチャンゴンとお茶してそのあと飲みに行った、とか。
リバプールで、
朝食用のシリアルを昼にこっそり食べたら怒られた、とか。
ジョンレノンの命日のライブに行ったらすごく盛り上がってた、とか。
異国ならではの、って面白さはない。要は刺激が足りない。
それはやっぱり慣れたから、ってことなんだろうけど。
タイで初めてタクシーに乗ったときなんか、スーパー興奮してしまってたからな。
でも今日はそういう少し刺激的な出来事があったから書いておこうかな。
ルーブルの道で転んだ直後のこと。
まだルーブルの壁の周りを歩いていたときのこと。
黒人ってほど黒人ってわけではないけどアフリカ系の僕より少し年下くらいの女の子が向こうから歩いてきた。
僕とすれ違う直前に道に落ちていた指輪を拾い、それを見せて話しかけてきた。
「ねぇ、これゴールドかしら?本物のゴールドじゃない?」
「え?どうなんだろうね。。」確かに金色だけど、装飾も彫り細工もない、おもちゃみたいな指輪。
「これ、ゴールドでしょ?ゴールドよね?」しつこいな。そして怪しいな。
「そんなこと知らないよ。」と行こうとすると。
「ちょっと触ってゴールドかどうか確かめてみて」と手を掴んで持たせようとする。転んだときに擦りむいたところを触られて痛かったのですぐに振り払って、歩き去ってしまったが、あのまま相手にしていたらどうなっていたのだろうか。最初にふざけて「ゴールドだよ。」と言っていたらどうなっていたのだろうか。あの指輪を握っていたらどうなっていたのだろうか。
ルーブルを一周して帰ろうとすると、
「I don't know. I don't know. This is not mine.」と言いながら、さっきの女の子に追われながら歩いているお姉さんがいた。
それを見ていたけれど、やっぱりわからない。
わからないしわからなかった。
ちっともわからなかったのだけれど、僕はまず背後を確認した、ゴールドを連呼する女の子に怪しさを感じた瞬間に。
もしかしたら、後ろにグルのひったくりが構えているのではないかと思ったのだ。
「ゴールド、ゴールド」で注意を引きつけておいて、後ろから襲う、そんな手口。
聞いたことない。
まして僕は引ったくりにあった経験もない。
けれど、正面に怪しさを感じた当然の反応として、後ろを振り返った。
これも旅行に慣れた、ってことなのだろうか。
だったら、小走りになるときにポケットから両手を出す、ってことも無意識にやってほしいものだ。
0912122404
道というのはパリのルーブル美術館と川のあいだの車道。
車は来てなかったが横断歩道の信号が赤に変わったので少し小走りしたら、つまづいてバランスを崩した。
ダウンジャケットのポケットに入れていた両手は、崩れたバランスを整えるには出てくるのが遅すぎて、ただ僕の前周り受け身の補助の役割だけを果たした。
崩れた体勢のまま2、3歩粘ったおかげでスローで倒れ、ダメージは少なく済んだのだが、その代わり周囲の注目を集めた上で転倒することになった。「オー、アミーゴ!」と心配そうに叫んでくれたおじさんに、置き上がってから「サルー」と返したが、果たしてスペイン人だったのだろうか。。
ポケットに手を突っ込んで歩くと危ない、というのは、転んだときに顔を打つから危ないのかと思っていたが、なるほど、バランスを調整することができなくなる、ということだったのか。
もともと、手がすぐ冷たくなるほうだから、ポケットに手を入れたり、こぶしに息を吐きかけたりするのは癖なのだが、パリに来てからというもの、僕の両手はずっとポケットに入りっぱなしだ。
ヨーロッパに来て、カメラを取り出さなくなったのは、この寒さが1つの原因だが、やはりもっと根本的な原因もある。
ルーマニア、ブルガリア、ギリシャ、オランダ、イギリス、ドイツ、フランス。
国の数にして7カ国目、時間にして約1カ月。
最初はヨーロッパの建築物に目を奪われ、見つけるたびにシャッターを押していたが、さすがにもう飽きがきた。
もともとそういうセンスがある人間ではない、物珍しさで感動をしていたのだ。
ブログを書かなくなったのも、それと近い理由も。
ただ海外で起こった出来事ってだけで、中身は「で?」っていう話ばかり。
ロンドンで、
70パーセントオフバーゲンで本を大量に買ったら、送料が本の値段の倍した、とか。
キオス島からの船で出会った韓国人のチャンゴンとお茶してそのあと飲みに行った、とか。
リバプールで、
朝食用のシリアルを昼にこっそり食べたら怒られた、とか。
ジョンレノンの命日のライブに行ったらすごく盛り上がってた、とか。
異国ならではの、って面白さはない。要は刺激が足りない。
それはやっぱり慣れたから、ってことなんだろうけど。
タイで初めてタクシーに乗ったときなんか、スーパー興奮してしまってたからな。
でも今日はそういう少し刺激的な出来事があったから書いておこうかな。
ルーブルの道で転んだ直後のこと。
まだルーブルの壁の周りを歩いていたときのこと。
黒人ってほど黒人ってわけではないけどアフリカ系の僕より少し年下くらいの女の子が向こうから歩いてきた。
僕とすれ違う直前に道に落ちていた指輪を拾い、それを見せて話しかけてきた。
「ねぇ、これゴールドかしら?本物のゴールドじゃない?」
「え?どうなんだろうね。。」確かに金色だけど、装飾も彫り細工もない、おもちゃみたいな指輪。
「これ、ゴールドでしょ?ゴールドよね?」しつこいな。そして怪しいな。
「そんなこと知らないよ。」と行こうとすると。
「ちょっと触ってゴールドかどうか確かめてみて」と手を掴んで持たせようとする。転んだときに擦りむいたところを触られて痛かったのですぐに振り払って、歩き去ってしまったが、あのまま相手にしていたらどうなっていたのだろうか。最初にふざけて「ゴールドだよ。」と言っていたらどうなっていたのだろうか。あの指輪を握っていたらどうなっていたのだろうか。
ルーブルを一周して帰ろうとすると、
「I don't know. I don't know. This is not mine.」と言いながら、さっきの女の子に追われながら歩いているお姉さんがいた。
それを見ていたけれど、やっぱりわからない。
わからないしわからなかった。
ちっともわからなかったのだけれど、僕はまず背後を確認した、ゴールドを連呼する女の子に怪しさを感じた瞬間に。
もしかしたら、後ろにグルのひったくりが構えているのではないかと思ったのだ。
「ゴールド、ゴールド」で注意を引きつけておいて、後ろから襲う、そんな手口。
聞いたことない。
まして僕は引ったくりにあった経験もない。
けれど、正面に怪しさを感じた当然の反応として、後ろを振り返った。
これも旅行に慣れた、ってことなのだろうか。
だったら、小走りになるときにポケットから両手を出す、ってことも無意識にやってほしいものだ。
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