気分転換に短編です!!
風月ワールドをお楽しみ下さいませ♪
*****
それは数週間前に付かれた小さな嘘のはずだった。
その嘘は真実の始まり
「あの!俺、本当に京子さんのことが好きになったんです!俺と付き合って下さい!」
一目の多いTV局の廊下で突然大声で告白されて、キョーコは固まってしまった。
頭を下げて手を差し出して待っている目の前の男にキョーコはオロオロするしかなかった。
「えっと、あのっ、と、とりあえず顔を上げて下さい。」
キョーコがそう声をかけても、目の前の男は動かない。
こんな公衆の面前で恥をかかせるわけにはいかないと、キョーコはオロオロと言葉を探した。
そんな時に聞こえたのが彼の声だったのだ。
「悪いな。彼女は俺と付き合ってるんだよ。」
突然現れた人物が突然放った一言は、この場にいる人達を混乱の渦に巻き込むには充分な破壊力があった。
「「「「え?!えええええええええええええ?!」」」」
キョーコの大絶叫も多くの女性陣の悲鳴によって掻き消されてしまった。
でも、そんな言葉を発した目の前の人物は飄々としながら、キョーコの腰に腕を回す。
「さぁ、京子。行こうか…じゃないと次の現場に遅れてしまうよ?」
驚くキョーコが、声の主である尊敬する大先輩、抱かれたい男No.1の敦賀蓮を見上げると、蓮はイタズラっぽくキョーコにウインクをして見せた。
それでやっとキョーコは気付いたのだ。
ーー今日が何の日かということに…。
そんな蓮に乗っかる様にふわりと微笑んだキョーコは、蓮の胸に頭を預けて演技に入った。
「そうね。蓮…行きましょうか。」
艶やかに微笑むキョーコに、一瞬だけ目を奪われる蓮。
キョーコを抱く腕に少しだけ力を込めると、キョーコのコメカミにキスを落とした。
驚きで目を見開いたキョーコだったが、蓮の挑発するような瞳に出会い、負けん気に火がつくと、くすくすと楽しそうに笑った。
「人前ではしないって約束でしょ?」
妙に大人びたその視線に、テレビ局中の視線が集まる。
「君が…可愛過ぎるから行けないんだよ?」
蓮がキョーコの顎に手をかけて顔を寄せて囁くが、キョーコは何かのスイッチが入ったのか、内心のバクバクを上手く隠して全く動じずに答える。
「いつも、そればっかり。もうっ、早くいくわよ。じゃないと本当に遅れちゃう!」
「はいはい。俺の可愛いお姫様。」
全く動じずに答えた彼女に苦笑を漏らして蓮が従い、2人仲良くその場を後にする。ぽかんと2人の姿を見つめる人達に、蓮もキョーコも心の中で笑みを零すと。
2人が去ったのを見送ると瞬く間に廊下にどよめきが広がった。
「敦賀蓮と、京子が?!」
「うそー!!」
「でもあんなに無邪気な蓮の笑顔!!ダークムーン以来だわっ!!」
「ほんと!嘉月が美月に見せてた笑顔よね?!」
「いやーん!可愛い!!」
2人でいる時の蓮の無邪気な顔にその場にいたものの京子への不満は掻き消えていた。
2人はテレビ局の中の人気のない影へと隠れるように移動すると、蓮はイタズラが成功した子供の様な顔で、キョーコに得意げな顔を見せた。
キョーコもそれを見てくすくすと笑う。
「じゃあ、俺は次の撮影があるから。」
一通り笑い終えた後、蓮は何事もなかったように、キョーコに別れを告げる。
「あ、はい!今日は助けて頂いてありがとうございました!!」
ぺこりと頭を下げるキョーコに、蓮は微笑むと、キョーコに一枚のカードを差し出した。
思わず受け取ったキョーコが驚いて声を上げる。
「こ、これっ!敦賀さんの家の鍵じゃ…!」
「うん。そうだね。今日は早く上がれるから待っててくれる?久しぶりに君の手料理が食べたいな。」
蓮の口から食べたいなんて単語が出てきたことに驚いたキョーコだったが、すぐにその表情を綻ばせた。
「くすくす。わかりました!じゃあ今夜は今日のお礼に伺わせていただきます。」
「うん。よろしくお願いするよ。」
蓮はにこやかにキョーコに告げると、その場から立ち去ったのだった。
蓮とキョーコが約束通り蓮の家で夕食を共にした翌日、新聞やテレビでは、蓮とキョーコの熱愛報道が大々的に取り上げられていた。
