えいぷりるふーる


それは、ほんの些細な嘘。
ちょっとした出来心だったのだ。
それがまさかこんな結果を生むことになるなんて想いもしなかった。


「最上さん、俺今度、結婚することになったんだ。」

キョーコの目の前で、蓮がニコニコと笑いながらいうと、キョーコはその目を大きく見開いた。

「え…?」

「驚いた?実は…」

蓮は悪戯が成功した子供のように悪戯っぽく笑うと、種明かしをしようとした。

だけど…。

「そう…なんですか!おめでとうございます!!敦賀さん!!」

大きな目をキラキラと輝かせて、心底嬉しそうな笑顔を浮かべるキョーコに、蓮は言葉をなくす。

はしゃぐキョーコは本当に嬉しそうで、嬉し涙が出てるのか、笑顔のまま指で目元を拭っていた。

「やだ!もう、本当に嬉しい!めでたいじゃないですか!!いつの間にそんなお相手がいらっしゃったんですか?早く言ってくだされば 良かったのにっ!!あ、そうだ!!お祝い…何がいいですか?」

キョーコの無邪気な屈託のない笑顔を見て、蓮の心は凹凹にへこんだ。

「もが…」

「あ、じゃあ私がこの家に来て食事を作るなんてことももう必要もありませんよね。誤解されて二人の関係がこじれたらいけませんし、これからはその奥さんに作ってもらって下さいね。」

その言葉に蓮は焦ったようにキョーコの腕を掴んだ。

「ちょっと、待ってくれ最上さん!!」

「な、何ですか!敦賀さん、離して下さい!!彼女さんに誤解されちゃいます!!」

「だから、待って!違うんだ!!ちゃんと話を聞いて!!」

「何ですか!!ちゃんと聞いてますよ!!結婚するんですよね!!そうですよね!!わかりましたから、私はもう用無しなんですよね!そっとして置いて下さい!!」

蓮に腕を掴まれて動転したのか、キョーコはずっと堪えていた胸の苦しさを抑えられず、思わず心の内を怒りと共に吐き出してしまった。

「最上さん…?」

蓮はさっきまで笑顔だったはずのキョーコが突然涙を流し出したので、狼狽えた。
オロオロする蓮をしりめに、キョーコが怒りに任せて蓮を怒鳴りつける。

「酷いです!!あんまりです!!敦賀さん、私の気持ちを知ってるくせにっ…結婚だなんて…」

「も、最上さん、落ち着いて…!」

「ずっと…好きだったのに…!敦賀さんのことが本当に好きになってたのに…。」

「も、最上さん?!」

キョーコからの告白に、蓮は一気に気分が高まる。

「ずっと好きだったのに!!結婚されるなんて…」

「ごめん!!結婚なんて…しないんだ!!嘘なんだ!!だって、今日はエイプリルフールだろう?」

「エイ…プリルフール…?」

キョーコは、蓮の腕の中でピタリと動きを止めた。
キョーコの涙もピタリと止まる。


「え…じゃあ、嘘…?敦賀さん、私に…嘘…ついたんですか?」

「う、うん。本当にゴメンね。俺が本当に好きなのは最上さんだけだよ?」

「それも、嘘…なんですか?」

「?!ち、違うから!!ちゃんとした俺の正真正銘の気持ちだから…!!!!だから…。」

もう来ないだなんていわないで!という蓮の言葉は、キョーコにどんっ突き飛ばされたことで遮られた。

「最上さん…?」

「苦しかったのに…切なくてどうにかなりそうだったのに…!!私のさっき言った言葉も嘘です!!聞かなかったことにして下さい!!」

そう言って、キョーコは真っ赤な顔で怒ると駆け出した。

慌ててそれを追いかける蓮。

「最上さんっ!!」

グイッと腕を引いて、強引にキョーコの身体を抱き込むと、キョーコの肩が震えていた。

「最上さん…ごめん。許して…自分の願望を叶うと思って口にすれば、それが叶うって聞いたんだ。エイプリルフールは堂々とそんな願望を口に出来る日だからって…。だから、最上さんと結婚する未来を思い描いて言ったことなんだよ。」

キョーコの温もりを堪能するように蓮が抱き締めると、キョーコがぽそりと言った。

「私…妊娠したんです…。」

「……………え?」

「今、赤ちゃんが、お腹にいるんです。」

「………う…そ…だろ?」

蓮は鈍器で思いっきり叩かれたような物凄い衝撃を頭に受け、ショックで固まった。

喉がカラカラで言葉が出てこない。

一体誰の?と、思うがそれを聞くことさえ怖くて出来なかった。

力をなくした蓮の腕からキョーコがスルリと抜け出す。

蓮は顔面蒼白な顔でキョーコを力なく呆然と見つめていた。


「え…?あの、敦賀さん?」

一瞬にして此の世の終わりでもみたような絶望的な顔で固まってしまった蓮に、キョーコは驚いて呼びかけたが、その目はキョーコをじっと見つめ、そしてそろそろとキョーコのお腹に視線が動いた。

