お待たせしました~♪久しぶりの更新です☆
何とかやって行きたい展開に転んでくれそうです。
前回は、キョーコが予想外の行動をとってしまった為、中々続きがかけませんでした~!!
とりあえず出来たとこまでUPです☆
お楽しみ下さい♪


*****


恋の季節は 22
《曇りのち晴れ》


「あ、蓮!お前どうだっ……。」

蓮を見つけた社が、蓮に近づくと、そこにはズーンと深海の底に沈んだような蓮がいた。

「あ、あれ?あの、れ、蓮…?キョーコちゃん…見つからなかったのか?」

社の言葉を聞いて更にまた沈み込んでしまった蓮。

「お前…だ、大丈夫か?」

蓮は、拳を握り込んだ。

「はい…。俺は。…あの子の痛みに比べたら…。」

血が止まるのではないかというほど拳を握り込んだ蓮をみて、社は眉を寄せる。

「蓮…。自分を責めてもどうにもならないだろ?」

悔しさから奥歯をギリッと噛み締める。
なかなか動こうとしない蓮を見兼ねて、社はばしぃと蓮の背中を叩いた。

「っつ。社っ!」

「シャキッとしろよ!何も絶交宣言されたわけでもないんだろ?!そんなんじゃ捕まえられないぞ~?」

「なっ…お、俺は…」

「ん?いいのかよ?このままで…ちゃんと気持ち伝えないと後悔するぞ。」

「社…。」

「うじうじうじうじ悩んでる間に、他の人にキョーコちゃんを掻っ攫われてもいいのかよ?」

「良く…ない。」

「だったらビシッと決めろよ!そんなこの世の終わりみたいな顔してないでさ!」

「でも…」

頼りな気な子犬のような顔でくぅ~ん。と蓮から上目遣いで見つめられ、社が真っ赤になる。

「なっ!お、お前っ!!いつからそんな顔するような男になったんだよ!!…わ、わかった!わかったからそんな顔するな!!俺も協力するからさっ!」

社が蓮の顔に負けた瞬間だった。



「じゃあ二人一組でペアを組んで~」
女子の体育の授業でお決まりの声が聞こえて来た。
自然に出来ていくペアにいつも乗り遅れるのはキョーコだ。
だけど、今日は様子が違った。

「ちょっと、あんた。どうせ相手いないんでしょ?私と組みなさいよ。」

声を掛けて来たのは、クラスの中の一匹狼。
男子生徒たちからは高嶺の花と呼ばれてる人物だった。

「あ…でも…。」

クラスからの視線が痛い。私と組んだらもしかしたらこの目の前の人に危害が及ぶかもしれかもしれない。

「もー!早くしなさいよ。」

「琴南さんっ。そんな子ほっといて私と組もうよ。」

「もー。私はこの子と組むって決めたのよ!貴方は他にも相手いるでしょう?」

クラスの女子の数は奇数だ。
なので、いつも一人あぶれているのがキョーコだったのだが、今日は一人体調崩して休みだった。

「モー子さん、いいの?」

「いいから、さっさとしなさいよ!」

そう言う奏江とペアを組んで整理体操をする。

「あんた…見直したわ。」

「…え?」

ボソッと囁かれた言葉にキョーコは驚いて奏江を見た。

「あんだけ虐められててもあんたは強いのね。」

「………慣れてるもの。」

「……そう。」

今でもイジメは続いていたが、チクチクしたものが多く前のような酷いものは減っていた。
それは蓮との関係をクラスでしっかりと隠し通せてたという証明でもあった。
付き合ってたことを周りに知られてなくて良かったと、キョーコは改めて思う。
きっと付き合ってる事がばれたら考えられないくらい恐ろしいイジメが待っていただろう。
そして別れた後は嘲笑われたに違いない。

「私も、小学校からずっと虐められてたのよ。だから…」

奏江はそこまで言いかけるとハッとして話し過ぎたわ。と呟いて言葉を飲み込んだ。

そんな奏江の言葉に目を見開いたキョーコは、ニッコリと奏江に微笑む。

「ありがとう…」

そして、ぽつりと奏江に呟いたのだった。


それからと言うもの、奏江はことあるごとにキョーコを気に掛けるようになった。
しかし、それによりキョーコの風当たりが強くなるのを防ぐため、あからさまにはなるべくしないように徹する。
さり気なく、キョーコが一人にならなくて済むように声をかけるようになったのだ。
次第にキョーコは、クラスの中で奏江に対してだけ心を開くようになっていった。
そして奏江を見て微笑む姿に、蓮は少しずつ焦りを感じるようになった。
キョーコの笑顔に見惚れる男子生徒が現れ始めたのだ。