蓮の為のお弁当作りをしていたキョーコは女将に呼ばれてテレビを見て、絶句した。
呆然としているキョーコの元に着信が入った。
慌てて携帯を開いたキョーコはそれが蓮からだったので、急いで電話に出る。
「つつつつつつつるがさん!!ど、どうしましょう!!つ、敦賀さんの崇高なお名前を傷物にっ!!」
キョーコが狼狽えながら発する言葉に、蓮は落ち着いた物腰で答える。
「最上さん、とりあえず落ち着いて…。」
「こ、これが落ち着いていられますか!!!!」
テレビでは、昨夜キョーコが蓮の合鍵を使ってマンションに入る映像がばっちり映っていた。
そして、蓮に家の前まで送ってもらうとこまでしっかりと。
ついていた埃を蓮がキョーコの髪から取るシーンはまるでラブシーンの様に取り上げられている。
「まぁまぁ、とりあえず。おはよう。」
「あ、は、はぁ、お、おはようございます!」
もう何をどういえばいいのか分からずにいるキョーコの耳に相変わらず落ち着いた蓮の声が聞こえる。
「今社長の遣いで迎えが来ると思うから、大人しく家の中で待ってるんだよ?あ、じゃあ、また後で。」
「は、はい!わかりました!」
キョーコはとりあえず物申したいことを沢山飲み込んで、蓮との通話を終わらせた。
それが、何故このような事態に発展しているのだろう。
沢山の記者が集められた会見場で、蓮とキョーコが隣合わせで座る。
少しだけメイクを施され、スタイリストさんに来せられた衣装で記者達と対面していた。
蓮はとても穏やかな、それでいて幸せそうな笑顔で記者達の質問に答えている。
キョーコはと言えば、事態について行けずに目を回すしかなかった。
「えぇ、彼女は俺にとってとても大切で特別な存在です。」
蓮の声は表情と同じくらい柔らかくて魅力的だ。
『京子さんは敦賀さんのことをどう思ってらっしゃるんですか?』
「ふ、ふへ?!わ、私ですか?!」
キョーコは真っ赤になってしまった。
「あ、あのっ!その、そ、尊敬してます!それで…あの…」
助けを求めるようにちらっと盗み見た蓮の顔が自分を見つめながら蕩けるような神々スマイルを浮かべてるのを見て、キョーコは足元の何かがガラガラと音を立てて崩れる感覚を覚えた。
会見が終わった会場で控え室に移されてから微動だに出来ず某然と放心状態になっているキョーコに、蓮は声をかけた。
「最上さん?大丈夫?」
蓮の声に、キョーコはぎぎぎぎぎ…っと首を動かした。
「敦賀さん…エイプリルフールって、昨日まででしたよね?!なんで、皆さんを騙すようなことを言うんですか!!」
「騙すなんて心外だな。本心を言ったまでだよ?」
「あ、あんなこと言ったらみんな私と、つ、敦賀さんがっ!恐れ多くも、つつつつつ付き合ってるって言う風に思われちゃうじゃないですか!!」
「うん。だからね?それを真実にしたらいいと思うんだ。」
恐れ多くも尊敬する先輩はそんなことを口にする。
「あんなにあからさまに最近はアプローチしてるのに、全然気付いてくれないし。これはもう外堀から埋めるしかないかな?って。」
「なっ?!へ?!は?!」
キョーコは、心底訳が分からないと言う顔で困惑する。
「うん。だから…ね?本当に付き合えば問題ないと思うんだ。」
キョーコに蓮がフェロモン垂れ流しながらにじり寄る。
赤面して固まるキョーコの耳に、蓮は口を近付けて囁いた。
「毎日君に、愛を囁いてあげる。俺は本気だよ?君がわかってくれるまで…」
「なっ…なっ…は、破廉恥ですぅ~!!!!」
それから既に三週間…。
毎日のように囁かれ続けた愛の言葉。
分刻みのスケジュールをこなす人気俳優である蓮がわざわざスケジュールに『愛を囁く』という時間を組んでいるのではないかと言うくらい、毎日必ず囁く為だけに現れる。
エイプリルフールについたはずの嘘が現実になったのは、必然なのかもしれない。
甘い甘い腕にとらわれて、唇を重ねる。
春の少し肌寒い風も、二人でいると暖かい。
開け放たれた窓から漏れる陽だまりの中で、二人は春を迎えたのだった。
END
風月ワールドをお楽しみ下さいませ♪
