初の投稿は、今の本誌でのカインとセツカの続きからです。
同じベッドで寝るようになって、数日という設定で書いてみました。
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キョーコはTV局内をフラフラした足取りで歩いていた。
寝不足の日が続いている。
そもそも、同じ部屋で一夜を明かすだけでも、かなり緊張しちゃうのに、同じベットで寝ることになるなんて!!
キョーコは寝不足でフラフラになりながら自分の楽屋を開けた。
「よぉ!」
「げ!!」
ーーバタン!!
私は思わず扉を閉め、楽屋の
名前をもう一度確認する。
間違えていないことを確かめ、
今度は勢いよくそのドアを開け放した。
「なんで、あんたが私の楽屋でくつろいでんのよ!!ショータロー!!!」
人の楽屋のソファに堂々と座ってる幼馴染に怒鳴りつける。
「うっせーな。こんくらいで一々騒ぐなよ。俺とお前の仲だろ?」
とニヤニヤ笑いながらいうショータローが憎たらしい。
「は?!どんな仲だっていうのよ。冗談じゃないわ。私はあんたとの過去なんか抹消したいくらいなのに!!」
「照れんなよ。キスした仲だろ?」
「………は?」
「は?じゃねーだろ?!忘れたとは言わせねーぞ!バレンタインの時の…」
「ば!バレンタイン?!!」
私はバレンタインと聞いた瞬間、ワインゼリーを渡した後の敦賀さんのほっぺにチューを思い出してしまい、かなり動揺した。
ボボボボボッっと一気に顔が真っ赤になる。
それを見て一瞬怪訝な顔をしたショータローだったが、次の瞬間何を勘違いしたのか勝ち誇ったようにニヤリと笑った。
「なんだよ。赤くなりやがって…。そんなに俺とのキ…」
「あ!!あれは!!ただのお礼なんだから!!」
「………は?!」
「だ、だから、ただの挨拶よ!!深い意味はないはずなのよ!」
私はショータローが目の前にいることをすっかり忘れて、一人思考の小部屋に迷い込んで弁解する。
「おい!さっきから何を一人で混乱してんだよ!お礼とか挨拶とか言いやがって!そんなに良かったなら、もう一回やってやるよ!」
そういいながら、腕をぐいっ!と掴まれた。
「な?!ちょ!!離しなさいよ!なんのつもりよ!」
「なんのつもりって…あの日の再現だけど?」
「ひーー!!いーーーやぁー!!あんた私を地獄に突き落とす気なの?!!!」
私は敦賀さんの「二度目はないよ?」と言っていた姿を瞬時に思い出し、真っ青な顔でガタガタ震え出した。
流石のショウタロウも私の怯え方で怪訝な顔をする。
「は?!なんだよ。その反応は…赤くなったり青くなったり忙しいやつだな…」
「私はまだ命が惜しいのよ!!離してよ!!」
「だから、訳わかんねーってんだよ。お前!!頭大丈夫か?」
「あんたのせいで、ちっとも大丈夫じゃないわよ!!あんたが変なこと言うから色々思い出しちゃったじゃない!!」
私はキッとショウタロウをにらみ付けた。
「やぁ、楽しそうだね最上さん。」
噂をすれば影?!敦賀さんの声が私の背後から楽屋に響いた。
顔は見てないけど、どす黒いオーラを感じる。
凄く突き刺さる笑顔でお怒りになってるに違いない。
私はショウタロウに腕を掴まれたまま。ショウタロウは敦賀さんを余裕の笑みで見つめた。
「よぉ。敦賀さん、悪いけど見てわかる通り俺たちお取り込み中なんで、邪魔しないでもらえますか?」
ーーーしょ、しょしょ、ショータローあんたなんってことを!!