「誰の…?」

ようやく絞り出した声も絶望感丸出しで、敦賀蓮からはかけ離れたイメージを持つ声になっていた。

そんな蓮を見て、キョーコは口を閉じたまま顔を強張らせてふるふると震え始めた。

蓮はそんなキョーコをただ見つめつづけている。

とうとう蓮の絶望的な表情に耐えきれなくなったキョーコは吹き出してしまった。

「もっ、もっダメ…!!ぷぷー!!!!」

そう言って笑い始めたキョーコを感情のなくなった捨てられた子犬のような目で見つめ続ける蓮。

「もう!敦賀さんが言ったんじゃないですか!!自分の願望を叶うと思って口にすれば、それが叶うって!エイプリルフールはそんな願望を堂々と口に出来る日だって…。」

「それって…」

蓮の目に少しだけ光は戻ったものの、まだ不安の色は消えていない。

「結婚するなら、二人くらい子供が欲しいかな?って…」

えへへ。と、笑うキョーコに、蓮は一気に浮上する。

「最上さん…っ!!」

「敦賀さん、ずっと我慢させてごめんなさい。あの、モー子さんからは付き合い出して半年も経つのにキス止まりなんて、あり得ないって言われてたんです。でも、やっぱり怖くて…いつか、捨てられるんじゃないかって思ってたから。」

「捨てたりなんてしないよ。絶対にっ!!俺を信じて…?」


「はい。だから…今日は私を敦賀さんに差し上げますね?」

にっこりと笑ったキョーコに、蓮が固まる。

「ほ、本当に?」

恐る恐る聞く蓮に、キョーコは満面の笑みで答える。

「もちろん、嘘ですよ!」

「え…?も、最上さん?」

「私、怒ってるんですよ!結婚だなんて嘘ついた敦賀さんになんてもう嫌いです!!」

プイッと顔を背けながらも、蓮の顔をチラリと見ると、蓮がシュンとした子犬の顔でズブズブと沈んでいった。

しっかり反省の色を見せる蓮をみてしまい、キョーコは困ったようにクスクスと笑うと、蓮の頬にキスをした。

「もう、敦賀さん。元気だして下さい。じゃないと本当にあげませんよ?」

「え?」

「敦賀さん、もうこんな嘘は付かないって約束して下さいね?」

「うん。つかない。」

素直に頷く蓮に、キョーコはふふっと微笑む。

「じゃあ、許してあげます。」

キョーコは蓮の顔を覗き込むようにして、蓮の首に腕を回した。蓮はそんなキョーコをぎゅうっと力一杯抱き締める。

「絶対に離さないから、覚悟してね?」

「はい。私も離しませんよ?」

キョーコも蓮に抱き着くと、二人は甘い口づけを交わした。

片思い数年、付き合い始めて半年になるこの二人は、二人のペースでゆっくりと愛を育んで行く。

本気とも嘘とも取れる高い演技力を持つ二人は、互いに互いが振り回されながらも、確実に愛を育んで行くのだった。

「ねぇ、最上さん。桜が咲いたら花見に行こうね。」

「そしたら私、敦賀さんの為にお弁当作りますね。」

和やかな二人な時間、幸せな二人の会話。

そんな恋人たちのエイプリルフールの夜は、途中危ういところはあったが、なんとか丸く収まったのであった。

そして、数年後、蓮のあの時着いた嘘と、キョーコの着いた嘘が実現することになるのだが、それはもう少しだけ先の話…。


END


*****


何のこっちゃ?なお話になってしまいましたー!!(笑)

折角なのでエイプリルフールにちなんだ新しいお話書こうと思って書いたのですが意味不明なお話に…笑

とりあえず付き合ってても、中々距離が縮まらず、キョーコの気持ちを確かめたくて嘘を着いてしまった蓮様のお話です(笑)

途中から二人は付き合ってたのね?ってのがわかるお話にしたかったのですが…ちゃんとなってる??

ま、とりあえずこんなんでも出来たからUPしちゃいましたー♪

フリーにしようかと思ってたけど、これは流石にいらないよね??(笑)

適当に読み流して下さいませ~♪


失礼致しました~!!