アメンバー様200人達成!&ブログ3ヶ月記念大感謝祭☆
☆めいめいさんからリクエスト頂きました!!☆
《箱のカギは壊れ、想いが止められないキョコちゃんと周りからバレバレな蓮さん。なんで付き合ってないの?と周りから思われるのに、なんでかお互い違う相手とスキャンダル。
会うこともできず、スキャンダルについて説明する連絡もできずに日々が過ぎていきっていうのはいかがでしょう?
自力で恋愛機能が回復した状態のキョコちゃんが読みたくて…》
さてさて、どうなるでしょうか??
お楽しみ下さいませ♪
*****
ふり積もる雪と想い 3
朝、キョーコは気持ちが沈んでおり、布団から頭だけを出してカタツムリのような体勢でぼうっとしていた。
思い出すのは、昨日の蓮の笑顔と、テレビで流れる報道ばかり。
目の前にある携帯は、昨夜から電源を落としていた。
何故なら光と入ったレストランでメニューを注文しようとした時から、ひっきりなしに着信やメールの受信で携帯が震えていたからだ。
蓮からの電話も、蓮からのメールも今は見たくない。
電話に出ないキョーコに心配して光は声をかけたのだが、5回目の着信が来た時にとうとう電源を落としてしまったのだ。
光はそれを見て更なる勘違いをしていたのだが、それはキョーコの知らないところだった。
携帯の電源を落としてる為、仕事の話があったらいけないから事務所に聞きに行かないと…と考えたキョーコはしぶしぶ布団から出た。
カインとセツカの生活から、忙しくなり始めたキョーコは、下宿先のだるま屋を出て、近所のマンションで一人暮らしを始めていた。
支度を済ませて部屋を出ると、訳の分からぬまま取材陣に囲まれた。
「え?!な、なに?!」
「京子さん!!おはようございます!!光さんとはどのようなご関係で?」
「へ?!あの、同じ事務所で…」
「あぁ、すみません。そういう意味じゃなくて、光さんのどんなところが好きですか?」
「え?あ、そ、そうですね。優しくて明るくて、親しみのある笑顔でいつもいるところ…でしょうか?」
「交際のきっかけは?!」
「いつから交際されてるんですか?!」
「……へ?!こ、コウサイ??」
途端に真っ赤になって目を回すキョーコに、記者は更に詰め寄る。
「昨日のデートはどうでしたか?」
「堂々と手を繋いでらっしゃいましたが、もう交際は長いんですか?!」
「?!?!?!?!」
キョーコは記者からの質問に真っ青に青褪めると、必死で否定した。
「ち、ちちちちちち違います!!光さんとはそんな関係じゃありません!!」
「またまた、そんなこと言われても騙されませんよ?あ、オフレコでしたか?だったらあんなに人目のつくとこでは手を繋いだりしたらいけませんよ。」
「ほ、本当に、本当に違うんです~~!!」
キョーコは逃げるように、また部屋に駆け込んで、慌ててテレビをつけた。
『LMEの季節は春でしょうか?!敦賀蓮、小柳芽依の熱愛。そして、ブリッジロック石橋光、タレント京子も堂々デートという話題でしばらくは持ちきりでしょうね!!あ、京子さんへのインタビュー映像が撮れたようです!!みてみましょう!!』
アナウンサーが興奮気味に言うと、先程しゃべったことが繰り返し流れていた。
必要ないだろうところはカットされ、光の好きなとこをあげるキョーコが映し出されていた。
「っ!!!!」
必要ない部分は音だけカットされ、真っ赤な顔で狼狽える様子のみが映し出される。
画面の前で真っ青な顔して固まるしかないキョーコ。
ーーーどどどどどどうしよう?!光さんに迷惑かけちゃった!!