「あ、最上さん。ここの問題解き方教えてもらえる?」

チラホラと集まり出す男たちに、キョーコが戸惑う。

「あ…えっと…。」

それに伴いキョーコを妬む女生徒達からイジメがまたエスカレートしようとしていた。

キョーコの周りで不審な動きがあると、奏江は目を光らせてそちらを牽制していたが、やはり奏江の目がない時にくることもあるわけで…。

「ちょっと顔かしてくれる?」

校舎裏に呼び出されることも多々あった。

「あんたさ、最近調子に乗りすぎじゃない?ショーちゃんだけじゃなくて、何光君にまで手を出してんの?」

「え…?」

「そうよ!美代子なんて、中学生の時から光君が好きなんだからね!それなのに、何なの?突然…!」

壁に追い詰められたキョーコは身に覚えのない言い掛かりをどう対処すべきなのかわからなかった。

「あ、あの、そんなつもりは…。」

「とにかく調子に乗りすぎなんだよ!」

髪をグッと掴まれ、キョーコは顔を歪めた。

「痛いっ!離してっ!」

キョーコが悲鳴をあげた時に、そこに割って入る男の声があった。

「おい!君たち!そこで何してる?!」

「せ、先生!な、何でもありません!!」

やって来たのは、キョーコ達のクラスの担任の椹先生だった。

「ちょ、ちょっと最上さんが先輩に対して生意気な態度をとってたので注意してただけなんです!」

「最上君…そうなのか?」

「………。はい…。申し訳、ありませんでした。」

キョーコは深々と女生徒達に頭を下げた。

「ふん。わかればいいのよ。」

そう零しながら、女生徒達はそそくさと離れていった。

それを見送り、椹はキョーコに声をかけた。

「大丈夫か?最上君。」

「申し訳ありません。先生。ご迷惑おかけしました。」

「いや…でもさっきのは…あきらかに髪を引っ張られていただろう?もしかして、クラスの中で虐められてるということはないだろうね?」

「いえ、そんなことは…本当に大丈夫ですから。あ!すみません!これから予定があるので、失礼しますね。ありがとうございました!!」

ぺこりと綺麗なお辞儀をしてキチンと礼を述べるキョーコを見て、椹はやはりキョーコが先輩に対して生意気な態度を取るような生徒には見えなかったのだった。


少し離れた所でキョーコは震える手を握り締めた。

髪を掴まれた瞬間、蓮の顔が浮かんでしまったのだ。
心の中で、蓮に助けを求めてしまったことに、そして現れるはずなどないのだと言うことにキョーコは胸か苦しくなった。

蓮に甘え過ぎて、少しだけ弱くなってしまったように思う。

ーーーこのくらい…いつものことなのに…。心細くて堪らない。蓮君の温もりを知らぬ間に求めてしまう…。
駄目なのに…一人で生きていくって決めたんだから…。その為に蓮君と別れたんだから…。


あれから蓮とは、お昼休みに会うだけになっていた。
夜に家に食事を作りに行くこともしない。
二人っきりにならないように、必ず社にも来てもらっていた。

義務のようにお昼休みに笑顔も少なく来るキョーコに、蓮は、胸を痛めていた。

社もこのぎこちない空気と緊張感に、必死に明るい話題を振るが、二人はそんな話に相槌を打つだけでお昼を過ごしていた。

そんなお昼休みに変化が訪れたのは、キョーコが椹に助けられた次の日だった。

いつものように、屋上へ向かおうとするキョーコを呼び止める声があった。

「ちょっとあんた。どこに行くのよ?たまには一緒に食べない?」

ぶっきらぼうだけれども、精一杯の優しさを持って、キョーコに声をかけたのは、最近キョーコが心を許し始めた奏江だった。

「あ…でも…」

視線を漂わすキョーコに奏江は首を傾げる。

「何よ?ここで食べるのが嫌なの?」

「あ…えっとそうじゃなくて…えっと…。」

「何?はっきりしなさいよ。」

「お、お気に入りの場所があるの。そこでも…いい?」

キョーコのはっきりしない返答に少し不機嫌になりかけていた奏江は、ふうっと一息吐いて頷いた。

「いいわ。そこに行きましょ。」

そうして、いつもの食事のメンバーに奏江が加わることになったのだった。


(続く)



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