心の中で絶叫するも、言葉が出せない。
何故なら、空気がピシリと音を立てた気がしたからだ。そう、例えるなら氷にヒビが入ったような。そんな感じ。
さっきと比べて明らかに低くなった声音が響く。バックにはキュラキュラと光り輝くスマイルの効果音が聞こえる気がする。
「あぁ、お取り込み中ね。それは済まないね?不破君?…お取り込み中ということだけど、出て行った方がいいかな?ー最上さん??」
「めめめめめめ、滅相もございません!!!見捨てないで下さいーーー!!」
そういうと敦賀さんはニッコリと微笑むと「と言うことだから、不破君失礼するね?」と言いつつ、遠慮なくショータローの腕を私の腕からべリッと引き剥がした。
「っ!てっめぇ…!!」
ショータローが敦賀さんを睨みつける。
「…腕…赤くなってるね…」
敦賀さんが私の掴まれてた腕をジッと見つめる。
「あ…」
私もつられて腕に視線を落とした隙に、敦賀さんはその腕を掴んで赤くなった部分にチュと口づけた。
私の血液は一気に沸騰する。
「な、ななななななななな!!」
ショータローもボーゼンと立ち尽くして眺めていた。
「突然、何するんですかー!!」
「何って…早く治るおまじない?」
「んな!!」
寝不足なのに一気に沸騰したために、軽い貧血になりよろける。
「っと!…どうしたの?大丈夫?」
暖かい腕がすかさず支えてくれた。
「あ!すみません!大丈夫です!ちょっと今日は貧血気味で…」
「そういえば、顔色も良くないね?ちゃんと睡眠…」
ーーとってる?と聞こうとした蓮は一瞬口ごもる。
「……もしかして、昨日も眠れなかった?」
「え?!や、あの…そんなことは…」
「全く、君は…。嫌なことは無理に付き合わなくていいんだよ?」
敦賀さんがため息を吐きつつ暗い顔を見せる。
「そ、そんな!嫌な訳ではないです!!ただ、その、緊張してしまっただけと言いますか…。」
尚は面白くなさそうにドカッと音を立ててソファに座り、テーブルにドンっと音をわざと立てて足を乗せる。
自分の存在をアピールするように。
しかし二人はこっちを気にも止めずに話続けてる。
チッ。舌打ちはしたものの、何となくキョーコと蓮を二人きりにするのが癪なので、そこに居座り続ける尚。
一方蓮は、嫌ではないと聞いて安心するも、男として意識されてないのか?と複雑な気分になる。緊張が男だと意識してと言うことなら嬉しい限りなのだが、この子に限って…という学習能力が働く。
「と、とにかく!二人きりで同じ部屋で寝るということですら緊張するのに、同じベットだなんて…とてもじゃないですが眠れません!!破廉恥ですーー!」
尚は、思考が一瞬停止した。
ーーーは?!今こいつなんて言った?!同じベットで寝る?!!
「…っおい!キョーコ!それどう言う意味…」
「ご、ごめんね。最上さん…。君を寝不足にさせてたことに気付かなくて…。もしかして、一昨日から眠れてないの?」
ーーーおとといからと言うことは、昨日だけじゃないのか?なに考えてるんだ!!
「あ、えっと…あの、でも私の役への未熟さが原因ですので、敦賀さんはお気になさらないで下さい!!」
蓮が暗くなって自分を責めそうになっているのを見て、慌てて弁解する。
「そんな!それは違うよ。最上さん!あれは俺が…っ!」
苦しそうな姿を見て、キョーコの胸がキュッとなるのを感じる。
「でも、嬉しかったんです!」
「…え?」
ゆっくりと、キョーコの手が蓮の頬へと伸びて其の手で頬を包む。
「たとえ、役としてでも、貴方の力になれるんだってことが!だから、嫌ではないんです…。貴方の苦しい顔は見たくない。私でも、できる事があるなら、どんなことでも力になりたいと思うんです。」
「も、がみさ…」
蓮は堪らず、キョーコをキツく抱きしめた。キョーコは驚いて小さく悲鳴を上げた。
流石の尚も焦って声をかける。
「!!おい!!」