キョーコが一人狼狽えていると、次は上機嫌な光が画面に現れた。
キョーコとの交際を聞かれて嬉しそうに照れてれと答える内容に、キョーコは絶句してしまった。
「いやぁ。参ったなぁ。実は、昨日が初デートなんですよ。まさかそんなとこをとられちゃうなんて…」
「えぇ?!初デートでしたか!!では交際は…?」
「えっと、交際はまだです。昨日は意思表示だけだったんで、ちゃんとお返事をしないと。」
「では、京子さんから申し込まれたと…」
「あ、はい!でも、俺もずっと京子ちゃ…京子さんのことを好きだったので、凄く嬉しかったです。」
「何て言われたんですか?」
「直接的な言葉じゃなくて、クッキーをもらったんですよ。これなんですけど、包み方も凄く可愛くて、中にハート型の…ほら。こんなクッキーが沢山入ってたんです。京子ちゃんの愛が手に入ったことが嬉しくて昨日は眠れませんでした!!」
光が嬉しそうに見せているのは、昨日キョーコが奏江の為に用意したクッキーだった。
昨日、食事のお礼として奏江に渡すことが出来なかったクッキーを光にあげたのだ。
キョーコはそれで思考が完全に止まってしまった。
しばらく呆然としていたキョーコだったが、心の中でもやもやした想いが膨らむ。
ーーーこんなの…敦賀さんに見られたくない…!!
一瞬そう思ったキョーコだが、すぐに首をふって淋しそうな顔になると、自嘲気味に笑った。
ーーーううん。見られたからって何だって言うんだろう…。敦賀さんには結婚秒読みの彼女さんがいるのに…。気にしてるのは、私だけなのよ。
キョーコはテレビを消してインターフォンの音を無視して部屋の中で膝を抱えて小さく丸まったのだった。
京子が携帯の電源を付けたのは夕方になってからだった。
事前に聞いていた社からの蓮のスケジュールで、丁度この時間、蓮が生放送の番組に出ることになっていたのを知っていたからだ。
勇気を振り絞って電源を入れると、五分もせずに着信がなった。
慌ててみると椹からで、キョーコは急いで通話ボタンを押した。
「最上さん?!?!最上さんか?!」
「あ、は、はい。最上です。」
「どういうことだね?何も聞いてなかったけど、光と付き合ってるのか?」
「い、いえ。違います。」
「でも、クッキーを渡したのは本当なんだろう?」
「は、はい!それはそうなんですが、でも、あれは…」
「いやぁ!めでたいじゃないか!!もしかしたらこれでラブミー部から卒業出来るかもしれんぞ!!君が光に好意を寄せていたとは全く気付かなかった!!なぁに、うちの社長は業界内でも愛に寛大なことで知れ渡ってるからな。スキャンダルに心配する必要はない。光も君のことが本気で好きになってたみたいだし、良かったじゃないか。しばらくは記者に付きまとわれて満足に光に会えん日が続くかもしれんが、それもちょっとの辛抱だ。愛に障害はつきものだからな!」
椹の声も嬉しそうに弾んでいる。さすがは愛の伝道師の社長が率いる事務所と言うべきか、スキャンダルに慣れているのだろう。
家を出る際の注意事項や行動について軽くアドバイスをくれた椹から、とにかく君が心配することは何もないから安心しなさいと言って電話は切られたのだった。
キョーコは電話を耳から外すことが出来ないまま、顔からは血の気が引き青褪めた状態で固まっていた。
本気で喜んでいる椹の声に、キョーコは誤解ですということも出来なかった。
それから日々はあっという間に過ぎて行く。
スキャンダルから三週間ほど経ってようやく、報道陣の目もキョーコの周りからは薄れてきた。
この三週間、ずっと付きまとわれて、キョーコは疲れきっていた。
一刻も早く光の誤解を解きたいキョーコだったが、この付き纏う報道陣の追跡の中で、光に会うことがどういう結果を招くかぐらいキョーコにもわかっていた。
会える時間は作れず、どう言ったら良いのかも分からず、時間ばかりが過ぎて行く。
そして、報道の熱もようやく引き始めた頃、蓮とキョーコはTV局の廊下でばったりと出くわしてしまった。
お互いに何か言いたげな目でしばらく見つめあっていたのだが、その目は蓮によって逸らされると、蓮は挨拶も何も言わずにキョーコの横をスッと通り過ぎた。
