とりあえずできたとこまでUPします!!


アメンバー様200人達成!&ブログ3ヶ月記念大感謝祭☆


雪兎さんよりリクエスト頂きました!!
こんな感じになって来てますが如何でしょうか??雪兎さーん♪

タイトル勝手に変えちゃいましたー!



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春雪の贈り物 1



漸く暖かさが戻ってきて、麗らかな春がやってくるかと、皆が油断した頃、出戻り寒波で、深々と、雪が降り積もっておりました。

季候の変わり目は、温度差の変動が著しくそれに伴い体調を崩す人も多くなりました。

そして、芸能界一の人気を誇るこの男も例外ではなかったのです。



ーーーフラフラ…する…。


一昨日、川に飛び込むシーンを撮ってる時は何ともなかったのに、昨日の夜ぐらいから調子が良くない。
今日は朝から全身がだるく、珍しく布団から出るのに手間取ってしまった。

喉もイガイガして気持ちが悪い。
水分は欲しいような気もするが、胃が気持ち悪いのであまり何かを口にする気も起きない。


何だか寒気がするな…と思って外を見たら雪が降っており納得した。

ーーーどおりで寒いはずだ…。

雪が降ってたら寒いのは当たり前だろう。寒くない方がおかしいくらいだ。

蓮の中には風邪を引くという概念がない。

その為、風邪の前兆を何も理解できていなかったのだ。

とてもわかりやすい風邪の前兆を、雪のせいだと決め付け、何も手を打たずに蓮は撮影現場へと向かったのだった。



その日の夕方、某テレビ局のとあるスタジオで、音楽番組のリハーサル中の、ショータロー。

同じ局内の別のスタジオでは、ブリッジロックの面々と一緒に撮影中のキョーコがいるらしいということが、スタッフの会話から漏れ聞こえてきた。


次の休憩中にキョーコの元へと行くことを心に決めたショータローは、さっさと終わらせて、キョーコがいるというスタジオに向かった。



同時刻、キョーコは、全ての撮影が終わって、スタッフに挨拶を済ませ、後は帰るだけという状態だったので、鞄を片手に楽屋の外へと出た。


キョーコが楽屋から出てきたのを見た光は、大きく深呼吸をして心臓を落ち着かせた。

先程、ブリッジロックの二人から、今度こそ、キョーコをデートに誘うように言われて楽屋の側まで来ていたのだ。


光は、雄生と慎一に先程背中を押してもらったことを思い出し、大きく深呼吸をすると、意を決してキョーコに呼びかけた。


「京子ちゃ…」
「おい!キョーコ!!」

光がキョーコに、呼び掛けた声に被るように発せられた声は、光のすぐ後ろから聞こえた。


二つの声が聞こえた方をキョーコが振り返る。

心底嫌そうな顔を見せるキョーコに、光は一瞬たじろいだ。

「あぁ?何だよてめぇも、キョーコに用事があんのか?」

キョーコと何の躊躇いもなく彼女を呼び捨てにする男にムッとして振り返ると、そこにいたのは今人気沸騰中の歌手不破尚が立っており、光は心底驚いた。

「…え?…不破…尚??」

びっくりとして目を見開く光をみて、ショータローは鼻で軽く笑った。

「あんた邪魔。俺は時間ねぇんだから、さっさとそこどけよ。」

「なっ!!俺は京子ちゃんに用があって…」

「はぁ?!キョーコはお前になんて用はねぇよ!!俺が会いに来てやってんだからな!!お前は引っ込んでろ!!」

「なっ!君こそ引っ込んでろ!キョーコちゃんに、失礼だろ!!」

「はぁ?!キョーコは俺のものなんだから、何て言おうが俺の勝手だろ?!」

「君の…もの?!」

光がショータローの言葉にショックを受けたところで、キョーコがショータローに怒鳴りつけた。

「ちょっと!!馬鹿ショー!!何勝手なこと言ってんのよ!!私は誰のものでもないわよ!!」

「うるせーな!てめぇは引っ込んでろ!邪魔がいちゃゆっくり話せねぇだろ?!」

「なっ!京子ちゃんに、そんな口利くなよ!!彼女に失礼だろ?!」


光とバカショーの言い合いは更にヒートUPし、キョーコはブリッジロックに迷惑がかかるのではないかと、ハラハラして気が気じゃなかった。

そんな時、キョーコの携帯電話が突然震え出した。
慌てて携帯の画面を確認したキョーコは、その電話の主に目を見開いた。

アワアワと電源を入れ、耳に当てる。

「しゃ、社長?!どうされたんですか?!」

そんなキョーコの言葉に、尚と光が言い合いを辞め、キョーコの様子を伺う。

「えええぇ?!ほ、本当ですか?!…それで…あ、はい!…はい。ええ…。いえ、そんな!!私は大丈夫です!!え?あ、…はい!!ではすぐに…はい。わかりました。お伺い致します!!ええ、ありがとうございます!!では、後ほど…。」