キョーコは、抱きしめられてびっくりしたものの、そっと壊れ物を扱うように優しく抱きしめ返す。
「敦賀さんの力になりたいです。一人で苦しまないで下さい。私がずっと側にいますから。その苦しみを私に分けて下さい。」
キョーコは顔をあげるとニッコリと蓮に微笑みかけた。
ショウタロウはキョーコのそんな言葉と行動が理解出来ずに固まってしまった。
「君は…。本当にずっと側にいてくれるの?俺の、側に…?」
「貴方がどんな過去を抱えていても、貴方は私の尊敬する唯一の人です。私にとって貴方は、誰にも変えられない大切な存在なんです。貴方の変わりは誰も居ません。私の目標なんですから!」
蓮の腕に更に力が篭り、ぎゅうっと更にキョーコを抱きしめる。
「君は…俺がどんな過去を背負っていても、受け入れてくれるというの?」
「えぇ、勿論ですよ。私は貴方のお守りなんですから。」
「おい!お前ら!!」
尚が目の前の光景が信じられず、声を掛けるが、二人には届かない。
「やっぱり君が、…俺にとっては君だけが、唯一の光だ。ずっと変わらない…初めて出会った10年前からずっと…君の存在が俺の生きる道しるべだ。」
「…え?」
キョーコが10年前という言葉で不思議な顔をする。
蓮と10年前に出会った記憶がないからだ。しかし、何か引っかかるものを感じた。
「お互いに、髪の色も雰囲気も性格も、何もかも変わってしまったけど、君の本質は出会った時から変わってない。君の存在が、俺の生きる支えだった。10年前、京都の河原でたった数日間一緒に過ごしただけだけど、あの夏の日の優しい時間は俺にとっても、とても大切な宝物だった…。」
キョーコがじっと蓮を驚きの表情でみつめる。
「…コー、ン…?」
蓮は苦しげな表情を少しだけ和らげて微笑みかけると、
「妖精じゃなくてごめんね。ずっと黙っててごめん。君が俺のあげた石を今でも大切にしてくれてて、凄く嬉しかったんだ。」
「う、そ。…本当に…?本当にコーンなの?」
「うん。そうだよ。キョーコちゃん。ごめんね。君がコーンを思って泣いた時もただ抱きしめることしか出来なかった。本当はここにいるよ。って言いたかった。」
キョーコの目からみるみる涙が溢れて来た。
「コーン!!!!コーン!!!」
キョーコはギュッと力一杯抱きしめた。
「会いたかった!!ずっと逢いたかったんだよ!コーン!!!」
「うん、…うん、ごめんね。俺もだよ。キョーコちゃん。」
今度は蓮が優しく抱きしめ返す。
尚は一人、異様な光景を見るような目で二人を見ていたが、かなりムカムカして、キョーコの肩に手をかける。
「おい!!キョーコ!!何だよコーンって!俺、何も知らねーぞ!」
「きゃ!!え?!!ショータロー?!まだいたの??」
キョーコは、尚に対してもう怒りもなにも感じてないのか、ただ驚きの声を上げた。
「いちゃわりーかよ!!10年前ってなんだよ!俺、コーンなんて名前知らねーぞ!!」
「当たり前でしょ!!コーンとのことは誰にも話してないんだから!私の中の大切な大切な思い出なの。」
その言葉を聞いて、今度は蓮が反応した。
「え?でも俺にはコーンの話をしてくれたよね?」
「何故だか、貴方には話してもいいと思ったんです。貴方なら笑わずに聞いてくれるんじゃないかって思ったんです。モー子さんにも、話してません。」
「そうか。」
蓮は嬉しさのあまり破顔した。
そんなに大切な思い出を俺にだけ話してくれてたのか…。
「もしかしたら、どこかでわかってたのかもしれませんね。貴方がコーンなんだってこと」
「キョーコちゃん…。」
「でも、ずっと黙ってたなんて酷い!!私が逢いたがってたの知ってたくせに!!」
「ごめんね。でも話す訳にはいかなかったんだ。俺は過去は持ち込まないと決めていたから。」
キョーコは拗ねたようにプイッと顔を逸らした。