社がそんな蓮とキョーコを青い目で見比べるが、蓮の心情を思って、口元を結ぶと、蓮に習ってキョーコの横を通り過ぎたのだった。
心の中では、『キョーコちゃん、ごめん!!』と、叫びながら…。
キョーコは蓮と社の態度に、その場に根が生えたように立ち止まっていた。
久しぶりに見た蓮は酷く痩せていた。
肌のハリもなくなり、キラキラした笑顔が消え失せ、闇色のオーラがその背中から漂う。
「ご飯…」
キョーコはポツリと呟くと、蓮を振り返っていきなり叫んだ。
「ご飯食べてないんですかぁ?!?!」
ぶぁっと涙を流しながら叫ぶキョーコに、蓮と社が驚き振り返る。
「…え?」
「きょ、キョーコちゃん?」
キョーコは、蓮に近づき距離を詰めると、目をカッと見開いて蓮を見た。
「やつれた顔してます!!!!ウエストもマイナス1.5cm!!体重も落ちてるんじゃないですか?!どうして…。」
キョーコはそこで言葉を一瞬継ぐんで下を向いた。
「どうして、彼女は…作ってくれないんですか…?」
蓮の服の裾をちょんと摘まんで言う言葉に、蓮と社の時が止まる。
「私だったら…」
キョーコはそこまで言うと、ハッと我に返って、慌てて蓮から手を離すと、飛び退いて離れた。
真っ赤な顔で謝罪の言葉を口にする。
「す、すすすすすいません!!私ったら!!出過ぎた真似をいたしましたー!!!!今のは忘れて下さ~い!!」
キョーコが、離れた場所からペコペコと謝るのをしばらく呆然と見ていた蓮が、キュッと口元を引き締めて、ポツリと呟いた。
「私だったら…?私だったら…なに?」
蓮の感情の乗らない声に、キョーコは真っ赤になって首を振る。
「わ、忘れてください!!お願いします!!」
「最上さん。答えて…私だったら…何?」
蓮は何時の間にかキョーコとの距離を詰め、キョーコの片腕を捉えていた。
蓮に掴まれた腕が熱い。
「答えて…」
繰り返す蓮に、キョーコは観念して言葉を発した。
「私だったら…敦賀さんの体調のことを第一に考えて、毎日だってご飯作りたいのに…。って…。あの、ごめんなさ…っ?!」
キョーコは大それたことを言う自分の言葉に迷惑だと返されることを考えて謝罪しようとしていたのだが、それは、蓮のキスによって封じられてしまった。
突然塞がれた唇に、一瞬身体が強張ったが、胸は高鳴る。
訳の分からぬままキョーコは蓮とのキスに酔わされた。
「ん…っ。」
キョーコの切なげな声が響いた時…
ーーーカコーン
何かが落ちる音が廊下に響き、キョーコは我に返った。
抗議の為、何時の間にか抱きしめられていた蓮の胸元の服を軽く引っ張ると、蓮の唇がキョーコから離れる。
ほうっと息を吐いて蓮をみれば、蓮は今だにキョーコと鼻先が当たるくらいの至近距離におり、互いに引き寄せられるように見つめあった。
蓮と目が合うと、キョーコの心臓がどくんと大きな音を立て、そして激しく動き始めた。
真っ赤になったキョーコの頬を蓮の暖かい掌が包み込む。
蓮の指が優しくキョーコの頬を撫でると、また互いの唇が近付いた。
キョーコの目も自然と閉じ頭を傾ける。
しかし、重なる直前、キョーコの耳にショックを受けた男の声が聞こえた。
「京、子…ちゃん…?」
その声にビクリと肩を揺らして振り返ると、そこには顔を真っ青に青褪めた光が、絶望を耐えるような歪んだ顔で、キョーコを見ていた。
「ひ…かる…さん…い、今の…見て…」
キョーコはカァッと一瞬にして顔を赤らめた。
「あ、あの、これは…その…」
キョーコが光に気を取られたことで、蓮は光を眼光鋭く睨み付ける。その眼光には深い嫉妬が入り混じっていた。
キョーコの心を惑わす男…。
蓮はテレビでのキョーコと光のインタビューをバッチリと見ていた。
キョーコが好きなのはあの男だと思うと、憎くて憎くて堪らない。
蓮がもらったクッキーの中にハート型を見つけた時には、天国にでも行った気分になれるくらい幸せを感じていたのに、光がもらったとテレビで見せたクッキーは、他とは違うラッピングに、その中から沢山出てくるハート型のクッキーに、蓮は地獄に突き落とされた気分となり、心が一気に冷えたのだった。
あの男の為に作ったクッキーが、誤って俺の分に混じってたのか?