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それは数週間前に付かれた小さな嘘のはずだった。
その嘘は真実の始まり
「あの!俺、本当に京子さんのことが好きになったんです!俺と付き合って下さい!」
一目の多いTV局の廊下で突然大声で告白されて、キョーコは固まってしまった。
頭を下げて手を差し出して待っている目の前の男にキョーコはオロオロするしかなかった。
「えっと、あのっ、と、とりあえず顔を上げて下さい。」
キョーコがそう声をかけても、目の前の男は動かない。
こんな公衆の面前で恥をかかせるわけにはいかないと、キョーコはオロオロと言葉を探した。
そんな時に聞こえたのが彼の声だったのだ。
「悪いな。彼女は俺と付き合ってるんだよ。」
突然現れた人物が突然放った一言は、この場にいる人達を混乱の渦に巻き込むには充分な破壊力があった。
「「「「え?!えええええええええええええ?!」」」」
キョーコの大絶叫も多くの女性陣の悲鳴によって掻き消されてしまった。
でも、そんな言葉を発した目の前の人物は飄々としながら、キョーコの腰に腕を回す。
「さぁ、京子。行こうか…じゃないと次の現場に遅れてしまうよ?」
驚くキョーコが、声の主である尊敬する大先輩、抱かれたい男No.1の敦賀蓮を見上げると、蓮はイタズラっぽくキョーコにウインクをして見せた。
それでやっとキョーコは気付いたのだ。
ーー今日が何の日かということに…。
そんな蓮に乗っかる様にふわりと微笑んだキョーコは、蓮の胸に頭を預けて演技に入った。
「そうね。蓮…行きましょうか。」
艶やかに微笑むキョーコに、一瞬だけ目を奪われる蓮。
キョーコを抱く腕に少しだけ力を込めると、キョーコのコメカミにキスを落とした。
驚きで目を見開いたキョーコだったが、蓮の挑発するような瞳に出会い、負けん気に火がつくと、くすくすと楽しそうに笑った。
「人前ではしないって約束でしょ?」
妙に大人びたその視線に、テレビ局中の視線が集まる。
「君が…可愛過ぎるから行けないんだよ?」
蓮がキョーコの顎に手をかけて顔を寄せて囁くが、キョーコは何かのスイッチが入ったのか、内心のバクバクを上手く隠して全く動じずに答える。
「いつも、そればっかり。もうっ、早くいくわよ。じゃないと本当に遅れちゃう!」
「はいはい。俺の可愛いお姫様。」
全く動じずに答えた彼女に苦笑を漏らして蓮が従い、2人仲良くその場を後にする。ぽかんと2人の姿を見つめる人達に、蓮もキョーコも心の中で笑みを零すと。
2人が去ったのを見送ると瞬く間に廊下にどよめきが広がった。
「敦賀蓮と、京子が?!」
「うそー!!」
「でもあんなに無邪気な蓮の笑顔!!ダークムーン以来だわっ!!」
「ほんと!嘉月が美月に見せてた笑顔よね?!」
「いやーん!可愛い!!」
2人でいる時の蓮の無邪気な顔にその場にいたものの京子への不満は掻き消えていた。
2人はテレビ局の中の人気のない影へと隠れるように移動すると、蓮はイタズラが成功した子供の様な顔で、キョーコに得意げな顔を見せた。
キョーコもそれを見てくすくすと笑う。
「じゃあ、俺は次の撮影があるから。」
一通り笑い終えた後、蓮は何事もなかったように、キョーコに別れを告げる。
「あ、はい!今日は助けて頂いてありがとうございました!!」
ぺこりと頭を下げるキョーコに、蓮は微笑むと、キョーコに一枚のカードを差し出した。
思わず受け取ったキョーコが驚いて声を上げる。
「こ、これっ!敦賀さんの家の鍵じゃ…!」
「うん。そうだね。今日は早く上がれるから待っててくれる?久しぶりに君の手料理が食べたいな。」
蓮の口から食べたいなんて単語が出てきたことに驚いたキョーコだったが、すぐにその表情を綻ばせた。
「くすくす。わかりました!じゃあ今夜は今日のお礼に伺わせていただきます。」
「うん。よろしくお願いするよ。」
蓮はにこやかにキョーコに告げると、その場から立ち去ったのだった。
蓮とキョーコが約束通り蓮の家で夕食を共にした翌日、新聞やテレビでは、蓮とキョーコの熱愛報道が大々的に取り上げられていた。