「いいんです。わかってます。一度言っておきたかっただけ。許します。貴方が黙っていたのはきっと訳があるはずだから。」
「ありがとう。キョーコちゃん。」
キョーコの目尻に溜まった涙を蓮が唇で拭う。
「な、なななな!!何するんですかー!!」
「ん。やっぱりキョーコちゃんの涙はしょっぱくてほんのり甘いね?」
かぁーーっと、キョーコの顔が赤くなる。
「貴方が、そんなことばっかりするから!!バレンタインって聞いただけで、あの時のことを思い出すじゃないですかー!!お礼でキスなんて日本人の常識にはないんですから、気を付けて下さいよー!!!」
「あれはただのお礼じゃないからね。立派な愛情表現だよ?」
「は?!お前が言ってたお礼って、こいつからのか?!」
ショウタロウはショックで呆然としてしまった。
しかし、キョーコの目には今は蓮しか写っていなかったし、それを見た蓮もショウタロウの存在を無視することに決め込んで嬉しそうにキョーコを見つめた。
「な、愛情表現ってなんですかー!そんなことばっかりするから誤解しそうになるんです!私をこれ以上惑わさないで下さい!!」
「それは、君が俺を意識してるってことかな??尊敬する先輩としてじゃなく、一人の男として見てくれてるの?」
「何訳わからないこと言ってるんですか?!敦賀さんはずっと尊敬する先輩です!!それに、男の人だってことくらい認識してます!いっそのこと、認識してなかったら同じ部屋で生活してもドキドキし過ぎて眠れないって状態にならなかったのに!」
「俺と一緒にいてドキドキするの?本当に?」
蓮は嬉しそうに破顔した。
「ドキドキします!敦賀さんを目の前にしてドキドキしない人なんていないと思います。」
「うん。でもね?俺は君にさえ見てもらえればそれだけで良いんだ。他の人の視線なんてどうでもいい。君の視線を独り占めしたい。」
「んな!!そ、そう言うセリフは想い人にしてください!!いう相手間違ってますよ!!」
「間違ってないよ。だって俺の唯一の想い人は君なんだ!ずっと好きだったよ。それこそ、キョーコちゃんって呼んでた時からずっと。」
「う、そ…だって、敦賀さんの好きな人は、高校生のはず…16歳だって言って…あ!」
キョーコはそこまで言って、自分も高校生で、話を聞いた当時、自分も16歳であったことに気付いた。そして信じられないと言う目で蓮を見つめた。
蓮は、なぜ想い人が高校生とか16歳という話がキョーコから出てくるのか疑問に思ったが、今しっかり告白しなければと思った。
「君とまた出逢えて一緒に過ごす時間が増えて、大切な人は作れないって、自分で枷をつけていたのに、君の一挙一動がどんどんその枷を壊して行くんだ。君の瞳が俺の心を捉えて離さない。好きなんだ。キョーコちゃんが…最上キョーコを俺は愛してる!世界中の誰よりも君が大切で、俺には必要な存在なんだ!」
キョーコは蓮の言葉を聞きながらポロポロと涙を流した。
ショウタロウは最早声が出ずにショック状態だ。今このままにしていたら完全にキョーコは離れてしまう。そんな気がする。それはわかってるが、何も口出しすることができずに、事の行方を見守る事しかできない。
フラフラと後ろに下がると壁にぶつかってズルズルと崩れ落ちた。
キョーコを今でも自分の物だと思っていた。キョーコは自分以外の誰の物にもならないと思っていた。でも今、キョーコは俺をその目に映していない。他の男の腕の中で、他の男を見ている。キョーコの中にはもう自分の入る隙間がない。それがわかってしまった。
表情豊かなあいつが、いつからか自分の前では泣かなくなった。俺が酷い捨て方した時も、俺に涙は見せなかった。
俺はあいつのうれし涙さえ見たことがないんだ。
敦賀蓮の腕の中でポロポロと涙を流すあいつ。
そいつの前では泣けるのか?涙を惜しげもなくみせるのか?
俺はお前にとってなんだったんだ?