蓮はそう思わずにはいれなかった。
でも、先ほどのキスはキョーコも続きを望んでいたはずだ。
ーーーあの男さえ、現れなければ…。
あきらかに他と違うクッキーをもらった光に、キョーコを渡したくなくて、蓮は光に見せつけるようにキョーコを強く抱き締めた。
「ちょ、ちょっと敦賀さん!!」
しかし、キョーコの身体を捉えても、心はあの男の元にあるのかと思うと、蓮はその身体を掴む手さえ、虚しく感じてしまった。
「ごめん…。今のは…忘れてくれていいから。」
蓮は、キョーコに向かってそうボソリと呟くと、力をなくした腕をだらりと下ろして、踵を返した。
「つ、敦賀…さん?」
「お、おい!!蓮!!」
キョーコは一瞬だけ見えた蓮の傷付いた表情に、胸が締め付けられる。
そのまま立ち去る蓮の背中が見えなくなるまで、キョーコはただその場に立ち尽くしていた。
蓮とキスをしてる時に聞こえた物を落とす音は、光が持っていた空き缶を落とした音だったようで、光の足元に転がっていた。
(続く)
*****
のおおおぉ!!
段々わからなくなってきました!!
これからこの二人、どうするつもりなの?!私…!!
さて、どうなるかは私にも全くわかりません!!
次回をお楽しみに♪
☆めいめいさんからリクエスト頂きました!!☆
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自力で恋愛機能が回復した状態のキョコちゃんが読みたくて…》
さてさて、どうなるでしょうか??
お楽しみ下さいませ♪
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ふり積もる雪と想い 3
朝、キョーコは気持ちが沈んでおり、布団から頭だけを出してカタツムリのような体勢でぼうっとしていた。
思い出すのは、昨日の蓮の笑顔と、テレビで流れる報道ばかり。
目の前にある携帯は、昨夜から電源を落としていた。
何故なら光と入ったレストランでメニューを注文しようとした時から、ひっきりなしに着信やメールの受信で携帯が震えていたからだ。
蓮からの電話も、蓮からのメールも今は見たくない。
電話に出ないキョーコに心配して光は声をかけたのだが、5回目の着信が来た時にとうとう電源を落としてしまったのだ。
光はそれを見て更なる勘違いをしていたのだが、それはキョーコの知らないところだった。
携帯の電源を落としてる為、仕事の話があったらいけないから事務所に聞きに行かないと…と考えたキョーコはしぶしぶ布団から出た。
カインとセツカの生活から、忙しくなり始めたキョーコは、下宿先のだるま屋を出て、近所のマンションで一人暮らしを始めていた。
支度を済ませて部屋を出ると、訳の分からぬまま取材陣に囲まれた。
「え?!な、なに?!」
「京子さん!!おはようございます!!光さんとはどのようなご関係で?」
「へ?!あの、同じ事務所で…」
「あぁ、すみません。そういう意味じゃなくて、光さんのどんなところが好きですか?」