蓮の為のお弁当作りをしていたキョーコは女将に呼ばれてテレビを見て、絶句した。
呆然としているキョーコの元に着信が入った。
慌てて携帯を開いたキョーコはそれが蓮からだったので、急いで電話に出る。
「つつつつつつつるがさん!!ど、どうしましょう!!つ、敦賀さんの崇高なお名前を傷物にっ!!」
キョーコが狼狽えながら発する言葉に、蓮は落ち着いた物腰で答える。
「最上さん、とりあえず落ち着いて…。」
「こ、これが落ち着いていられますか!!!!」
テレビでは、昨夜キョーコが蓮の合鍵を使ってマンションに入る映像がばっちり映っていた。
そして、蓮に家の前まで送ってもらうとこまでしっかりと。
ついていた埃を蓮がキョーコの髪から取るシーンはまるでラブシーンの様に取り上げられている。
「まぁまぁ、とりあえず。おはよう。」
「あ、は、はぁ、お、おはようございます!」
もう何をどういえばいいのか分からずにいるキョーコの耳に相変わらず落ち着いた蓮の声が聞こえる。
「今社長の遣いで迎えが来ると思うから、大人しく家の中で待ってるんだよ?あ、じゃあ、また後で。」
「は、はい!わかりました!」
キョーコはとりあえず物申したいことを沢山飲み込んで、蓮との通話を終わらせた。
それが、何故このような事態に発展しているのだろう。
沢山の記者が集められた会見場で、蓮とキョーコが隣合わせで座る。
少しだけメイクを施され、スタイリストさんに来せられた衣装で記者達と対面していた。
蓮はとても穏やかな、それでいて幸せそうな笑顔で記者達の質問に答えている。
キョーコはと言えば、事態について行けずに目を回すしかなかった。
「えぇ、彼女は俺にとってとても大切で特別な存在です。」
蓮の声は表情と同じくらい柔らかくて魅力的だ。
『京子さんは敦賀さんのことをどう思ってらっしゃるんですか?』
「ふ、ふへ?!わ、私ですか?!」
キョーコは真っ赤になってしまった。
「あ、あのっ!その、そ、尊敬してます!それで…あの…」
助けを求めるようにちらっと盗み見た蓮の顔が自分を見つめながら蕩けるような神々スマイルを浮かべてるのを見て、キョーコは足元の何かがガラガラと音を立てて崩れる感覚を覚えた。
会見が終わった会場で控え室に移されてから微動だに出来ず某然と放心状態になっているキョーコに、蓮は声をかけた。
「最上さん?大丈夫?」
蓮の声に、キョーコはぎぎぎぎぎ…っと首を動かした。
「敦賀さん…エイプリルフールって、昨日まででしたよね?!なんで、皆さんを騙すようなことを言うんですか!!」
「騙すなんて心外だな。本心を言ったまでだよ?」
「あ、あんなこと言ったらみんな私と、つ、敦賀さんがっ!恐れ多くも、つつつつつ付き合ってるって言う風に思われちゃうじゃないですか!!」
「うん。だからね?それを真実にしたらいいと思うんだ。」
恐れ多くも尊敬する先輩はそんなことを口にする。
「あんなにあからさまに最近はアプローチしてるのに、全然気付いてくれないし。これはもう外堀から埋めるしかないかな?って。」
「なっ?!へ?!は?!」
キョーコは、心底訳が分からないと言う顔で困惑する。
「うん。だから…ね?本当に付き合えば問題ないと思うんだ。」
キョーコに蓮がフェロモン垂れ流しながらにじり寄る。
赤面して固まるキョーコの耳に、蓮は口を近付けて囁いた。
「毎日君に、愛を囁いてあげる。俺は本気だよ?君がわかってくれるまで…」
「なっ…なっ…は、破廉恥ですぅ~!!!!」
それから既に三週間…。
毎日のように囁かれ続けた愛の言葉。
分刻みのスケジュールをこなす人気俳優である蓮がわざわざスケジュールに『愛を囁く』という時間を組んでいるのではないかと言うくらい、毎日必ず囁く為だけに現れる。
エイプリルフールについたはずの嘘が現実になったのは、必然なのかもしれない。
甘い甘い腕にとらわれて、唇を重ねる。
春の少し肌寒い風も、二人でいると暖かい。
開け放たれた窓から漏れる陽だまりの中で、二人は春を迎えたのだった。
END