「わ、たしが…必要な存在…?」
「うん。俺の側にいて欲しい。セツカとカインとしての生活が終わっても、もう君から離れるなんて出来ない。俺とずっと一緒にいて!お願いだ。俺を一人にしないで…!」
「そんな…貴方を、一人になんて…私は、側にいていいの?貴方の側にいることを望んでいいの?愛される資格なんてないのに?」
「愛されるのに資格なんて必要ない。今だからわかるよ。俺は君を愛する為に生まれてきたんだ。そして君も俺に愛される為に生まれてきたんだ。世界中の人が敵に回ったとしても、俺は君を愛し続けるよ。何度だって言える。愛してる君を、誰よりも!」
そう言って、蓮はキョーコに強引に口づけた。
「んん!…つ、敦賀さん!!」
キョーコは突然のキスにびっくりして顔を真っ赤にしていた。
「ん?嫌だった?」
蓮は真っ赤になってるキョーコを見て可愛いなと幸せいっぱいの気持ちで微笑んだ。
「…嫌じゃ、ありません、けど…」
「良かった!…なら、いいよね?」
もう一回だけ、と、蓮は微笑むと今度は深く口づけた。深く深く、何度も角度を変えて、しっかり口づける。
途中からキョーコが息苦しくなり、抗議の為に蓮の胸を叩いた。
「んんーー!ぅんむー!!」
蓮は一通りキョーコの口内を満喫すると名残惜しげに唇を離し、これ以上ない幸せの余韻に浸りながら、愛おしさいっぱいの顔でキョーコを見つめた。
キョーコは耳まで真っ赤にした顔で一瞬蓮を見つめたが、恥ずかしさのあまりすぐに顔を蓮の胸に埋めてしまった。
蓮は堪らずにギュッと再び力を込めて抱きしめた。
「ごめんね?嬉しくって、つい。…役者の法則は覚えてる?」
腕の中でコクンと頷くのがわかった。
「今のが、キョーコのファーストキスだよ?」
キョーコはもう一度こくんと頷くとギュッと抱きついた。
蓮はキョーコの香りを深呼吸して満喫すると、ポツリとつぶやいた。
「これ…夢じゃないよな?」
キョーコはパッと顔をあげると、びっくりした顔で蓮を見つめた。
「ん?なに?」
「えっと…、あの、私も同じ事を考えたので、びっくりして…」
「そう。」
蓮は嬉しそうな笑みを浮かべた。キョーコも微笑み返した。
「じゃあ、夢じゃないって確認してみる?」
「え?どうやってですか?」
「うん。もう一回だけ堪能させて?」
「つ、敦賀さん!」
「ダメ??」
「~もう!そんな捨てられた子犬のような目は反則です!!ダメだなんて言えないじゃないですか!」
蓮はその言葉を聞いて嬉しそうに微笑むと、ゆっくりと顔をキョーコに近付けた。キョーコも顔を真っ赤にしながらも、受け入れる為に目を閉じる。
唇が触れる寸前、蓮が、あ…と小さな声を漏らして、キョーコから視線を外した。キョーコは疑問符を浮かべて目を開け、蓮を見つめた。
蓮は壁の方を見た。
そこには真っ赤な顔で魂が抜けたような姿のショウタロウが座り込んでいた。
蓮はショウタロウに向かって、ニッコリ微笑むと、
「そろそろ出て行ってもらえるかな?ただの幼馴染のショーちゃん?」
と言った。
それを聞いてキョーコはギョッとして振り返ってショウタロウがいる事にようやく気付いた。今までの一部始終を全部見られていた事に、全身真っ赤になると、声にならない叫び声を上げた。
ショウタロウも弾かれたように立ち上がり、赤い顔のまま蓮を思いっきり睨みつけると、何も言わずに乱暴に扉を締めて走り去った。
ショウタロウが出て行ってからも顔を真っ赤にして口をパクパクさせてるキョーコを見て、蓮はクスクス笑いながらキョーコの反応に微笑んでいた。
「じゃあ、邪魔者もいなくなったことだし、改めていいよね?キョーコ?」
キョーコはフルフルと震えると、大きな声で叫んだ。
「敦賀さんの、敦賀さんの、いじめっ子~~~!!!!」
蓮はまたクスクス笑うと、幸せを噛みしめる為に、しっかりとキョーコを抱き寄せて、大声を出す口を再び塞いだ。
キスされながら、キョーコは恥ずかしさからポカポカと蓮の胸を叩いて抗議していたが、しばらくすると蓮とのキスに酔いしれ、今まで感じた事のない幸福が湧き上がってくるのを感じていた。

END




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