「え?あ、そ、そうですね。優しくて明るくて、親しみのある笑顔でいつもいるところ…でしょうか?」
「交際のきっかけは?!」
「いつから交際されてるんですか?!」
「……へ?!こ、コウサイ??」
途端に真っ赤になって目を回すキョーコに、記者は更に詰め寄る。
「昨日のデートはどうでしたか?」
「堂々と手を繋いでらっしゃいましたが、もう交際は長いんですか?!」
「?!?!?!?!」
キョーコは記者からの質問に真っ青に青褪めると、必死で否定した。
「ち、ちちちちちち違います!!光さんとはそんな関係じゃありません!!」
「またまた、そんなこと言われても騙されませんよ?あ、オフレコでしたか?だったらあんなに人目のつくとこでは手を繋いだりしたらいけませんよ。」
「ほ、本当に、本当に違うんです~~!!」
キョーコは逃げるように、また部屋に駆け込んで、慌ててテレビをつけた。
『LMEの季節は春でしょうか?!敦賀蓮、小柳芽依の熱愛。そして、ブリッジロック石橋光、タレント京子も堂々デートという話題でしばらくは持ちきりでしょうね!!あ、京子さんへのインタビュー映像が撮れたようです!!みてみましょう!!』
アナウンサーが興奮気味に言うと、先程しゃべったことが繰り返し流れていた。
必要ないだろうところはカットされ、光の好きなとこをあげるキョーコが映し出されていた。
「っ!!!!」
必要ない部分は音だけカットされ、真っ赤な顔で狼狽える様子のみが映し出される。
画面の前で真っ青な顔して固まるしかないキョーコ。
ーーーどどどどどどうしよう?!光さんに迷惑かけちゃった!!
キョーコが一人狼狽えていると、次は上機嫌な光が画面に現れた。
キョーコとの交際を聞かれて嬉しそうに照れてれと答える内容に、キョーコは絶句してしまった。
「いやぁ。参ったなぁ。実は、昨日が初デートなんですよ。まさかそんなとこをとられちゃうなんて…」
「えぇ?!初デートでしたか!!では交際は…?」
「えっと、交際はまだです。昨日は意思表示だけだったんで、ちゃんとお返事をしないと。」
「では、京子さんから申し込まれたと…」
「あ、はい!でも、俺もずっと京子ちゃ…京子さんのことを好きだったので、凄く嬉しかったです。」
「何て言われたんですか?」
「直接的な言葉じゃなくて、クッキーをもらったんですよ。これなんですけど、包み方も凄く可愛くて、中にハート型の…ほら。こんなクッキーが沢山入ってたんです。京子ちゃんの愛が手に入ったことが嬉しくて昨日は眠れませんでした!!」
光が嬉しそうに見せているのは、昨日キョーコが奏江の為に用意したクッキーだった。
昨日、食事のお礼として奏江に渡すことが出来なかったクッキーを光にあげたのだ。
キョーコはそれで思考が完全に止まってしまった。
しばらく呆然としていたキョーコだったが、心の中でもやもやした想いが膨らむ。
ーーーこんなの…敦賀さんに見られたくない…!!