キョーコは電話にも関わらず、ぺこりと礼儀正しく頭を下げると、電話を切った。

「京子ちゃん、社長…何だって?」

「あ…の…。す、すみません!!社長に呼ばれたので直ぐに行かないとっ!!」

キョーコは顔面蒼白という表情で慌てて、光に頭を下げた。

そのキョーコの尋常じゃない様子に、ショータローも、光も仕事で何か重要なトラブルでもあったのかと思い、見送ることしか出来なかった。

キョーコを誘えなかったことに肩を落とす光を一瞥すると、ふんっと鼻を鳴らして、ショータローは不機嫌な様子で何も言わずにその場を去った。



キョーコは光とショータローと別れた後、大急ぎで所属する芸能事務所へと向かった。

普段は自転車で通っているキョーコだが、今日は雪の為徒歩で来ていた。
キョーコは全速力で走りながら先程のローリィとの電話を思い出す。

その内容は、蓮が午後一番の撮影終了後に高熱で倒れてしまったというものだった。

社はとりあえず蓮を病院に連れて行きはしたが、看病など今までしたことがないのでどうしたらいいのかわからずに、社長へとSOSを求めて来たのだと言う。


ーーー敦賀さんっ!!敦賀さん!!敦賀さん!!敦賀さん!!敦賀さん!!!!

キョーコは心配で堪らず頭の中で何度も何度も蓮の名前を呼んだ。


膨らみ始めた蓮への恋心…否定して否定して、何度も何度も鍵をかけたはずなのに、その鍵は平気で壊されてしまう。

もう認めてしまうしかないこの心に住む愛しいあの人が、倒れたと聞いて平常心でいられるはずなどなかった。

雪の積もった道を途中滑りそうになりながらもキョーコはひたすら走る。

そんな時に不意にキョーコの耳にクラクションの音が届いた。

慌てて振り返ったキョーコの目に飛び込んで来たのは、キラキラと光り輝く高級車。

美しく磨き上げられた車体には走って来た時に着いたであろう雪がついていながらも、周りの雪景色に浮き上がる様にかがやき、妙に幻想的だった。

その車から怪しげな衣装に身を包んだ男が現れ、キョーコはたじろいだが、その男はキョーコへと恭しく頭を下げた。

「主のローリィ宝田様より、最上様をお送りするよう仰せつかりました。」

その言葉を聞いて、ぺこりと頭を下げたその人が、カインヒール氏を初めて迎えに行った時に運転手をしていてくれた方だと言うことがわかり、キョーコは安堵のため息をついた。

相変わらず何処ぞの民族衣装を着こなしている姿は高級車とは不釣り合いだが、キョーコはそうも言ってられないと、車に促されるままに乗り込んだ。

「最上様、旦那様より鍵を預かっております。お確かめ下さい。」

そう言って差し出された箱を取り開けると、蓮の家のカードキーが入っていた。

「ありがとうございます!!あ、あと、伺う前にスーパーに寄りたいので、近くのスーパーで下ろして頂けたら助かります。」

「かしこまりました。」

キョーコから指定されたスーパーへキョーコを降ろすと、ローリィの高級車は渋々去って行った。

待とうとする運転手を務めてくれた男に、こんな普通のスーパーにこんな高級車がいたら目立つからと、キョーコは追い返したのだった。


蓮の為に、栄養をしっかり取れる食材を選び、献立を頭で立てながら買い物をしていく。

ローリィの電話で、蓮が一週間ゆっくり休めるように、休暇を与えたとも言っていた。
蓮と言えば、分刻みで仕事をこなすLMEの看板俳優だ。
そんな蓮に一週間も休みを与えるとは、余程悪いに違いない。

出来れば蓮が完全に回復するまでは看病したいと考えたキョーコは、二、三日分の食料となりそうな量を購入すると、大きくて重そうな買い物袋を手に下げて、蓮のいるマンションへといそいだ。

白い雪の中に、キョーコの足跡が残った。




もしかしたらもうベッドで休んでいるかもしれないと、キョーコは預かったスペアキーで、こっそりとドアを開けた。

いけないことをしているようで、キョーコの心臓はドキドキと脈打つ。

「お、お邪魔しまーす。」

小声で囁くように言いながら、
キョーコは玄関に足を踏み入れた。

玄関に無造作に脱がれて片方だけが倒れている靴をみて、キョーコの心臓が嫌な音を立てる。
いつもキチンとしている蓮は、靴を脱ぎ散らかすということはしない。
いつもはキチンと下駄箱に仕舞われているのだ。

「敦賀…さん?」

控え目に呼んでみても当然の如く返事はない。

キョーコは深呼吸して心を落ち着けると、蓮の靴をキチンと仕舞い、まずは食材を冷蔵庫に入れようと、急いでキッチンに向かった。


(続く)


*****



とりあえず、ここまで!!

蓮様登場はまさかの次回で♪