一瞬そう思ったキョーコだが、すぐに首をふって淋しそうな顔になると、自嘲気味に笑った。
ーーーううん。見られたからって何だって言うんだろう…。敦賀さんには結婚秒読みの彼女さんがいるのに…。気にしてるのは、私だけなのよ。
キョーコはテレビを消してインターフォンの音を無視して部屋の中で膝を抱えて小さく丸まったのだった。
京子が携帯の電源を付けたのは夕方になってからだった。
事前に聞いていた社からの蓮のスケジュールで、丁度この時間、蓮が生放送の番組に出ることになっていたのを知っていたからだ。
勇気を振り絞って電源を入れると、五分もせずに着信がなった。
慌ててみると椹からで、キョーコは急いで通話ボタンを押した。
「最上さん?!?!最上さんか?!」
「あ、は、はい。最上です。」
「どういうことだね?何も聞いてなかったけど、光と付き合ってるのか?」
「い、いえ。違います。」
「でも、クッキーを渡したのは本当なんだろう?」
「は、はい!それはそうなんですが、でも、あれは…」
「いやぁ!めでたいじゃないか!!もしかしたらこれでラブミー部から卒業出来るかもしれんぞ!!君が光に好意を寄せていたとは全く気付かなかった!!なぁに、うちの社長は業界内でも愛に寛大なことで知れ渡ってるからな。スキャンダルに心配する必要はない。光も君のことが本気で好きになってたみたいだし、良かったじゃないか。しばらくは記者に付きまとわれて満足に光に会えん日が続くかもしれんが、それもちょっとの辛抱だ。愛に障害はつきものだからな!」
椹の声も嬉しそうに弾んでいる。さすがは愛の伝道師の社長が率いる事務所と言うべきか、スキャンダルに慣れているのだろう。
家を出る際の注意事項や行動について軽くアドバイスをくれた椹から、とにかく君が心配することは何もないから安心しなさいと言って電話は切られたのだった。
キョーコは電話を耳から外すことが出来ないまま、顔からは血の気が引き青褪めた状態で固まっていた。
本気で喜んでいる椹の声に、キョーコは誤解ですということも出来なかった。
それから日々はあっという間に過ぎて行く。
スキャンダルから三週間ほど経ってようやく、報道陣の目もキョーコの周りからは薄れてきた。
この三週間、ずっと付きまとわれて、キョーコは疲れきっていた。
一刻も早く光の誤解を解きたいキョーコだったが、この付き纏う報道陣の追跡の中で、光に会うことがどういう結果を招くかぐらいキョーコにもわかっていた。
会える時間は作れず、どう言ったら良いのかも分からず、時間ばかりが過ぎて行く。
そして、報道の熱もようやく引き始めた頃、蓮とキョーコはTV局の廊下でばったりと出くわしてしまった。
お互いに何か言いたげな目でしばらく見つめあっていたのだが、その目は蓮によって逸らされると、蓮は挨拶も何も言わずにキョーコの横をスッと通り過ぎた。
社がそんな蓮とキョーコを青い目で見比べるが、蓮の心情を思って、口元を結ぶと、蓮に習ってキョーコの横を通り過ぎたのだった。
心の中では、『キョーコちゃん、ごめん!!』と、叫びながら…。
キョーコは蓮と社の態度に、その場に根が生えたように立ち止まっていた。
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肌のハリもなくなり、キラキラした笑顔が消え失せ、闇色のオーラがその背中から漂う。
「ご飯…」
キョーコはポツリと呟くと、蓮を振り返っていきなり叫んだ。
「ご飯食べてないんですかぁ?!?!」
ぶぁっと涙を流しながら叫ぶキョーコに、蓮と社が驚き振り返る。
「…え?」
「きょ、キョーコちゃん?」
キョーコは、蓮に近づき距離を詰めると、目をカッと見開いて蓮を見た。
「やつれた顔してます!!!!ウエストもマイナス1.5cm!!体重も落ちてるんじゃないですか?!どうして…。」
キョーコはそこで言葉を一瞬継ぐんで下を向いた。
「どうして、彼女は…作ってくれないんですか…?」
蓮の服の裾をちょんと摘まんで言う言葉に、蓮と社の時が止まる。
「私だったら…」
キョーコはそこまで言うと、ハッと我に返って、慌てて蓮から手を離すと、飛び退いて離れた。
真っ赤な顔で謝罪の言葉を口にする。
「す、すすすすすいません!!私ったら!!出過ぎた真似をいたしましたー!!!!今のは忘れて下さ~い!!」
キョーコが、離れた場所からペコペコと謝るのをしばらく呆然と見ていた蓮が、キュッと口元を引き締めて、ポツリと呟いた。
「私だったら…?私だったら…なに?」
蓮の感情の乗らない声に、キョーコは真っ赤になって首を振る。
「わ、忘れてください!!お願いします!!」
「最上さん。答えて…私だったら…何?」
蓮は何時の間にかキョーコとの距離を詰め、キョーコの片腕を捉えていた。
蓮に掴まれた腕が熱い。
「答えて…」
繰り返す蓮に、キョーコは観念して言葉を発した。
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キョーコは大それたことを言う自分の言葉に迷惑だと返されることを考えて謝罪しようとしていたのだが、それは、蓮のキスによって封じられてしまった。
突然塞がれた唇に、一瞬身体が強張ったが、胸は高鳴る。
訳の分からぬままキョーコは蓮とのキスに酔わされた。
「ん…っ。」
キョーコの切なげな声が響いた時…
ーーーカコーン
何かが落ちる音が廊下に響き、キョーコは我に返った。
抗議の為、何時の間にか抱きしめられていた蓮の胸元の服を軽く引っ張ると、蓮の唇がキョーコから離れる。
ほうっと息を吐いて蓮をみれば、蓮は今だにキョーコと鼻先が当たるくらいの至近距離におり、互いに引き寄せられるように見つめあった。
蓮と目が合うと、キョーコの心臓がどくんと大きな音を立て、そして激しく動き始めた。
真っ赤になったキョーコの頬を蓮の暖かい掌が包み込む。
蓮の指が優しくキョーコの頬を撫でると、また互いの唇が近付いた。
キョーコの目も自然と閉じ頭を傾ける。
しかし、重なる直前、キョーコの耳にショックを受けた男の声が聞こえた。
「京、子…ちゃん…?」
その声にビクリと肩を揺らして振り返ると、そこには顔を真っ青に青褪めた光が、絶望を耐えるような歪んだ顔で、キョーコを見ていた。
「ひ…かる…さん…い、今の…見て…」
キョーコはカァッと一瞬にして顔を赤らめた。
「あ、あの、これは…その…」
キョーコが光に気を取られたことで、蓮は光を眼光鋭く睨み付ける。その眼光には深い嫉妬が入り混じっていた。
キョーコの心を惑わす男…。
蓮はテレビでのキョーコと光のインタビューをバッチリと見ていた。
キョーコが好きなのはあの男だと思うと、憎くて憎くて堪らない。
蓮がもらったクッキーの中にハート型を見つけた時には、天国にでも行った気分になれるくらい幸せを感じていたのに、光がもらったとテレビで見せたクッキーは、他とは違うラッピングに、その中から沢山出てくるハート型のクッキーに、蓮は地獄に突き落とされた気分となり、心が一気に冷えたのだった。
あの男の為に作ったクッキーが、誤って俺の分に混じってたのか?
蓮はそう思わずにはいれなかった。
でも、先ほどのキスはキョーコも続きを望んでいたはずだ。
ーーーあの男さえ、現れなければ…。
あきらかに他と違うクッキーをもらった光に、キョーコを渡したくなくて、蓮は光に見せつけるようにキョーコを強く抱き締めた。
「ちょ、ちょっと敦賀さん!!」
しかし、キョーコの身体を捉えても、心はあの男の元にあるのかと思うと、蓮はその身体を掴む手さえ、虚しく感じてしまった。
「ごめん…。今のは…忘れてくれていいから。」
蓮は、キョーコに向かってそうボソリと呟くと、力をなくした腕をだらりと下ろして、踵を返した。
「つ、敦賀…さん?」
「お、おい!!蓮!!」
キョーコは一瞬だけ見えた蓮の傷付いた表情に、胸が締め付けられる。
そのまま立ち去る蓮の背中が見えなくなるまで、キョーコはただその場に立ち尽くしていた。
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さて、どうなるかは私にも全くわかりません!!
次回をお楽しみに♪